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司法試験受験生による、行政書士試験合格体験記【勉強法&スケジュール編】
先日、「司法試験受験生は行政書士試験を受けるべきか?」を執筆した向田です。遅ればせながら、私自身も令和5年度行政書士試験を受験し、無事合格いたしました。
7月29日から令和6年度行政書士試験の出願が始まる今、本記事では、私が行政書士試験の学習において、前編の「司法試験受験生による、行政書士試験合格体験記【教材編】」で紹介した教材をどう活用したかをお伝えします。また、学習スケジュールも合わせてご紹介します!
これから行政書士を受験される方はもちろんのこと、ロースクール在学中、予備試験短答学習中のさまにとっても、この記事がお役に立てば幸いです。
(ライター:向田/The Law School Timesライター)
使用した教材や各教科の試験成績は、前編でご紹介しています。
教材の具体的な進め方
①民法
『合格セレクション』には5択の「フル問題」のほか、1問1答パートがあります。しかし、1問1答パートは、問題と同じページに答えが載っているうえに解説も薄くて、使いづらかったです。
そこで、1問1答は飛ばして「フル問題」だけを解く使い方に変えました。これだと、民法全てでたったの172問です!(実は私は、要件事実などは飛ばしたため、172問すらやりきっていません)
「フル問題」だけでも、絶対に落としてはいけない知識、すなわち、行政書士であれば、法令の択一で足切りを食らわない程度の知識はつきます。しかし、細かい知識や発展的なところまでは、どうしても手が届きません。そこで、アプリの「法令択一クエスト」で、細かい部分(根抵当や根保証など)を補うほか、フル問題で何度も間違えた分野は、1問1答にも取り組みました。
民法の学習スケジュール
学習スケジュールは、時間ではなく問題数で区切っていました。直前期には、合格セレクションを、ロースクールの予習がない日は1日11問、予習がある日は1日3~5問という感じでやっていました。
ずっと同じ分野をやり続けると気が狂うタイプなので、総則ばかり11問ではなく、総則2、物権3、債権総論3、債権各論1、親族1…みたいな感じでやっていました。
なお、計画的に決めていたのはその日にやる問題数だけで、各分野の比率はその日の気分で決めていました。(ただ、1分野から1個はやることにしていましたし、本の厚みから、おのずと数が増える部分はありました。)
『合格セレクション』は、知らない条文や判例が出てきたら都度引くようにし、間違えたところに付箋を貼って進めました。10月中盤以降は、新しい問題を進めながらも付箋を貼った問題をやり直す、という進め方をしました。このときも、「付箋〇問」「新問●問」と、それぞれの合計だけを決めたうえで分野ごとの比率はその時の気分で決める方式をとっていました。
アプリの「法令択一クエスト」(資格スクエア)については、ロースクールの民法の授業の後に、その授業で扱った「細かい知識」の単元を解くほか、休日に間違えまくった分野を探してそこを解く、まったくやる気がなければとりあえず「ミニテスト」だけ解く、などしていました。
②行政法
民法と同じアプリ「法令択一クエスト」の分野別演習を頭から解きつつ、「行政書士」アプリ(Trips LLC)の五択問題(過去問形式そのまま)を進めていました。
行政法の学習スケジュール
問題数も見つつ、1日何個の分野をやると決めていました。
最初はもちろん間違えまくるので、その都度手元の『デイリー六法』(三省堂)を引きまくりました。なお、『デイリー六法』には特段書き込みをせず、条文構造を分析したいときは条文を印刷したコピーに書き込みをしていました。行政書士の行政法では、行政〇〇法や地方自治法の条文がそのまま出てくることがよくあるので、試験直前までひたすら『デイリー六法』とにらめっこしていました。
なお、この行政〇〇法等の条文問題が解けるかどうかが、法令択一の足切り回避ラインであり、記述問題を解くための不可欠の前提でもあります。
処分性や原告適格などで出る判例問題については、あまり対策が追い付きませんでしたが、それでも合格点には達しました。
5択については、休日だけ分野を決めて実施しました。このときは、選択肢の数が多いので、見覚えのある判例や条文を都度引き直しはせず、択一を解いているときに、1個1個の問題について条文判例引き直しをしていました。
行政法では、判例の抜粋あるいはオリジナルの文章を穴埋めする問題(多肢択一)も出ますが、ロースクール入試で身に着けた知識だけで乗り切れた(なにもしなくても12点以上取れていた)ので、模試以外は特に対策しませんでした。
