【令和6年度最新版】東大ロー予備合格者が考える予備口述対策の王道
予備試験論文式試験に合格された皆さん。論文通過、本当におめでとうございます。僕自身、予備試験最終合格よりも、司法合格よりも、圧倒的に予備論文の合格が一番嬉しかったです。まずは、その喜びを噛み締めていただければと思います。
ただ、今は口述対策に追われているのではないでしょうか。
「情報収集をしても、記事により書かれていることがまちまちで、何が正解か分からない。」「期末試験で好成績を目指すためにミニマムで抑えたいものの、絶対に落ちたくない。」
そんな声にお答えして、本記事では、確実に受かるミニマムの勉強法を紹介いたします。すでに、40人以上の論文合格者にお話しした王道ルートがここにあります。
(ライター:いのっち/学習PROMPT代表コーチ、ノウハウ提供:LSTimes口述模試作問陣)
民事系
近年の出題傾向
例年、口述試験(民事)では、要件事実の問題がメインで出題されております。要件事実については、まず、単に暗記しているかを問う問題が出題されます。ただ、それだけでなく、当該事実がなぜ要件事実なのかについて理解しているか、すなわち、民法から要件事実を導出できるかを問う問題が多く出題されています。
加えて、執行保全や法曹倫理の分野から、問題が出題されます。また、昨年度の傾向として、細かい実体法上の知識(いわゆる短答知識)を問われるというものが見られました。
勉強法の総論
例年の出題傾向からすると、細かい要件事実も含めて、要件事実を網羅的に覚え、穴をなくすことが何よりも重要です。
また、思考力を問う問題に備えて、要件事実の導出根拠を押さえることが有用です。
さらに細かい実体法上の知識が要件事実に付随して聞かれていることから、関連する判例法理も合わせて抑えていくべきです。
こうした出題の対策として、民法の短答を回すのが良いという見解を耳にしましたが、問題の選別が困難で、残された時間を考えると現実的な対応策とは言い難いです。あくまでメインは要件事実であり、それに付随して細かい知識が問われていることをふまえると、細かい実体法上の知識は、要件事実と一緒に勉強をするべきといえます。
使用教材
完全講義民事裁判実務[要件事実編](大島本(要件事実編)) A+
完全講義民事裁判実務[基礎編](大島本(基礎編))orアガ一問一答 A
判例六法 A
民訴の論証集 B
A+ マスト(やらないと合格は怪しい)
A やらなくても合格する可能性が高いが基本的にはやるべき
B 時間に余裕がなければやらなくても良い
要件事実の勉強法
まず、メインで使用するのは、大島本(要件事実編)です。具体的な使用方法は以下の通りです。
1周目・2周目
STEP1:大島本(要件事実編)中の〈Case〉を読んで、訴訟物、請求の趣旨、請求原因事実、抗弁、再抗弁、・・・を自分の頭で考えて、整理する。
STEP2:請求原因、抗弁、再抗弁、・・・の導出根拠(民法の条文や判例法理)を想起する。
STEP3:地の文を読んで、間違いがないか確認し、間違いがあれば、付箋を貼るなどのマークをする。
STEP4:大島本に載っていた条文や、その隣の条文などを読んで、根拠となる条文の文言を特定して、導出根拠を整理する。
STEP5:その周辺の条文と判例を判例六法で読み、知識に漏れがないかチェックし、漏れがあれば、付箋を貼るなどのマークをする。
3周目以降
付箋の貼られている〈Case〉を中心に、同じ方法で勉強を進める。
このように、大島本をメインにおきつつ、判例立法を適宜参照しながら勉強することで、本番に出題されるのに限りなく近い順番で、勉強することができますし、無駄が省かれ、効率的な口述対策をすることができます。
執行保全の勉強法
執行保全は、大島本基礎編またはアガ一問一答の執行保全部分を勉強すれば十分です。掲載されている内容に有意な差はないので、いずれを使っても問題ありません。問題形式が良い場合には、アガ一問一答を、基本書スタイルに慣れている場合には大島本基礎編を利用されると良いと思います。
民訴法の勉強法
民訴法の知識が正面から問われることはあまりないため、合格に必要最小限の勉強という意味では、改めての復習は必要ありません。ただ、昨年、民法の細かい知識が問われたように、傾向が急に変わって民訴法が出題される可能性もないではないので、論証集などの使い慣れている教材を用いて、短時間で、簡単に総復習することをお勧めします。
また、管轄や移送など、過去問を遡ると過去出題実績のアル分野がありますので、そうした分野については、過去問の復習の際に、判例六法で、条文と関連判例を押さえておくことをお勧めいたします。
法曹倫理の勉強法
法曹倫理に関しては、執行保全と同様、大島本基礎編またはアガ一問一答の該当箇所で勉強することをおすすめいたします。過去問で繰り返し問われている問題を中心に、知識を整理していきましょう。
刑事系
近年の出題傾向
例年、口述試験(刑事)では、刑事実体法の問題と手続法の問題がバランスよく出題されています。
刑法の問題としては、特に財産犯が頻出です。また、総論分野では、因果関係、故意、共犯、未遂などの分野がよく問われています。また、想起すべき判例があることが多い特徴にあります。
