司法試験と司法書士試験、なにが違うの?
司法試験・司法書士試験はともに難関試験と言われています。今から勉強を始める人の中には、どちらを目指すべきか迷っている人もいるのではないでしょうか。
現在ロースクール2年生である筆者も学部在籍時には、企業への就職活動をするのか、公務員試験を目指すのか、司法書士試験を目指すのか、司法試験に挑戦するのかと大変迷ったものです。
また、現在司法試験・予備試験に挑戦しているが、司法書士試験への転向を考えているという人もいるかもしれません。
そこで今回は、かつての筆者のように進路に迷う大学生や、司法書士試験への転向を考えている方々に向けて、司法書士試験の概要を紹介していきます。(ライター:向田/The Law School Timesライター)
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(公開日未定)
司法書士試験の概要
司法書士試験の流れ
司法書士試験は、次のような流れで実施されます。
①筆記試験
↓筆記試験に合格すると
②口述試験
↓口述試験に合格すると
最終合格!
筆記試験は、午前の部と午後の部に分かれています。午前の部では択一式(多肢択一式)試験のみが実施され、午後の部では択一式試験に加えて記述式試験も実施されます。そして、択一式試験において午前の部・午後の部それぞれの基準点を超えた人のみが記述式試験の答案を採点される仕組みになっています。
また、筆記試験に合格したものの口述試験に合格できなかった者は、次年度の筆記試験が免除されます。このあたり、予備試験においては論文式試験に合格して口述式試験に不合格となっても翌年度以降に何らの救済措置がないことに比べると、慈悲がありますね(笑)
司法書士試験の受験科目
筆記試験は午前の部と午後の部に分かれて実施されますが、法務省によれば、出題範囲は下表の通りです。
なお法務省によれば、2024年度司法書士試験から筆記試験の配点が変更されます。記述式問題の配点が従来の2倍となったため、2024年度以降は記述式問題の重要度が上がることになります[2]。
合格者のデータ
法務省によれば、2023年度司法書士試験の出願者は16,133人でした[3]。
受験者は13,372人、合格者は695人(最終合格率約5.2%)でした。また、最年少合格者は19歳、最高齢合格者は82歳でした[4]。
なお司法書士試験には受験資格の制限がなく、誰でも受験することができます。
試験合格後すぐに司法書士になることができるか?
司法書士試験合格者は司法書士名簿に登録することで、初めて司法書士としての業務を行うことができるようになります。(司法書士法8条1項、2項)
そして、日本司法書士会連合会(日司連)によれば、名簿への登録前には「新人研修」を行う必要があります[5]。
すなわち合格者は、新人研修を経て司法書士として登録されることで初めて司法書士としての業務を行うことができるようになります。
司法書士の「新人研修」はどんなもの?
日司連によれば、新人研修は「中央研修」「ブロック研修」「司法書士会研修(配属研修)」の3つの研修で構成されており、例年12月~翌年3月に渡って開催されます[5][6]。
中央研修は日司連が実施する、最初の研修です。日司連によれば、「司法書士制度の歴史」や「現在司法書士が行っている主要業務や活動の成り立ち」を学び、「身に付けておくべきマインドや職責・職業倫理」などを学ぶ研修とされています[7]。
ブロック研修は地域ごとに行われる、2番目の研修です。日司連は「実務の現場において必要とされる知識や実務に直結した講義を多く用意」した研修としており、中央研修より実践的な内容のものとなっています[7]。
司法書士会研修(配属研修)は、日司連によれば「先輩の司法書士事務所で実務を学ぶ研修」であり、ついに実務に触れる研修です[7]。
仕事の範囲を広げたくなったら?
これに加えて、「特別研修」も用意されています。日司連によれば特別研修では「講義」や「実務研修(法廷傍聴)、受講者自身による模擬裁判、少人数で課題に取り組むグループ研修」を行います[8]。
特別研修を終えたのち、簡裁訴訟代理等能力認定考査に合格すると、認定司法書士として簡裁訴訟代理等関係業務もできるようになります。(司法書士法3条2項、3条1項6号から8号)
当該試験を目指すことのメリット(予備試験・司法試験対策)
最初から両試験の合格を狙いたい
司法書士試験・ 司法試験のいずれについても、もう一方の受験によって科目免除などの優遇措置がとられることはありません。ここで、司法書士試験には受験資格の制限がない一方、司法試験については合格率の低い予備試験に合格するか、ロースクールを修了(見込)しなければ受験資格を得ることすらできません。
したがって、まずは司法書士試験に向けて勉強し、合格後に予備試験・ロースクール入試の対策に進むと良いでしょう。
すでに司法書士試験受験経験がある・合格している人の場合
司法書士試験の範囲となっている科目のうち、憲法、民法、刑法、商法・会社法ならびに民事訴訟法が重複しています(下表太字部分参照)。更にこれ以外の科目の知識も予備試験・司法試験の短答式試験に一部活かすことができるため、決して無駄になりません。
司法書士試験を受けるべきなのか?
司法試験と司法書士試験の両にらみをすべきなのか?
弁護士は、司法書士の業務を全て行うことができます(弁護士法3条1項、司法書士法3条1項、2項参照)。よって、2つの資格をとったからといってできる業務の範囲が広がるなど有利になることはありません。
ただ、司法書士として登記手続の実務経験を積んだ人がステップアップとして司法試験に挑戦する場合、合格後に司法書士としての経験を活かすことができるでしょう。
司法試験受験者が、これから司法書士試験を受けることのおすすめ度は…
★★★☆☆
おわりに
● 司法試験には受験資格の制限がある一方、司法書士試験には制限がない
● 司法書士試験に合格しても司法試験では優遇されないが、受験科目は重複しているため知識は無駄にならない
● 弁護士は司法書士の業務を全て行えるが、司法書士としての経験は弁護士業務にも活きる
現状では筆者自身は、司法書士を経由することなく司法試験を目指していこうと考えています。また、ここには掲載しきれませんでしたが、法律上の規定の違いにとどまらず司法書士、弁護士は棲み分けと助け合いを行っているようです。
本記事を踏まえ、みなさんそれぞれがご自分に合った選択ができますように願っております!
The Law School Timesは司法試験受験生・合格者が運営するメディアです。「法律家を目指す、すべての人のためのメディア」を目指して、2023年10月にβ版サイトを公開しました。サイトでは、司法試験・予備試験やロースクール、法律家のキャリアに関する記事を掲載しています!noteでは、編集部員が思ったこと、経験したことを発信していく予定です。
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【修正】2023年12月16日午後11時35分 「試験合格後すぐに司法書士になることができるか?」について、内容を一部変更しました。
[1]「令和5年度司法書士試験受験案内書」https://www.moj.go.jp/content/001393003.pdf
[2]「【重要】司法書士試験筆記試験記述式問題の配点の変更について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00572.html
[3]「令和5年度司法書士試験の出願状況について」https://www.moj.go.jp/content/001397146.pdf
[4]「令和5年度司法書士試験の最終結果について」https://www.moj.go.jp/content/001404922.pdf
[5]「新人研修」
https://www.kensyu.nisshiren.jp/Training/newface/
[6]「令和5年度司法書士新人研修スケジュール」
https://www.kensyu.nisshiren.jp/Training/newface/data/r05_flow.pdf
[7]「令和5年度司法書士新人研修のご案内」
https://www.kensyu.nisshiren.jp/Training/newface/data/r05_info.pdf
[8]「特別研修」
https://www.kensyu.nisshiren.jp/Training/special/
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