Not music but music, so strange but pop
不意に視界が広がるということがある。しかしそれは一瞬の出来事で再びまたもとに戻ってしまう。それをどうにかしてとらえようと試み、あるいはリアリティというものを意識の観点から追求し続けたとされる脳科学者、ジョン・カニンガム・リリー。あらためて彼の研究に想いを馳せている。オルダス・ハクスリーの影響を受けた彼の研究は脳神経の研究にはじまり、イルカとのコミュニケーションなどいずれも20世紀のオルタナティブな意識改革の歴史そのものだ。
中でもアイソレーションタンクの実証研究は、ルネッサンス以降の自我の定義を再び見直す契機として意義深い実践であったと考える。外的刺激を限りなく極小化し、その結果として内的感覚が増幅、純粋に自己と対峙するという考えは自我領域のアップデートに大いに貢献したのではないか。物理的にはきわめて制限の多いはずのタンクに身を沈めることで開ける視界。相反する現象が一度に押し寄せる様そのものだ。
さて、彼がアイソレーションタンクで浮遊中に遭遇したというECCO (Earth Coincidence Control Office)は、今では一見すると正反対の環境下、すなわちウェブ上で日々目にすることになる。我々はあらためてノイズに取り囲まれつつも再定義された自我の中で意識を醸成していることを認識せざるを得ない。相反する現象の中で果たして我々はECCOのテストにパスできたのだろうか。
“Can you pass the acid test?” - Ken Kesey