北海道行きまで2週間
9月から10月にまたがる1カ月間、北海道で暮らすことになった。
北海道の町役場のリノベーションプロジェクトを行うために。
きっかけはクラウドソーシングでの仕事の依頼が来たことだった。
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僕は北海道富良野の出身で、幼い頃に家族で関西に引っ越してきた。
今はもう北海道に家はないけどそれでも数年前までは家族で毎年1回帰っていた。
それがここ数年はなかなか帰れておらず、今年の夏も帰れないかと思っていた矢先に舞い込んできた依頼だった。
すぐに詳しい話を聞こうと担当者に電話をかけた。
仕事の内容は、役場のリノベーションやDIYということだった。1カ月間、町に滞在しながら制作をしていく。富良野にほど近い小さな町、住むところはシェアハウス。プロジェクトのメンバーは地域の住民や地域の関係者、関西や関東から参加する大学生やその教授など。あわせて15名ほどで制作をするそうだ。
面白そう!直感と勢いですぐに依頼を受けることにした。
誰にも相談せずに決めた。我ながら思い切った決断だった。
行くと決まってから一気に緊張が押し寄せてきた。
どんな1日になる?シェアハウスにはなじめるだろうか?サク(愛犬)は大丈夫かな?
・・・1カ月。
旅行にしては長く引っ越しと考えるには短いこの期間、何を持っていったらいい?
生まれてこの方、出張にもシェアハウスにも行ったことがない僕は、次から次へと脳内で質問が飛び交う。
サクは同居人(2人で犬を飼っているので)と母が面倒を見てくれるので何も心配はいらないのだが、普段家にいる間はずっと僕のそばにいてこれまで丸2日以上離れたことがない。
だから僕に捨てられたと感じないだろうか、とか変な方向に心配の矢印が向いている。
シェアハウスでの暮らしも想像がつかない。
どんなメンバーが集まるかにもよるけど、ごはんとか掃除とか当番制になるのだろうか。
鍋やフライパンとかそういうのも持って行った方がいいのか?コーヒー毎日飲みたいな。
個室を借りれると聞いてるけど寝れるかな。
心配事がまるで小学生のようで文字にするとさらに恥ずかしい(笑)
でも行くと決めたからには、準備をしよう。
1ヶ月・・・なにがいる?とりあえず思いつくものから書き出す。
▢万年筆カートリッジ
1番始めに出てきたのがこれだった(笑)
いつもはコンバーターにインク瓶からインクを入れてるけど、一式を持ってはいけないから初めてカートリッジを使ってみる。
▢スケッチブック3冊
▢ペンケース
▢水彩絵の具
▢筆・・・いや多いな。
スケッチブックがなぜ3冊かというと、日記や落書きを書いている1冊と絵の練習用クロッキー帳、それに水彩紙のスケッチブック。それで3冊。
多いとは自分でも思うけど日課も大切にしたいので置いてはいけない。
旅行に行くときにも思うけど、どこかへ行くことって非日常の中に飛び込むことだ。イレギュラーが起こりやすい、そんな中でも自分らしく在りたい。そのためにはルーティンや日課は大事だと思う。(今回のように1カ月ともなればなおさら)
非日常の中に日常を取り込む。それって結構難しい。塩梅が。
僕にとっての日常は、コーヒーを淹れたり絵を描いたり、文章を書いたり。
どこまでいつも通りを持っていくか、だ。
それともう一つ。同居人には内緒で、普段のお礼も兼ねて向こうから絵手紙も出そうと思っている。そのためのポストカード水彩紙も忘れずに。
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水彩筆は持ち運びやすくしたい。筆って意外と長くて、持ち運べる短いものってなかなか売ってない。
「よし、短く切ろう。」
探して見つけるよりも使うときが先に来てしまった。
いつも使っている筆をのこぎりで切って、やすりをかけてペンキを塗ってコンパクトにした。(切ってる最中、なんだかいけないことをしてるようだった)
そして短くした筆を入れるケースも必要なので、家にあった革で筆ケースも作った。
これで画材セットとして持ち運びやすくなった。嬉しい。
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▢折り畳み傘
▢バッテリー
▢化粧水
▢ヘアワックス・・・
日用品もザっと書き出してあとは向こうでも買えるし!ということにしよう。
そして服だ。
着替えって何枚くらいいるのかな。そもそも洗濯は?
