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留学生活振り返り① ー文化面の学びー


ーはじめにー

 
2023年8月17日から2024年7月1日。
スウェーデンにいた約11ヶ月間。
この日々は、私の人生において様々な面で視野が広がる機会となった。学業面、日々の生活面において学びに溢れた一年を過ごすことができた。日常でありながら、眩しさすぎる、その非日常の1年間は貴重で、かけがえのない経験となった。
そして、何より素敵な友人に恵まれ、人の優しさ、温かさに触れた1年だった。言語の壁を超えてつながり、思いやりに溢れる彼ら、彼女らとの出会いがこの留学生活を最も充実させたものであったと心から感じている。
ここで改めて、そんな友人たちに感謝をしたい。

ー文化面の学びー

個人主義のスウェーデン

 まず一つ目の学びとして、自己を優先し、自分軸で物事を考える重要性を痛感した。スウェーデン人は個人主義の傾向が非常に高い。子どもたちも幼い頃から、彼らの意思が尊重されて生きている。スウェーデン人以外の友人が多かったが、その他のヨーロッパから来た友人たちも自分軸で考えて生きている人が多いと感じた。自分の意思をしっかり伝えて、その上で他者とコミュニケーションを取っている。
 自分は他者の気持ちやみんなによって良いこと、迷惑をかけないことを考える傾向が強く、自分軸で選択をすることが苦手であった。しかし、それによって留学最後までつらい経験をすることもあった。他者を優先するあまり、自分の気持ちや意思を大切にできていなかったからだ。
 しかし、友人たちにNoと言っても良い、自分の本当にやりたいこと、会いたい人と会うこと、または人と会わないこと、休むこと、自分の本心を優先していい、Be kind to yourselfと何度も声をかけてもらった。疲れているから会えないと言ってもそれを受け止めてくれる人に出会えた。自分と対話し、自分を大切にするとはどういうことなのか、自分に優しくすることの大切さを学ぶことができたと思う。

Lagom

 スウェーデンには、lagomというスウェーデン社会に浸透した哲学がある。lagomとは、 'not too much, not too little'. just the right amount' を意味をする。この哲学を留学期間中、肌に感じ、そんなウェルビーイングな生き方を学んだ。スウェーデン到着当初は、日本にいた時から続けていたアルバイトをオンラインで続けており、時差がある中深夜にも働いていた。
 しかし、11月にアルバイトが落ち着き、仕事をしない時期に入った。と同時に、11月からスウェーデンは日照時間が非常に少なくなり、その影響で生活リズムが崩れ、気分が下がる日々が続いた。アカデミックと、仕事の両方を行ったり来たりすることが好きな私にとって、働かなくなったことでこれまでメリハリの取れていた生活にも、メリハリがなくなり、何にもモチベーションが持てず、そのタームは授業にもほとんど出席ができなかった。何か始めなくてはと、インターンシップの申し込みにトライをしたが、その席を掴むこともできなかった。自分にとっては、それは人生の停滞期であり、そんな、何もしていない自分に自信を持てず、ひどく自分を否定していた。
 しかし、スウェーデンのlagomという考えや、友人がそんな自分を肯定してくれたことにより、人には人の人生のスピードがあり、生き急ぐ必要はないのだと考えることができるようになった。それは自分にとって非常に大きな発見であったと思う。また、何もしていなかったというのは私が抱いてきた自身の人生の物差しの上での話であるということにも気がつかされた。これまではアカデミックや仕事に大きな時間を割き、生きがいを感じていた。しかし、この期間、それができなかった分、友人とじっくり対話をしたり、映画をゆっくり見たり、ベイキングや料理などの新しい趣味に出会うこともできた。この経験から私の人生は、より彩りのあるものになったと感じ、また、自分自身と心と相談しながら、人に頼りながら生きていいのだと思えるようになった。

日本(自分)とは異なるライフスタイル

 さらに、日本(自身)とは異なるライフスタイルのあり方を知ることもできた。その中でも、家族と対話し、家族の時間を大切にしている文化が非常に素敵であると感じた。フランス、スウェーデン人の友人の家庭に行かせてもらった時は、その家族の温かさを実感した。家族社会学等に関心を抱く私にとっては、自分の知っている家族とは異なる家族のあり方に衝撃をいただくと共に、強い憧れを抱いた。国民性からフランス、スウェーデンの家庭でそれぞれの違いは感じながらも、両者とも互いを尊重しながら、愛を伝えながら生きているのが伝わった。家族とボードゲームをするなど、共に時間を過ごすことが暮らしの根幹にある生き方、愛情表現の豊かさは日本にないものであり、言葉やハグ、過ごす時間等を通じて、「伝える」ことの大切さを学んだ。
 また、様々な生き方が尊重される文化も実感した。日本では、どこか「正解」の生き方があるようにずっと感じ、そのスタンダードから外れることへの不安感、窮屈さに悩まされることも多かった。けれど、スウェーデンでは、多様な生き方が尊重されている。ヨーロッパの友人は大学院に進学をしたり、ギャップイヤーをしながら、旅をする友人がいたり、働くだけでない、それぞれの望む生き方が素敵だと思った。資本主義から少し離れ、自分の人生を自分らしく生きる。そこに価値が置かれている環境に身を置けて、プレッシャーから解放されると共に、自分の人生を見直す貴重な機会になったと思う。

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