コント 期日前投票
(舞台は衆議院議員選挙の期日前投票所。投票入場券を持った男が入ってきて、選挙管理委員に話しかける。)
男:「あ、すいません。」
選管:「どうしました?」
男:「あの、今日期日前投票に来たんですけど」
選管:「はい」
男:「この紙なんですけど」
選管:「はい。投票入場券ですね。」
男:「これって選挙当日に投票できない理由、該当するところに〇をつけなきゃいけないんですよね?」
選管:「は、はい。」
男:「仕事、旅行、病気、住所移転、悪天候ってあるんですけど、どれでもないんですよ。」
選管:「は、はあ。」
男:「どうすればいいのかなあって。」
選管:「えー、そうしましたらですね」
男:「はい。」
選管:「どういった理由で選挙当日来られないんでしょうか?」
男:「あの、ここを出て右に行ったところにコンビニあるじゃないですか。」
選管:「はい、」
男:「そこに強盗に入るんです。」
選管:「、、、はい?」
男:「え?」
選管:「それってどういう、?」
男:「いやだから、コンビニ強盗なんですよ理由が。」
選管:「聞き間違いじゃなかった。え、なにコンビニ強盗?」
男:「はい。それだとどこに〇つけたらいいですかね?」
選管:「ちょっと待ってちょっと待って。いや、〇つけるとかじゃなくて事情聞かせてもらいましょうかもうちょっと。」
男:「はい?」
選管:「あなた言ってること変なんですよ。当日強盗に入るから選挙いけないって人います?」
男:「え?僕がいますけど。」
選管:「いやそうじゃなくて。理由が強盗なんてありえないってことなんですよ。」
男:「うーんどこにも〇つけられないんですよね。仕事ではないしなあ、、」
選管:(携帯)「ちょっとこれは通報した方がいいのかな。」
男:「通報?いやちょっと待ってください!」
選管:「何ですか?」
男:「今ここで警察の方呼んでも僕は逮捕できないですよ?」
選管:「はい?」
男:「僕まだ強盗に入る予定だって言っただけじゃないですか。まだお店に下見にも行ってないですしカバンも凶器も買ってないです。」
選管:「だからどうしました?」
男:「刑法第237条に示されている強盗予備罪には当たらないです。」
選管:「刑法?」
男:「僕法学部だからわかるんです。」
選管:「なんだこいつムカつくな。一番タチ悪いタイプの人間じゃん。」
男:「だから今警察の方呼んでも意味ないですし、ちゃんと今日は日本の政治のために一票を投じに来たんですから。」
選管:「こんなヤバいこと言ってんのにちゃんと投票来るってすごいね君。」
男:「僕は!」
選管:「びっくりした、何?」
男:「僕だって現代の日本が抱える問題に真摯に向き合いたいんです。」
選管:「はい?」
男:「僕にだって、一国の政治に意見を投じる権利があるんです。日本の未来は、僕たち若い世代が声を上げなきゃ変わんないんです!」
選管:「犯罪者が言うことじゃないよ!」
男:「犯罪者じゃありませんまだ起こしてはいないです!」
選管:「正論で向かってくんな!」
男:「この後近くのディスカウントストアでナイフとカバンを買うところなんです。」
選管:「すごいな全部言うじゃん。」
男:「嘘はついちゃいけないじゃないですか。」
選管:「倫理観が極端なんだよ。そんで買うって言ってんじゃん。強盗予備罪じゃん。」
男:「まだ買ってないので予備罪じゃないです。通報しても無駄です。」
選管:「めんどくさいな。あの、まず君さ、なんで強盗なんてしようと思うわけ?」
男:「それは、今すぐたくさんのお金が欲しいからです!」
選管:「そうか、、、そうかじゃない!ここまでまっすぐに言われるとなんか特別感してくるな。急にお金がいる用でもあるの?」
男:「世の中には、恵まれない子供達がたくさんいるんです。」
選管:「…うん。」
男:「家が貧しくて、勉強もろくにさせてもらえない子、美味しいものが食べられない子がいっぱいまだいるんです。だから、たくさんお金を手に入れてその子たちの分までいっぱい遊びたいんです!」
選管:「は?最後おかしいでしょ。途中までなんかいい話だと思ったのに。」
男:「そしたらその予定日がたまたま選挙と被ってしまったんですよ。そこで僕は知ったんです、期日前投票なんて制度があるんだと!」
選管:「ちょっと追いつけないよ君の特殊な倫理観に。」
男:「僕は目を疑いましたよ!お金を手に入れたい、選挙に行きたい、この僕の二つの願望を一挙に叶える方法があっただなんて!」
選管:「急に怖いよ。選挙当日からはずらせなかったの?」
男:「ずらせなかったからこうして期日前投票に来てるんじゃないですか係員さん。いいですか。明後日は大安なんですよ。」
選管:「大安?」
男:「大きいに安いで大安です。六曜の中で最も吉。何を行うにも成功する日なんです。」
選管:「風水的なのにも真っすぐなのかよ。」
男:「だから絶対に日にちはずらせないんです。」
選管:「やばいなこの子。うーん、止めなよっていうことしか出来ないからなあ。」
男:「理由は分かっていただけましたよね?それでは投票してきます。」
選管:「うん、、」
男:(選管の下に戻ってきて)「あっ、すみません。」
選管:「なんですか?」
男:(強盗マスクを出しながら)「マスクはもう買ってあったんでした。」
選管:「はい通報ー。」
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