③憲法
行政法で使った過去問アプリで、統治を中心に、10月末になってから1日1分野対策しました。
演習不足だったせいか、当日も憲法の成績は振るいませんでした。もう少し憲法を学習していたら表の択一だけでも合格点に達して逃げ切れたはずなので、悔しいです。
憲法の多肢択一も、ロースクール入学前に身に着けてきた知識だけで乗り切れたので、模試以外で特に何も対策しませんでした。
④記述問題
記述は、11月に入ってから、駆け込みで過去問を5年分くらい解きました。解説を見るほか、基になっている条文は必ず引いて、間違えたら書き写していました。短答と違って丸暗記で書きださなくてはならないため、自分の手で書いて覚える作業を怠らないようにしましょう。なじみのない形式かつ配点が大きいため、記述だけは過去問に加えて、直前模試に付いている問題も解きました。問題数が多くないので、週末だけで5年分書いたりしていました。
⑤一般知識(※令和6年から「基礎知識」)
一般知識は、個人情報保護法と文章読解だけ頑張って、あとは運で足切りを回避しましょう。個人情報保護法は、予備の短答や司法試験行政法で少しだけ出題されるので、一般知識の中ではまだ役に立つ部類に入るからです(他はただの常識問題なので、よほど苦手な分野がなければ法令を学習したほうがいいと思います)
文章読解は、SPIなどの就職テストを簡単にした感じで、対策無しでもほぼ全問正解できたので、とにかく丁寧に解くよう心掛けました。
10月下旬くらいから、個人情報保護法の学習を始めました。個人情報保護法は、司法試験の行政法で少しだけ触れるので、条文も読みながら、法令科目と同じように過去問を回しました。
個人情報保護法、文章読解の2分野でなんとか足切りを回避して、あとの政治経済や時事の問題は全く対策せず、運試しをしました。
直前模試
直前(11月以降)は、毎週末模試を解いていました。合格点を切ることもざらにあったので、そのときはハラハラしました。
2カ月弱にわたり短答を詰め込んできたので、時間的には2時間半もあれば十分にすべて解ききって見直しもできるようになっていて、それが本番の余裕にもつながっていました。
受験直前・当日の心構えなど
当日の心構え
予備試験の短答の時、緊張のせいか最初の科目の民事で手が震えてしまって、数分解答できなかったことがあったので、当日はとにかく落ち着いて受験することだけを考えていました。とにかく私は気が小さいので、「絶対受かりに行く」「これだけやったなら、余裕」などと強気になることはできませんでした。
そこで
①自分は受験料8千円の模試を受けに行っている。いつも通りのことをす ればいい。
②今日は、知り合いを探すゲームをしにきている。さあ、知り合いはどこかな。
と考えました。
それでも緊張はしていたらしく、普段は2時間半もあれば余裕で解ききれたはずが、3時間ギリギリで何とか完答したという感じでした。
学習全体を振り返って
やってよかったこと
1. 民法の『合格セレクション』の進め方は自分によく合っていたので、司法試験の短答対策にも継続して取り入れています。
2. 民法、行政法の条文を繰り返し読み込んで良かったです。特に、行政法の条文素読で、行政法アレルギーを克服できたと思います。
3. 当日「知り合いを探すゲーム」をして緊張をほぐしたこと。知り合いがいなそうなら人間観察ゲームもお勧めです。
やればよかったこと・今後の司法試験に向けて改善したいこと
1. 憲法の学習をもう少しやれば良かったです。人権は無理でも、統治分野をもう少し早くやっておけば、択一だけで合格できたと思います。
2. 行政法の判例学習。基本的な条文を繰り返し読むことで、行政法アレルギーからは脱出できたので、これからは個別法と判例をしっかり読み込む時間を増やそうと思います。
3. 全体的なスケジューリング。民法と行政法に集中しすぎて憲法がおざなりになってしまいました。
おわりに
本記事では、行政書士試験で用いた教材の具体的活用法をお伝えしました。私自身、行政書士試験の後に司法試験も控えており、まだまだ目標までは道半ばです。それでも、行政書士試験に合格したこと、行政法を中心に条文の読み込みをがんばったことは今でも自分の心のよりどころとなっています。
予備試験・司法試験の学習は不安との闘いの連続ですが、1つの「合格」を手にすることは、不安を乗り越えるうえで大きな助けとなると思います。みなさまも、ぜひ行政書士試験に挑み、合格を手に入れてみてください。
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