予備・司法試験における論証の覚え方
「論証ってどこまで覚えなきゃいけないの?」
「どの論証集を使ったらいいの?」
こんな悩みを抱えている受験生は多いのではないでしょうか。筆者も受験生時代、こんな悩みをずっと抱えていました。そこで今回は、予備試験・司法試験に合格した筆者が導き出した自分なりの結論を示したいと思います。悩める受験生のお役に立てれば幸いです。(ライター:みね/The Law School Timesライター)
論証の暗記法
結論:論証は全てを完璧に覚える必要はない!
結論から言うと、論証は全てを完璧に覚える必要はありません。
そう考える理由は3つあります。
理由①:コスパが悪い
まず1つ目の理由は、コスパが悪いからです。
旧司法試験に比べて新司法試験では問題文が長くなったため、当てはめ部分に多くの配点が振られるようになっていると考えられます。そしてそれは論証部分の配点が相対的に下がることを意味するため、論証を完璧に暗記したとしても点数が伸びない上、論証以外の部分に割く文量・時間が足りなくなってしまい、むしろ点数が下がってしまう可能性すらあります。論証を完璧に覚えるよりも答案作成能力(答案作成時に適切な答案構成や当てはめ、時間配分などができる能力)を磨いたり問題演習の量を増やしたりする方が点数に直結すると考えられるため、論証暗記に過度に時間を費やすことは普段の学習においてもコスパが悪いと言えます。
理由②:論証を完璧に覚えることは(ほぼ)不可能
2つ目の理由は、論証を完璧に覚えることは(ほぼ)不可能だからです。
よほどの超人でない限り、あれほど長い文章を何百個も完璧に覚えることは不可能です。受験生のうちは不安から周りの受験生のレベルを高く見積りすぎてしまいがちですが、私が出会ってきた受験生で論証を一言一句完璧に覚えている人は一人もいませんでした。司法試験は相対評価の試験なので、みんなができないことはしなくて大丈夫です。
理由③:論証パターンで処理できない問題が増えてきた
3つ目の理由は、論証パターンで処理できない問題が増えてきたからです。
令和5年度予備試験の憲法に見られるように、近年の予備試験・司法試験では論証集を暗記するだけでは解くことのできない問題が出題される傾向にあります。そして、年々その傾向は強まっているように感じます。論証パターンを素直に使用することができない問題が増えてきた以上、論証の暗記に時間をかけすぎるのは得策ではないでしょう。
論証暗記例(論証のどの部分を覚えればいいのか、具体例)
以上の理由から、論証の全てを完璧に覚える必要はありません。とはいえ、どこまで覚えればいいのか分からない受験生も多いと思います。
そこで筆者なりの考えを示すと、規範部分のみ完璧に暗記できれば十分だと考えています。理由付け部分はある程度論証と似た内容が書けていれば良いですし、考慮事情に関しては問題文に示された事情から逆算して想起できれば十分です。イメージとしては、以下のように論証にメリハリをつけることが重要です。
このように、論証のうち暗記しなければならない部分は少ないです。
相対評価で沈むのが怖いと思う方もいると思いますが、私はこの方法で予備試験の複数の科目でA評価を取ることができています。また、B以下だった科目については論証暗記の精度が悪かったのではなく、考慮事情を忘れてしまったり問題文の読み方を間違えたりといった明確なミスがありました。
以上のような方法で論証暗記にかける時間を減らし、問題演習や答案作成能力の向上のために多くの時間をかけるようにするべきだと思います。
論証集の選び方
論証集に対する基本的な考え方
次に論証集の選び方についてですが、定評ある論証集ならなんでも良いというのが正直なところです。
大前提として、全てが完璧な論証集など存在しません。どの論証集も、学問的に誤った記載があったり、記載が長すぎたりあるいは短すぎたり、載っていない論点があったり、論証の重要度を示すランク付けが適当だったり、何かしらの欠点があると考えています。
結局はどの論証集を使うかよりも、論証集をどのように使うかの方が重要です。どの論証集を選んだとしても、その論証集に足りない部分を自分で補い、カスタマイズしていく必要があります。
筆者おすすめの論証集
上記のような前提のもと、受験生のタイプ毎に筆者おすすめの論証集を挙げておくと、
・網羅性と正確性が欲しいタイプ:加藤ゼミナール論証集
・人の書いた文章を覚えるのが苦手なタイプ:趣旨規範ハンドブック
・考慮事情まで論証に組み込んで覚えたいタイプ:アガルート論証集
・伊藤塾生で、論文マスターテキストを解きながら論証を覚えたいタイプ:論文ナビゲートテキスト
になります。あくまで参考程度ですが。個人的には、加藤ゼミナール論証集が最もおすすめです!
どの論証集にも長所短所が存在するので、実際に手に取って自分に合う論証集を探してみるのが良いと思います。先ほども述べた通り、論証集はカスタマイズして使うものです。一度論証集を選んだらその論証集と心中するつもりでカスタマイズしまくりましょう!
おわりに
●論証は全てを完璧に覚える必要はなく、規範部分のみ完璧に暗記できれば十分
●論証集は定評あるものならば何を使ってもよい。選んだ論証集に足りない部分を自分で補い、カスタマイズする必要がある
いかがでしたでしょうか?
本記事が少しでも、悩める受験生のお役に立てば幸いです。
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