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ロー入試合格者のステートメント【慶應ロー編②】

本記事では、慶應ロー合格者2名(いずれも既修者コース・普通合格)が実際に提出したステートメントを紹介し、書く際のポイントを解説していきます。慶應ロー入試の受験を検討している方は、是非参考にしてください!
(ライター:棚橋/The Law School Timesディレクター)


ステートメント課題

慶應ローのステートメントでは、主に以下2つの課題に対する回答を用意する必要があります。

課題①

あなたが、大学学部、大学院その他の教育研究機関において、どのような問題意識にもとづいて、学習、研究およびそれに関連する活動を行ってきたか、また、そのことがどのような将来のビジョンに結びつくのかを特筆すべき事項を1つから3つにまとめ、その主題を箇条書きしたうえで、内容について説明してください。なお、説明を裏付ける資料を「その他の書類」として提出する場合には、その資料との関連を明記してください。

課題②

課題①に加え、なお記載すべき自己評価およびあなたの将来のビジョンがあれば、説明してください。


本記事では【慶應ロー編②】として、課題②を分析していきます!課題①の分析を知りたい方は、【慶應ロー編①】をご覧ください!


合格者ステートメント※

■ 1人目

【本文】

1. まず、自己評価について、大学生活での活動を踏まえながら述べる。
 (1) 法曹に求められる能力についての自己評価
 私が考える法曹に求められる能力は、情報の的確な収集及びこれに基づく深い考察により、自らの思考を形成し、文章や口頭での表現を通じて相手に伝える能力である(Ⅰ)。そして、この能力に関する自己評価は以下の通りである。
 私は、**留学において、**州議会の進行と人種のサラダボールと言われる多民族国家との歴史的背景などを考察し発表する課題に取り組む機会があった。私は、その課題に取り組む上で、州議会の訪問や関連書籍の収集やホストマザーへのインタビュー等を行い(Ⅱ)、自ら収集したこれらの情報に基づく分析により議会の進行と歴史との関連性などを学習することができた。この経験から、私は、情報の的確な収集及びこれに基づく深い考察をするという能力を培うことができた(Ⅲ)。
 他方で、自らの思考を相手に伝える能力については、思考を言語化して相手方に容易に理解し納得してもらうという点で今後の課題であると考える。そこで、貴法科大学院の授業における先生からの質問に対する回答や先生に対する積極的な発言・質問、更には学生同士の自主ゼミ等での議論を通じて培っていきたい(Ⅳ)と考える。
 (2) 長所についての自己評価
 ア  1つ目は、積極性である。
 私は、例えば、法律相談部に入部する、◯◯留学に参加する、対審式形式のゼミに所属する、最高裁判所見学や刑務所見学に参加するなど、多くの活動に積極的に参加してきた(Ⅴ)。
 法律相談部については、自分が法律相談をするイメージがわかず不安もあったが、法的問題を抱える市民の相談に乗ることは、将来の法曹としての仕事に活かすことができると考え入部を決意した。
 留学や最高裁判所見学・刑務所見学への参加については、参加を希望する友人がおらず、人生で初めての体験であったため不安だったが、私の長所であるコミュニケーション能力を発揮すればきっと良い経験になると思い、他人に流されることなく自らの意思で参加した。
 対審式形式のゼミについては、準備が忙しくゼミに割く時間が多くなりそうと聞いており、受験勉強やその他の活動に充てる時間が限られてしまうと感じたが、他方で、各回のゼミの充実度や吸収できる知識量を踏まえると法曹を目指す私にとって最適な環境であると考え、所属を決意した。
 これらの積極性は、法曹という職業があらゆる人と関わり、相手方に応じた臨機応変かつ問題の解決に向けた能動的な対応を求められる職業である点で活かすことができると考える(Ⅵ)。
 イ  2つ目は、状況を俯瞰してより良い解決を導くことができる点である。
 良い組織とは、1人の能力が先行するのではなく、構成員全員の能力を総動員して問題の解決に取り組む組織であると考える。そして、そのような組織を作るためには、構成員の考えを尊重しつつ、取捨選択を通じて1つにまとめ、共通の目的意識を形成するリーダーとしての役割が不可欠であると考える。
 私は、ゼミや留学等の活動で組織を形成して課題に取り組む中で、構成員の意見に耳を傾け、時には自身の知識や経験を表現することで共通の目的意識を形成するというリーダーとしての役割を果たした。さらに、場面に応じて適切な指示を出すというリーダーシップを発揮し、構成員全員が共通の目的に向かって努力し、構成員全員で問題を解決するという理想の組織を形成した(Ⅶ)。
ウ  これらの長所は、法曹の統率力という能力として活かすことができると考える(Ⅷ)。

