“情報不足”のロースクール未修入試…それでも慶應に合格できた私の「ステートメント&小論文攻略法」
はじめに
ロー未修に関しては”情報が足りない”の一言に尽きると思います。ロー未修のための教材は少なく、再現答案をアップしているウェブサイトもあまり多くありません。
何を目標にして、どのような教材を使い、どのような勉強方法をすれば良いのかわからないですよね…
そこで、参考になるかはわかりませんが、私の経験とそれに基づく感想をお伝えしようと思います。
(ライター:Alice/The Law School Timesライター)
目次
自己紹介
まずは簡単な自己紹介から。
私は、元々法曹になりたかったわけでもなく、地頭が良いというわけでもありません。中学2年生の理科では35点を取ったこともありましたし、読書感想文は母がゴーストライターだったといっても過言ではありません。
しかし、”受験”を何度も経験し、大学の授業を通して”考える力”と”言語化する力”を身に着けました。
ステートメント
さて、ロースクール未修者試験は、それぞれのロースクールにより配分の違いはありますが、⑴ステートメントを主軸とする書類と⑵当日の小論文で合否が決まります。
まず、ステートメントとは、自己推薦書・志望理由書のことです。
書類審査の「書類」には、ステートメントのみならず英語のスコアや学業成績も含まれますが、ステートメントが大半の割合を占めていることでしょう。既修者入試でもステートメントは必須ですが、未修者入試ではその比重が重くなります。
私はステートメントのために予備校に通うことはなく、大学で弁護士の先生(慶應ロー卒)にみていただきました。書き始める前に書く内容や構成を熟考してから、本文は8時間で書き上げました。弁護士の先生からはこれで8/10点の合格点だと言われましたが、満足いかなかったので、ステートメントを磨いていきました。大学の教授やゼミの先生の意見も参考にして仕上げました。
ステートメントの重要性はいくら語っても想像がつかないと思いますので、慶應ローの問題を参考に考え方や書き方の思考をざっくり見ていきたいと思います。
(慶應ローのステートメントを完成させれば他のローのステートメントに転用することができるので、慶應ローを選択しました。)
ステートメントの書き方
★ステップ1
志望校の問題文を見て、何を問われているのかを確認します。
問題文から、①問題意識、②問題意識に基づく活動、③将来のビジョンが聞かれていることがわかります。
★ステップ2
①問題意識について、自分が興味関心をもつ社会問題を箇条書きであげてみてください。気になったニュースや新聞記事を思い出すのも効果的でしょう。
私の場合、幼児と母親が貧困の末、餓死するというニュースが取りざたされたことを契機として、「貧困」問題に関心を持ちました。そして、子どもの貧困や母子家庭の貧困など、貧困問題を解決する鍵は「教育」にあると考えました。
ぐるぐる考えるうちに、「人権」という言葉が頭に思い浮かびました。ひょんなことから法学部に入ることとなり、人権に対する問題意識が芽生えました。最終的に、ステートメントの①問題意識では、女性の人権や子どもの人権について書きました。
別に崇高な問題意識じゃなくてもいいんです。
ステートメントの書き始めとなる「タネ」があればいいんです。
重要なのは、その問題意識を表現力豊かに書くことです。全体の構成からはじまり、語彙の一つ一つ、文章と文章の関連性、段落の分け方という細部にまで気を配ることで、説得力のある文章に仕上がるでしょう。
★ステップ3
②問題意識に基づく活動を考えていきます。
学生生活を通して、自分がいままでどんなことをしてきたかを思い出しましょう。サークルやゼミの話を書くことができますね。また、社会人の方は、仕事を通して得た知見を書くことができます。
サークルもゼミも入らず、ひたすら大学の授業だけを受けてきた、という方も心配ご無用です。履修した授業の中から、頑張ったと思う授業やグループワークをした授業など思いだしてみましょう。
そして、取り組んできた学習・研究・活動から何を学んだのかまで考えましょう。
余談ですが、私は、大学ではレポート課題の授業を中心にとり、教養科目でも法律科目でもレポートには力をいれてきました。レポートを何本も書くうちに、ほぼすべての科目において行きつく結論は同じであることに気づきました。
人権問題を考える際に必要なことは、「自分の知らないところで人権侵害が繰り広げられていること、たとえこれまで奇跡的に豊かな生活を送ることができていたとしても、いつでも誰でも人権侵害の対象となる可能性があること、だからこそ、問題の構図の中に身を投じて自己を当事者化すること」にあると落ち着きました。留学先の授業でも実感したことです。
私の中での帰着点が一貫していたので、ローのステートメントでは過去に書いたレポートを振り返ってつなげる作業をすることで済みました。