洗濯がシェアハウスでできるのか、というような生活のパーソナルな質問には急に引っ込み思案を発動。まだ聞けてない。
気になったらすぐ電話をかける!みたいに大胆に行動ができる側面と昔からのそうじゃない側面とが両方顔を出している。
仮にコインランドリーを使うとして、週に1~2回行くことになるならシャツとパンツはこのくらいか。それに枕カバーも持っていこう。
作業着のつなぎは新調したい。アマゾンで手頃なものをポチった。
何となく色は、白にした。届いてみると意外と透ける生地だった。白いと透ける物の方が多いだろうということが完全に頭から抜けていた。
返品して別の色を買いなおすか、とも考えたけど、どうせ汚れるだろうしどうせなら好きな色で汚したい。
「よし、染めよう。」
染料を探してポチっとな。
グレー、ネイビー、ピンク、どうかな・・・
できた!染料が抜けることを考えて濃いめに色を入れたら、全然抜けることなくビビットになった(笑)
染色って予想ができなくておもしろい!
今回の北海道行きにかこつけて、準備と言いながらどんどん新しく何かを作ってる。相変わらずだな、自分。
これまでも「今必要になった」、「こうしたら便利」という思いからその時々で作ってきたものばかりだ。気づけば普段使うものは全部手作りになった。
つなぎを染める手が染料で真っ青になったのを見て「またバカみたいにこだわってるな」と思うけど、出来上がって気に入ったものに囲まれると妥協しなくてよかったと思う。
この繰り返しだ。
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話が脱線したけど、北海道行きの荷造りをしているところだ。
心配な部分はいろいろあるけど、荷造りして準備して少しでも不安要素を減らそうとしているところだ。
でも結局、どんな心理状況でも手を動かしてものを作って気分を上げていこうとしている自分がいて、こんな感じでやっていけば北海道でもなんとかなるだろうと思えた。
noteを書くにあたって、今の気持ちや最近の制作したものを振り返ったことでこのことに気づけた。
ジタバタしてみるのも案外悪くない。
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僕の日常の制作はこんな風に自分との対話からものを作ることが多いので、出来上がるものも様々。
主に自分好みに不便を解消して作り直したり、作り出すことがほとんど。
作るものが様々=いろいろ作れる。みたいに言うと聞こえはいいが、僕はなかなかポジティブに捉えることができない。
昔から何か一つを極めるみたいなことが苦手で、そこそこ何でも作れることを器用貧乏だと思ってる。
加えて“自分好み”や“自分にとっていいように”というところも肯定するのが難しい。こんな考えの持ち主で人のために何かを作れるのか、と思ってしまうからだ。
制作していることの意味まで考えだしちゃって分からなくなりそうだ。
僕が思う僕の大きな課題は、自己肯定感の低さだ。
せっかく作ってちょっとホクホクできても、ほぼ同時にネガティブな部分がのしかかってきて飲み込まれてしまう。
ポジティブとまではいかなくても、こんな自分でいいともう少し許すことができればいいけど。
どうしたらいいんだろう。
とりあえず今のままでは進まない。自分以外の人と対話して制作してみよう。
ずっと探してる正解は見つかってないけど、北海道でのリノベーションはいろんな人と関わってものづくりができる貴重な機会だ。知り合ったメンバーのものづくりに対する考え方にできるだけ多く触れたいと思ってる。
今回のプロジェクトのようにリノベーションと言えるような大きな空間を一括して造ったりした経験がないので、どんなことができるのか想像がつかない。
でも何か力になれるといいな。
北海道行きまであと2週間。
シーソーみたいに楽しみと不安が行ったり来たりするけど、どんな人たちと出会えるかワクワクしている。
1カ月間北海道で暮らして経験したことをまたnoteでシェアしていきたい。
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今日のサクさん
いつでもそばで、見守り犬。
luca