2. 次に、私の将来のビジョンについて述べる(Ⅸ)。
 (1)  1つ目のビジョンは、子のいる夫婦の離婚問題に貢献できる弁護士になることである。
 私は、幼少期に両親が離婚するという経験を有し、母と別居しなければならないという物理的負担、周囲から「母親がいない子」というレッテルを貼られるという精神的負担を被った(Ⅹ)。
 とりわけ子どもは、離婚の意味や離婚による負担を理解し難く、離婚するか否かの決定において意見を述べる機会を与えられることも少ないため、子を持つ親が離婚するに際しては、周囲の大人が子の利益を考慮する必要があると考える。
(2)  2つ目のビジョンは、子ども(一般市民等)に法曹を身近に感じてもらうことである。そして、かかるビジョンを実現するために以下2つの活動をしていきたいと考える。
 ア  1点目は、講演活動である。弁護士という職業を端的に表現すれば人を助ける職業であり、医者のように身近な存在である。そして、体調に異変が生じたときに医者に行くように、些細なことでも相談できる存在であるべきである。しかし、私は、大学に入学するまで弁護士という存在の役割や重要性を知らず、弁護士は法律という難しい問題を扱っており格式が高く、法的知識なしには相談し難い等の固定観念を有していた。だからこそ、子どもの頃から弁護士という職業を身近に感じ興味をもってもらいたい。
 弁護士のあるべき存在と生徒が持つイメージに乖離が生じているのは、生徒に弁護士の職場体験をさせることが難しいこと、弁護士と直接関わる機会が少ないこと、弁護士が身近に居なかったこと等に起因していると考える。そこで、弁護士として小・中学校や高校に出向いて講演し、弁護士という職業は、勉強にのみ取り組んできた頭の堅い職業であると想像するかもしれないが、実は様々な経験や様々な職業の方との関わりを通じて幅広い知識や一般感覚をもち柔軟に問題解決に尽力する職業であるということ、弁護士が社会においてどのように貢献しているのかということ、いかなる魅力を有しているのかということ等について伝えていきたい(Ⅺ)と考える。
 イ  2点目は、情報発信活動である。現代社会では、テレビ・ラジオ・新聞などの媒体が衰退する一方、オンデマンドやオンラインの動画配信の需要が高まっている。そこで、私は、時事的な社会問題を法的側面から考察しその考察内容をインターネットを通じて発信することで、法的専門知識を有しない国民が興味を持ち、法律をより身近に感じてもらえるような活動をしていきたい(Ⅻ)と考える。

【コメント】

本ステートメントの特徴
(Ⅰ)の部分
法曹の仕事と自己評価とのつながりを示せています。
(Ⅱ)の部分
自分が取り組んだ具体的な活動を示せています。
(Ⅲ)の部分
自己評価を示せています。
(Ⅳ)の部分
自身の課題点についても言及できています。
(Ⅴ)の部分
自分が取り組んだ具体的な活動を示せています。
(Ⅵ)の部分
法曹の仕事と自己評価とのつながりを示せています。
(Ⅶ)の部分
自分が取り組んだ具体的な活動を示せています。
(Ⅷ)の部分
法曹の仕事と自己評価とのつながりを示せています。
(Ⅸ)の部分
適切に段落・ナンバリングを変更できています。
(Ⅹ)の部分
自分の体験から将来のビジョンを導けています。
(Ⅺ)(Ⅻ)の部分
具体的なビジョンを示せています。