レポートを真面目に取り組んでこなかった人や文章を書いてこなかった人は苦戦するかもしれませんが、踏ん張りどころです。ここでも重要なことは、一つのことをいかに大きく見せることができるかです。
何を書くのかが大事なことは言うまでもありませんが、中身がたいしたことなくても、書き方の工夫一つで説得力ある文章をつくることはできます。
★ステップ4
③将来のビジョンについてです。
法曹三者のうち何になりたいか決まっていない方もいると思います。
私も明確には決まっていません(笑)
私の場合、文章の筋から弁護士であることは明白ですが。
別に本心じゃなくてもいいですが、ステートメント全体の一貫性は欲しいですね。
★ステップ5
ステートメントを自己推薦書としているロー(例えば一橋)の場合、文字通り「自己を推薦する文書」で終わってかまいません。
志望理由書の場合、上記に加えて、なぜその学校が良いのかまで書く必要があります。その際、志望校の入試要項やパンフレットを参考にして、志望校がどのような理念をもち、どのような生徒を求めているのか調べ、自分はその理想像に合致する、ということまで書きましょう。
以上、ステートメントを書く上での思考回路を追っていきました。もちろん、私が絶対正解ではないので、自分に合うものを見つけてください。まずはどんなことを書きたいかぐるぐる考えましょう。よし!書きたい!と思ったときに書くとすらすら言葉がでてきて、「あつい」文章を書くことができます。
また、ステートメント全体の構成も気にしてください。法律の文章は形式的に整っていることが大事なので、ステートメントでも形式的なかっこよさは求められています。
ステートメント作成は文章を書くのが好きな人や書く情報量が多い人にとっては難しい作業ではないでしょう。他方、その他の人は苦しいと感じると思うので、早い段階から着手することをお勧めします。
小論文
次に、小論文についてです。
私の勉強方法はずばり…何もしていません!!!
というのも、私は既修者試験合格を目標にしており、未修者試験は最終手段として受験しました。そのため、未修者試験の対策はしていませんでした。そもそも対策方法もわかりませんでしたし。
調べてみたところ、吉岡友治著『法科大学院 小論文 発想と展開の技術』という参考書があり、受験会場でも持っている人は何人かいました。
そんなところで、各ローの小論文試験を振り返ります。
慶應ロー小論文の振り返り
慶應ローは1日目が既修者試験、2日目が未修者試験でした。1日目の既修者試験の後、慶應ロー未修の過去問を1年分だけ解き、未修者試験に挑みました。
慶應未修の問題文ですが、10頁を超えるほど長い文章なので、強弱をつけて読む必要があります。私が受けた2025年度の問題は、よくわからない哲学の話でした。思考が凝縮された理解に苦しむ哲学者たちの言葉を、2時間という短時間で理解することは、相当の哲学オタクでない限り不可能です。
私は文章の中身を理解することを諦め、文章を体系的に理解することに努めました。二項対立の図を書いて整理したのを覚えています。
早稲田ロー小論文の振り返り
早稲ローは既修者試験が2日にわたって行われます。2日目の既修者試験の後に未修者試験が待ち構えています。
早稲田に関しては過去問すら解いていきませんでした。早稲田の未修者試験の過去問の文章が著作権との関係で掲載されていないものがあったので、問題全体が見えないのなら解く意味はないと感じたからです。もちろん、どのような聞かれ方をするのかは確認しました。
私が受けた2025年度の問題ですが、慶應の時と同様、文章を掴むために図を書いて整理しながら読みました。
振り返ると、未修者試験は、「図を書いて考えて、形式的に整った文章を書く」という点で、法律科目試験と重なる部分があると思います。読み方・考え方・書き方、それぞれの要素が必要だということです。
私の場合、大学受験で文章の読み方を学び、大学の授業で考える力をつけ、大学の課題や法律科目試験の勉強において書き方を身に着けたと思っています。
いざ、勝負!
試験当日の持ち物と私の精神状態についてお伝えします。
持ち物リスト
試験当日は、朝ご飯を食べましたが食べ過ぎないようにしていました。また、コーヒーは飲むとトイレに行きたくなるので飲まないようにしていました。
慶應の試験当日、私の心は根拠のない自信に満ち溢れており、「未修だけは受かりたい。なんで受からないの?」くらいに思っていました(笑)お恥ずかしい…
早稲田の試験は、慶應未修の合格をいただいていたので、なんとかなるだろう精神でした。未修者試験が本命ではないからというのがあったのかもしれません。
さいごに
未修者試験は情報が不足していて暗闇のトンネルを歩いていると感じるかもしれませんが、合格者の数だけ必勝法という光があります。
私の記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。
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