刑訴法の問題は、幅広く、捜査及び公判から出題されております。特に、公判前整理手続や訴訟の進行に関する問題が多いです。直近では、公判前整理手続をメインで問う出題はないものの、依然として重要分野ですので、抜かりなく対策しましょう。
勉強法の総論
例年の出題傾向からすると、刑法と刑訴法について網羅的に勉強し、穴をなくすのが重要です。その上で、財産犯や訴訟手続きなど、特に頻出の分野について、細かい知識、深い知識を入れていきましょう。
刑事系については、対策に変化をもたらすような出題傾向の変化はみられないので、例年の合格者が、揃って実践していた勉強法を実践するのが良いと考えられます。
使用教材
基本刑法Ⅰ(総論) A
基本刑法Ⅱ(各論) A+
刑事実務基礎の定石 A+
基本刑事訴訟法Ⅰ(手続理解編) B
基本刑事訴訟法Ⅱ(論点理解編) B
A+ マスト(やらないと合格は怪しい)
A やらなくても合格する可能性が高いが基本的にはやるべき
B 時間に余裕がなければやらなくても良い
刑法の勉強法
基本刑法Ⅱ(各論)をメインに勉強します。具体的な使用方法は以下の通りです。
1周目・2周目
STEP1:トピックとなっている犯罪の構成要件及びその定義を想起する。
STEP2:本文を読んで確認し、誤っていれば付箋を貼るなどしてマークする。
STEP3:グレーアウトされている【事例】、【設問】を読んで、その解答を2文程度で即答する。
STEP4:地の文を読んで確認し、誤っていれば付箋を貼るなどしてマークする。
POINT①:構成要件の定義は一言一句覚えなくても良い。まずは要素を覚えて(ex.「窃取」:①意思に反する②占有移転)、次に文で覚えていく(ex.「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己又は第三者の占有に移すこと)。
POINT②:解答は2文程度で考える。口述試験本番では、冗長な回答は御法度。そのため、短文で即答する準備をすることを心がける。
POINT③:まずは自説を中心に知識を固めていく。他説批判は、流し読みで問題ない。
3周目以降
付箋の貼られている【事例】、【設問】を中心に、同じ方法で勉強を進める。
基本刑法(総論)についても、基本的には同じ流れで進めていくことになります。ただし、因果関係、故意、共犯、未遂(不能犯も含む)を中心に回していくべきで、それ以外の分野については、時間がなければ流し読みでも良いと思っております。
刑訴法の勉強法
刑訴法については、定石を使って、捜査から判決に至るまでの流れを押さえると共に、各場面で問題となる論点について、正確な知識を入れていく必要があります。
基本的には、定石で足りると考えられますが、時間がある場合には、基本刑訴を使用して知識を整理すると良いと思います。
予備校の論証については、とりわけ刑訴は内容が不正確なところが多いためあまりお勧めできませんが、基本刑訴を通読する時間まではないが、刑訴を復習したいという場合には、有効かと思います。
アウトプット
口述式試験の1番の特徴は、問題文が口頭で読み上げられ、受検生は、それを聞き取って、口頭で回答しなければならないという形式面にあります。論文式試験のように答案構成をする時間はないですし、主査から受ける圧迫感と絶対に滑れないという緊張感に耐えて、回答しなければなりません。
そのため、アウトプットに慣れる必要があります。
口述過去問
僕は、毎日1年分(民事系と刑事系)を出題し、その裏の問題を出題してもらうという勉強法を、元日を除いて毎日やっていました。毎朝7時から2〜3時間やっていたので、勉強習慣を作るという意味でもよかったです。
僕は11月頃から始めていたので、毎年1年分ずつ解くことで、全ての問題について出題者側と受験生側を経験できました。これから始められる方は、時間が許すならば、1日2年分程度進めていくことをお勧めいたします。どんなに忙しくても、1日1年分は実践形式で解きましょう。
口述模試
親しい友人と実践形式で対策をしていても、なかなか本番の緊張感は体験できません。もっとも、本番の最大のリスクは、言葉が詰まることによって生じる途方もない緊張感と不安によって、思考が停止することです。
このようなリスクを最小限にするためには、口述模試が最適です。
多くの受験生が受けている伊藤塾の模試は必ず受けましょう。また、受験機会がある人は、辰已の模試も非常に好評なので、ぜひ受けましょう。
LSTimesでも、僕が作問・監修している口述模試を実施します。最高のクオリティの問題ですので、ぜひ受験していただければと思います。
まとめ
口述試験は、基本的に受かる試験です。もっとも、毎年落ちる人がいることも事実です。受験するのは、皆予備論文の合格者。合否を分けているのは論文知識ではありません。口述に特化した対策を怠った人から落ちていくのです。
皆さんには、合格に必要な対策を行っていただき、ぜひ合格してもらいたいと思っています。応援しています。頑張ってください。
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12月28日16時頃 誤字を修正し、見出しを一部編集しました