全体的な感想
 自己評価を述べる場面では、自身の経験と関連付けて根拠に基づく評価が示せています。また単に自身の長所を書くだけでなく、その長所がどのように法曹の仕事に繋がるのか示せており素晴らしいです。更に、自分の長所だけでなく課題点についても言及しており、自身を客観視できていることをアピールできています。
 ただ、1つ目に挙げた積極性という長所についての記載と比べると、2つ目に挙げた統率力という長所についての記載はやや抽象的な印象を受けます。例えば「ゼミや留学等の活動で組織を形成して課題に取り組む中で、構成員の意見に耳を傾け、時には自身の知識や経験を表現することで共通の目的意識を形成するというリーダーとしての役割を果たした」と記載されている部分では「どのような課題に取り組む中で、構成員からどのような意見が出て、それに対してどのような知識や経験を表現してどのような共通の目的意識を形成したのか」を簡潔かつ具体的に述べられると、統率力があるという主張に説得力が出て、より良いステートメントになるでしょう。
 なお、ステートメントに限らず、就活においても自身の長所を聞かれる場面は多いです。その際には、この方のように2つの長所を述べるのも良いですが、1つ1つの長所についての記載が薄くなってしまうことを防ぐため、個人的には長所は1つに絞って厚く書くことをお勧めします。
 将来のビジョンに関する記載については、自分の原体験から将来のビジョンが導かれている上、具体的な活動(講演活動や情報発信活動)にまで言及できており非常に説得力があります。
 さらに良いステートメントにするには、自己評価と将来のビジョンを繋げてしまう手もあるかと思います。例えば「持ち前の積極性を発揮し、様々な場所に出向いて講演をしたり、社会問題を法的側面から考察しその考察内容をインターネットを通じて発信したい」といった記述が考えられます。
 また、挙げられている2つのビジョンはどちらも子どものために活動する点で共通しているので、「子どものために活動する弁護士になる」という1つのビジョンにまとめて「そのビジョンに基づく具体的な活動として①離婚問題への取り組み、②講演活動、③情報発信活動、を行いたい」と書くと、より伝えたいことが明確になるのではないかと思いました。


2人目

【本文】

 ⑴ 2.において、私の将来のビジョンとして、グローバルに社会貢献が出来る弁護士というビジョンを掲げた。思うに、このビジョンの前提として、①グローバル性、及び②弁護士としての資質が必須である。これらの能力を身につけるべく、学部時代には以下の取り組みを行った(Ⅰ)。
 ⑵ ①グローバル性について
 英語力、及びグローバルな視点を養うべく、3年次には半期の交換留学に参加した(Ⅱ)。そもそも、グローバルに活動する為には、英語力が必要なことは疑いがない。その為、この強化は必須であり、そのツールとして留学は最も効果的なものと考え、留学を決意するに至った。そして、実際に、留学後にはTOEICで900点以上を取れた(Ⅲ)ことにより、グローバル性の内、英語力については一定程度の能力を身に着けることが出来たと考える。
 他方、グローバルに活躍する上で、英語力と同じ程度に重要なのは、グローバルな視点を持つことである(Ⅳ)と考えている。なぜなら、弁護士となった際に依頼者が外国人あるいは外国の法人であった場合、彼らの主張を理解するためには、彼らの価値観を理解することが前提条件であるからである。その為、留学先では、法律だけでなく、幅広い分野の講義を履修し、併せて多くの人々と話すことで、グローバルな価値観や国際基準を得ることに繋がった(Ⅴ)。
 ⑶ ②弁護士としての資質について
 私は、弁護士の資質とは、法的知識やコミュニケーション能力はもちろんだが、依頼者との連絡や契約書の作成、手続きなどと多岐に渡る業務を限られた時間の中で、計画的、かつ質を高めて行うことが出来る能力が重要であると考える(Ⅵ)。そこで、計画性を持つこと、及び質を高めることを意識するべく、学部では、成績を高水準で維持することを特に重要視していた(Ⅶ)。なぜなら、好成績を取る為には、綿密なスケジュール管理と、高い質での学習が必要であり、これらの点で上述の弁護士としての資質に結び付くと考えた為である。そして、実際に、自身のスケジュールを細かく管理し、学習に励んだことで、学生生活を通じて、成績優秀者となることが出来、留学先でも良い成績を取ることに繋がった(その他の資料①)。加えて、2年次の成績は、法学部成績最優秀奨学生(その他の資料②)に選ばれる結果となった(Ⅷ)。
 この様な、学部時代の勉学に取り組む姿勢は、弁護士としての資質に結び付くものであると考える。
 ⑷ これらの能力に更に磨きをかけていき、弁護士として、国際的に社会貢献を行っていきたいと考える。
以上

