
水が逆流する!?コアンダ効果の驚きの現象
「水は高いところから低いところへ流れる」──これは誰もが知る自然の法則です。しかし、時に水が思いがけない方向に流れたり、壁に沿って登るような動きを見せることがあります。これは「コアンダ効果」と呼ばれる現象によるものです。本記事では、この不思議な流体力学の現象について解説し、私たちの身の回りにどのように関わっているのかを紹介します。
コアンダ効果とは?
コアンダ効果(Coandă Effect)とは、流体(液体や気体)が表面に沿って流れ続ける性質のことを指します。具体的には、流体が曲がった表面に沿って引き寄せられるように流れる現象です。この効果は、ルーマニアの科学者アンリ・コアンダによって発見され、その名がつけられました。
例えば、スプーンの裏側に水流を当てると、水はスプーンの表面に沿って曲がりながら流れていきます。このとき、水がスプーンから離れることなく、表面に吸い付くように流れるのがコアンダ効果です。
なぜコアンダ効果が起こるのか?
流体がある物体の表面に沿って流れるとき、流体と物体の間には「粘性」という力が働きます。粘性とは、流体が表面にくっつくような性質のことで、この影響で流体は表面に沿って動きやすくなります。さらに、流体が表面を離れようとすると、周囲の圧力の変化によって元の表面に引き戻されるのです。
つまり、流体は単純に直進するのではなく、周囲の圧力の影響を受けながら表面に沿って流れ続けることになります。
コアンダ効果の身近な例
この不思議な現象は、実は私たちの身の回りでたくさん見ることができます。
1. シャワーの水が体に沿って流れる
シャワーを浴びているとき、水の流れが肌に張り付くように沿って流れていくことがあります。これはコアンダ効果によるもので、水が体表面に引き寄せられ、思わぬ方向へ流れるのです。
2. 燃料噴射装置や飛行機の翼
飛行機の翼はコアンダ効果を利用して揚力を生み出しています。高速で流れる空気が翼の表面に沿って流れることで、上向きの力(揚力)が発生し、飛行機が浮くのです。また、ジェットエンジンや燃料噴射装置でもコアンダ効果を活用し、効率的な燃焼を実現しています。
3. 煙突や換気扇の風の流れ
煙突から出る煙が周囲の風の流れに引き寄せられて曲がることがあります。これもコアンダ効果の一例です。空気の流れが物体の表面に沿って流れるため、煙の流れも曲がるのです。
まとめ
コアンダ効果は、流体が曲がった表面に沿って引き寄せられる現象です。この効果によって、シャワーの水が肌に沿って流れたり、飛行機の翼が揚力を生み出したりと、私たちの身近なところでさまざまな影響を与えています。一見不思議なこの現象も、流体力学の観点から見れば合理的に説明できるのです。
次回シャワーを浴びるときは、ぜひ水の流れを観察してみてください。もしかすると、コアンダ効果の不思議を身近に感じることができるかもしれません。