見出し画像

ロー合格者のステートメント【早稲田ロー編】

本記事では、早稲田ロー合格者1名(既修者コース・普通合格)が実際に提出したステートメントを紹介し、書く際のポイントを解説していきます。早稲田ロー入試の受験を検討している方は、是非参考にしてください!
(ライター:棚橋/The Law School Timesディレクター)


ステートメント課題

あなたが法律を学んだ中でどのようなテーマや問題に関心を持ち、どのように学修・研究してきたかについて記述してください。そのうえで、あなたは、どのような理由で早稲田大学大学院法務研究科において学び、法曹をめざそうと決意したかについて述べてください。もし、法曹をめざすことを決意した要因が法律の学修・研究以外にもある場合には、それについても述べてください。


合格者ステートメント※

1 私が関心を持ったテーマ・問題は、医師の説明義務と債務不履行責任である(Ⅰ)。具体的には、医師と患者とのバランスをどう考えるかという点に関心をもった。そして、このテーマ・問題に関する事案として、乳癌の手術にあたり当時医療水準として未確立であった乳房温存療法について医師の知る範囲で説明すべき診療契約上の義務があるとされた事案(最判平成13・11・27民集55巻6号1154頁)についてゼミで学修・研究した(Ⅱ)
 私が所属するゼミの目的は、最高裁判決で確定した事案について、最高裁の判断を鵜呑みにせず再試行することで理論的妥当性や当事者にとってより良い解決策を思考することである。活動内容は、第4審という設定で対審式を行うことである。私は、当ゼミの目的を念頭に置き、上記事案の以下2点の争点について医師側の代理人という立場から検討した。
⑴ 1点目の争点は、医療水準として未確立の療法についての医師の説明義務の有無である。
 最高裁は、「〔➀〕未確立の療法…ではあっても…少なくとも、当該療法…が少なからぬ医療機関において実施されており、相当数の実施例があり、〔②〕これを実施した医師の間で積極的な評価もされているものについては、〔③〕患者が当該療法…の適応である可能性があり、かつ、〔④〕患者が当該療法…の自己への適応の有無、実施可能性について強い関心を有していることを医師が知った場合などにおいては」患者に対して当該療法を説明すべき義務を負うと判示した。
 しかし、私は、➀及び②の「少なからぬ機関」・「相当数の実施例」等の基準が不明確であり正確な実情と乖離するおそれがある点、③及び④は患者の信頼が判断の要となっている患者側に偏った要件であり常に医師の裁量より患者の希望が優先されることになりかねない点から妥当でないと考えた。そこで、患者の自己決定権と医師の裁量との調和を図り、㋐当該療法を取り扱う医師の間で有効性が認められ、当該医師・医療機関における安全性が認められる場合であって、㋑当該医師が当該療法の知見を有しており、かつ、㋒実施予定の療法が好適であるとする医師の判断を覆すような患者側の特段の事情がある場合に限り、説明義務が肯定されるべきであると結論付けた(Ⅲ)
 ⑵ 2点目の争点は、説明義務を負う場合における説明義務の範囲である。
最高裁は、「患者に対して医師の知っている範囲で、〔➀〕当該療法…の内容、〔②〕適応可能性や〔③〕それを受けた場合の利害得失、〔④〕当該療法…を実施している医療機関の名称や所在などを説明すべき義務がある」と判示した。
しかし、私は、②及び④を説明義務の範囲に含めることは、医師が当該療法を消極的に評価している場合においては実質的には正しくない療法を患者に説明・勧誘することと同視でき医師に自己矛盾を強いることになるという点、医師の意見を鵜呑みにする危険を有している患者を未確立の療法に誘導する危険性があり寧ろ誠実な診療にあたるべき臨床医としての注意義務に違反するといえるという点から妥当でないと考えた。そこで、説明義務の範囲は➀及び③に限定すべきであると結論付けた(Ⅳ)

2 次に、貴大学院法務研究科で学び、法曹を目指そうと決意した3点の要因について述べる(Ⅴ)
⑴ 1点目は、多くの著名な先生方がいらっしゃる点である。貴大学院法務研究科には、実際に司法試験考査委員をご経験されている先生方がおり、そのような先生方の講義を受けることができるのは大変貴重なことであるため、意欲的に受講し知識等を吸収することで、司法試験短期合格・上位合格のみならず、「挑戦する法曹」(Ⅵ)になることに資するのではないかと考える。
⑵ 2点目は、多様な学生が多く在籍する点である。私は、貴大学院法務研究科の説明会や在学中の先輩のお話を伺い(Ⅶ)、高齢者・社会人経験者など多様な学生が在籍する点が貴大学院法務研究科の特徴であると考える。これらの学生と学修に励むことによって多くの刺激に触れることができ、これは、法曹があらゆる人との関わり合いと相手に応じた臨機応変な対応を求められる職業である点に照らし、優秀な法曹になる上での基礎を築くことができると考える。
⑶ 3点目は、AA制度(Ⅷ)である。私は、この制度を活用することにより、司法試験合格に必要な答案の型を定めたり知識・答案の質を高めたりすることが可能になるのみならず、実務家教員・OBOGとの関わりにより、実務の現場をイメージしたり人脈を広げたりすることができるのではないかと考える。

