奇跡、とは何か。
僕は元来、"夢"を見ない人間である。
言い換えれば、現実主義者だろうか。
「将来の夢」とか「なりたい職業」みたいなベタなことも無縁だったし、なんなら幼少時からサンタさんさえ信じていなかった。
何事も疑ってかかる上に、目に見えるモノしか信じていないフシがあるので、たとえば"雨男"や"晴れ男"の話題になると(たった1人の影響で天候変わったら苦労せんわ)などと思いつつ、場の空気を読んでアハハと乾いた笑いを披露している。
そんな人間なので、サポーター業を始めてからも、
どこか「ほんとに選手に応援なんて届いているものかねー」とモヤっとしたものを抱えて応援していた。
そんな僕の人生が、一変した試合がある。
時は2013年9月21日。
相手はサンフレッチェ広島ユース。
所、福岡フットボールセンター(FFC)。
この年、アビスパ福岡の高校年代チーム「U-18」は半年もの間、勝利から見放されていた。
U-18を観始めたばかりだった僕は、「あと一歩」上手くいかないチームに何か力になりたくて、動いた。
サポーター仲間に声をかけて観戦を呼びかけ、手製のマッチデープログラムを作り、
寄せ書き色紙にメッセージを集めて久藤清一U-18監督(当時)に渡しに行ったりも。
(今こうして書き並べると相当ヤバい奴である)
試合当日。
FFCにこれまで閑散としていた観戦エリアに、大挙として人が押しかけた。
集まったのはサポーター仲間だけでなく、選手たちの同級生もいた。
そんなピッチサイドから、選手たちに声が飛ぶ。
「いけるぞアビスパ!」「球際負けんな!」「ナイスプレー!いいぞ!」
その声が選手たちにパワーを与えていることは、目に見えて分かった。
アドレナリンが吹き出したのだろう、苦しくても「あと一歩」踏ん張って、「もう一歩」足が出ている。
果たして試合は、勝った。しかも5点取って。
5回もの歓喜に、鳴り物禁止のFFCでも、観客たちの声だけで大いに沸いた。
試合後の、やりきった選手たちの表情が今も忘れられない。
歓喜、安堵、充実感。闘った当事者だからこそ感じられるもの。美しかった。
あれから6年と少し。
アビスパ福岡U-18は毎年、奇跡のような試合を僕らに観せてくれる。
僕は未だに現実主義ではあるものの、その"奇跡"などというものを少し信じられるようになった。
彼らの懸命な努力と、支える家族・仲間やスタッフの愛情を土台に、想いを乗せた応援を飛ばす。
そうやって、奇跡なるものが生み出されていることを理解したからだ。
2019年12月8日、日曜日。13時。
ふたたび、広島ユースと福岡フットボールセンターで相まみえる。
いま、アビスパ福岡U-18は正念場を迎えている。
今シーズンの最終戦。引き分け以下で降格。勝っても他力。
3年間守ってきたプレミアの座を、手放すわけにはいかない。
ピッチ脇で、選手たちに声を飛ばして欲しい。パワーを与えて欲しい。
そうやって、これを読んだ貴方にも、"奇跡とは何か"を現地で体感して欲しい。