【コメント】

本ステートメントの特徴
(Ⅰ)の部分
自身の将来のビジョンと関連させることで、今回自己評価をする対象となる能力を絞り込めています。
(Ⅱ)の部分
自分が取り組んだ具体的な活動を示せています。
(Ⅲ)の部分
自身の主張を裏付ける客観的な証拠を示せています。
(Ⅳ)の部分
自分が議論の対象として絞り込んだ能力を、さらに掘り下げることができています。
(Ⅴ)の部分
掘り下げた能力について、経験を絡めて自己評価を示せています。
(Ⅵ)の部分
自分が議論の対象として絞り込んだ能力を、さらに掘り下げることができています。
(Ⅶ)の部分
能力の指標として、客観的な基準を示せています。
(Ⅷ)の部分
自分が示した指標をもとに、自己評価を示せています。

全体的な感想
 本ステートメントでは①最初に将来のビジョンから議論の対象となる能力を限定し、②その後にそれらの能力を身につけるための活動を書いています。構成が適切であり、文章も簡潔でとても読みやすいです。また、将来のビジョンと自己評価との繋がりが明確で、伝えたいことがわかりやすいです。
 また、能力に関する自己評価を書く際に、TOEICの点数や学部の成績など、客観的な指標を示せており説得力があります。
 現状でも十分完成度の高いステートメントですが、より具体的な情報を盛り込むことができれば、更に良いステートメントになると思います。例えば、グローバル性について述べる部分では「グローバルな価値観や国際基準を得ることに繋がった」と記載されていますが、これらの価値観や国際基準とは具体的にどのようなものなのか、一言でも良いので説明できると読み手が得るイメージをより鮮明にすることができ、文章全体の説得力がグッと増すでしょう。
 他にも「悩みを見せる」ことも良いステートメントの一要素です。例えば「外国人と話している時に、会話の内容は理解できるが、価値観の違いからうまくコミュケーションが取れないことがあって苦労した」など、自分が苦労した経験を示すことができると文章に起伏ができて読みやすくなるうえ、自分の努力や成長もアピールできます(とはいえ、実際になかったことは書くことができないので、無理に書く必要はないです)。


おわりに

いかがだったでしょうか?本連載が少しでもみなさまのお力になれば幸いです。
ロー入試、応援しております!みなさまの努力が実りますように。


The Law School Timesは司法試験受験生・合格者が運営するメディアです。「法律家を目指す、すべての人のためのメディア」を目指して、2023年10月にβ版サイトを公開しました。サイトでは、司法試験・予備試験やロースクール、法律家のキャリアに関する記事を掲載しています!noteでは、編集部員が思ったこと、経験したことを発信していく予定です。


※太字及びギリシャ数字は筆者が加筆しています。一部個人情報を*印で加工しています。本記事の本文中では、noteの機能上、インデントが揃えられていませんが、実際のステートメントではインデントを揃えています。

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