3 最後に、私が法曹を目指すことを決意した法律の学修・研究以外の要因について述べる(Ⅸ)
 私は、幼少期に両親が離婚し、母との別居を強いられる物理的な負担、周囲から「母親がいない子」というレッテルを張られる精神的な負担を被った。とりわけ子どもは、離婚の意味や離婚による負担を理解し難く、離婚するか否かの決定において意見を述べる機会を与えられることも少ないため、子を持つ親が離婚するに際しては、周囲の大人が子の利益を考慮する必要があると考える。
 他方で、離婚事案における一方当事者の代理人という立場に立つと、相手方当事者との二項対立の思考に陥ってしまうことも考えられ、子の利益が無視されることもありうる。
 そこで、弁護士として、離婚問題における解決策の提案や依頼者への説得の際に、両親が離婚し多くの負担を被った経験を子どもへの配慮を意識した解決という点に活かし、貢献していきたいと考える。

以上


【コメント】

本ステートメントの特徴

(Ⅰ)の部分
問いに対して簡潔に答えられています。
(Ⅱ)の部分
関心を持ったテーマ・問題に対して、具体的な取り組みを示せています。
(Ⅲ)(Ⅳ)の部分
自身が学修・研究してきたことを詳細に示し、法的思考力をアピールできています。
(Ⅴ)の部分
適切に段落・ナンバリングを変更できています。
(Ⅵ)の部分
早稲田ローのホームページに書かれているキーワードをうまく文章に落とし込めており、早稲田ローに対する興味関心が伝わります。
(Ⅶ)の部分
自分の経験に基づいて志望理由が書けており、説得力があります。
(Ⅷ)の部分
早稲田ローの特徴的な制度に言及できています。
(Ⅸ)の部分
適切に段落・ナンバリングを変更できています。

全体的な感想

本ステートメントは結論ファーストが心掛けられており、また構成・ナンバリングも適切であるため、とても読みやすいです。本ステートメントのように、問いには簡潔に答えましょう

内容面では、まず「関心を持ったテーマ・問題」の部分において、判例の判断に対する自分の考えが分かりやすくまとめられています。大学時代に自分が勉強してきたことが具体的に表現できており、関心を持ったテーマに対して真摯に取り組んできたことが伝わると同時に、法科大学院生に必要とされる法的思考力を有していることを示せています

「どのような理由で早稲田大学大学院法務研究科において学び、法曹をめざそうと決意したか」を述べる部分においては、簡潔に早稲田ローの魅力が表現できています。「挑戦する法曹」や「AA制度」などホームページに載っているキーワードを活用できており、早稲田ローに対して興味・関心を有していることをアピールできています。このように、志望動機を書く際には他のローにも当てはまることではなく、そのローに固有のビジョン・制度について言及すると良いでしょう。その際には、ロースクールのホームページを参考にするのが手っ取り早いです。より時間がある人は、ロースクールの説明会に参加してみるのも手です。

ただ、課題文は「あなたが法律を学んだ中でどのようなテーマや問題に関心を持ち、どのように学修・研究してきたかについて記述してください。そのうえで、あなたは、どのような理由で早稲田大学大学院法務研究科において学び、法曹をめざそうと決意したかについて述べてください」と書かれています。そこで、「関心を持ったテーマと、それに対する取り組み」が「早稲田ローを志望する理由」の前提となっているような文章の組み立てができると、問いに答えきった完璧なステートメントになるでしょう。例えば、以下のような文章の流れが考えられます。
 
早稲田大学法務研究科のホームページでは「『挑戦する法曹』とは、常に社会の変化を敏感に感じ、複雑で多様化した現代社会のニーズに即応して、様々な課題に敢然と挑戦し、新たな時代を切り拓く法曹」と定義されています。ここで、この方は大学時代に「判例に対して批判的である」ことに取り組んできたのであり、それは既存の判断に逆らうこととなる点で新たな時代を切り拓くことに繋がります。そのような姿が、早稲田ローが育成しようとする「挑戦する法曹」の姿と重なるため、早稲田ローを志望した、という流れです。参考程度に。

総括として、本ステートメントは、1ページ以内に収めなければならない制限がある中でかなり完成度の高いステートメントだと思います!


まとめ

いかがだったでしょうか?
ステートメントは適切に問題文を理解できていれば、時間をかけた分だけ完成度を高めることができます。完成度の高いステートメントはロー入試における心強い味方になりますし、精神安定剤にもなります。
作成には苦労するかと思いますが、ぜひ本記事を参考に完成度の高いステートメントを執筆してみてください!


The Law School Timesは司法試験受験生・合格者が運営するメディアです。「法律家を目指す、すべての人のためのメディア」を目指して、2023年10月にβ版サイトを公開しました。サイトでは、司法試験・予備試験やロースクール、法律家のキャリアに関する記事を掲載しています!noteでは、編集部員が思ったこと、経験したことを発信していく予定です。


※太字及びギリシャ数字は筆者が加筆しています。一部個人情報を*印で加工しています。本記事の本文中では、noteの機能上、インデントが揃えられていませんが、実際のステートメントではインデントを揃えています。

いいなと思ったら応援しよう!