せんせいなんてだいきらいの意味
本日は小話。
前職で勤めていた保育園でのお話です。
当時子どもたちと過ごした時間は
わたしにとって勉強だらけの
かけがえのない日々で、
今でも頭に残っているエピソードが
たくさんあります。
今回は中でもお気に入りのお話をひとつ。
れおくん(仮) 5歳児のお話しです。
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れおくんは年長さんのお兄さん。
クラスでもリーダータイプの元気な男の子で
時々いたずらをしたり、
先生をからかったりするいたずらっ子な一面もあってか、よく目立つお友だちでした。
れおくんはいつもわたしのことを
「ともろこせんせーい」
と呼んでくれていたのですが、
本名とはだいぶ間違ってしまっていて笑
「ちがうよ〜〇〇〇先生だよ〜」
と言っても
毎回どうしても、
「ともろこ先生」になってしまうのです。
とは言え、れおくんも年長さんだったので
まわりのお友だちからも
「れおくんちがうよー〇〇〇せんせいだよー」
と言われてしまうのですが、
お友だちから訂正されるときは決まって
「わかってるよ!!」
と怒る様子がありました。
きっとお友だちに言われるのは
恥ずかしいのか…
ひらがながまだちょっと難しいんだろう。
そう思っていました。
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そんなある日、
れおくんが他の先生におもちゃの遊び方で注意を受け、
怒って他の部屋に閉じこもってしまったときがありました。
一部始終の話を聞いて、
わたしが様子を見にいくことに。
こんな時はなるべく刺激をしないよう、
おちゃらけて近づいていくのがベターです。笑
「とんとん。失礼しまーす!
えっと、れおくんー、あ!いたいた。
このお部屋暗いねぇ〜
こんなところで…
すると、れおくんとっさに
「くるな!!」の一言。
これはどうやら相当お怒りです…
しばらく離れて様子を伺い、
時間を置いてから聞いてみることにしました。
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「れおくん、どうしてそんなに怒っちゃったの?先生たちも心配してたよ。」
れおくんは、
「せんせいはしんぱいしてない。」
ときっぱり。
「先生たちみんな心配してるよー。
お友だちもれおくんどうしたの?って言ってたよ。」
すると今度は、何かがプチンと切れたように
「せんせいはぼくのはなし
ぜんぜんきいてくれないもん!
せんせいなんてだいきらい!
〇〇〇せんせいももうだいきらい!」
ん、あれ。
〇〇〇先生って呼べるんだ。
初めてれおくんから名前を呼んでもらえ
困惑とともに喜ぶわたし…
いやまて。その前にこれはなにかあるぞ
と冷静を取り戻し、
先ほどの出来事を
れおくんの口からちゃんと聞こうと思いました。
「れおくん、先生何があったのか全然わからないから、
よかったら教えてほしいな。」
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れおくんは少しずつ話してくれました。
小さい子からおもちゃをとって
それを投げたことで
注意されてしまったと聞いていたけど、
本当は小さい子が他の子のおもちゃを取ったところを見ていたれおくんが
取り返してあげていたということ。
それを先生に怒られ、
とっさに投げてしまったということ。
なんてことだ。
れおくんはスーパーヒーローじゃないか。
最後投げてしまったのは良くないが、
その手前に先生に決めつけられたことが
ショックだったんだろう。
「そうだったんだ。
先生たち、全然知らなくて本当にごめんね。」
れおくんも話ができたからか
ようやく落ち着いたようで、
そのあとも一緒に部屋へ戻ってくれました。
注意をした先生にも報告。
先生からも、ごめんねー!とたくさんハグされ
れおくんも嫌々しつつうれしそうでした。
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この出来事でわかったこと。
れおくんは最初から
〇〇〇先生って呼べるってこと、
つまりは先生に
僕の話を聞いてほしいってことです。
名前を間違える度にわたしに
「ちがうよ〜」って訂正されたいんです。
いたずらもするけど、
かっこいいこともできるってところを
大人に見てもらいたいんです。
またいたずらしてる!なんて決めつけられたら
そりゃ誰だってショックですよね。
視野が狭いのはいつだって大人の方です。
知見にとらわれずに、
子どもたちの話をしっかり聞くべき、
いや、教えてもらうべきだと
この時とても痛感しました。
その後もれおくんは
私の名前を間違えて呼んでいましたが、
この時から、れおくんに呼んでもらう
「ともろこせんせーい」が
もっと大好きになりました。
彼なりのコミュニケーションだとわかったからです。
それでnoteでも
この名前を使わせてもらっています。
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そんなれおくんも
今ではもうすぐ6年生……早い。笑
このことを思い出すたびに
お友だちと仲良くできてるかなぁなんて
親かのように考えてしまいますが、
大丈夫です
とってもお友だち想いの
優しいれおくんだと知っていますから。