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劇的に介護しやすくなる認知症ケア 「ユマニチュード」の4つの柱を習得しよう

認知症ケアで特に難しい「尊厳を持った介護」を実践させる方法

認知機能が低下してきた高齢者のケアでは、高齢者と介護者の間の意思疎通が難しくなって関係がギスギスし、互いの精神的な疲労が溜まってしまったりすることが起こりえます。

物忘れがひどい高齢者に同じことを何度も言わなくてはならない、話しても分かってもらえなくて介護に抵抗されるなど、悩みが尽きないなか、疲れてしまった介護者は「どうせわかってもらえない」と介護中無口になったり、粗雑に高齢者を扱うようになってしまうこともあります。

「認知症高齢者にも尊厳を持った介護が必要」ということは理屈としてはよく分かるけれど、それを日々の介護の場面で具体的にどう実践していったらよいのかというのは、やはり悩ましいことなのです。

そこで注目したいのが認知症高齢者の尊厳を守りながらケアするための具体的な技法を教えてくれている「ユマニチュード」というケアの理論。

「人間らしく」とも訳せる名前のユマニチュードが提唱している技法は、ものの認識が難しくなっていく認知症高齢者に対して分かりやすく接することができ、介護者との信頼関係づくりにも非常に優れているとして多くの介護現場・医療現場で取り入れられています

ユマニチュードの全てをコラムでお伝えすることは難しいですが、是非そのコツを覚えて日々の介護に役立てていきましょう。

「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの柱

ユマニチュードが大切にしている介護技法は、「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの柱から成り立っています。そんなことは普段の介護でもやっているよと言いたくなる人もおられるかもしれませんが、ここはもう一度丁寧におさらいしてみましょう。

まずは「見る」ことから

まず「見る」では介護者は高齢者の目を見ることが大切になります。

その際、対等な関係を表すものとして上からではなく目線の高さを合わせること、そして高齢者の目線の正面から遠すぎない距離を作りながら相手の目を見て話しかけるというのが大切になります。

認知症高齢者は正面からでないと視界に介護者が入らないことがあり、そうすると自分のことと認識できないこともありますし、介護者がせっかく高齢者を見ていてもそれが「目」ではない場合、心が通うパワーは半減してしまいます。

ちょっと照れくさいかもしれませんが、介護者からすれば「見つめ合う」くらいの感覚で目と目を合わせることを意識して接してみてください。

「話す」ことで相手に心の準備をしてもらおう 

次は「話す」です。

介護されている方というのは介護者に対して「申し訳ない」とか「恥ずかしい」とか「この人だあれ?」などの不安の気持ちを持っていることが多くありますので、そうした気持ちを和ませるように意識しながら話しかけていきます。

オムツ交換をするときでも、いきなり「ズボンを下げます」ではなく、「今日は暖かいので着替えがしやすいですね」「今日もお元気そうで嬉しいですよ」など相手がホッとするような言葉を先に入れます。

「あなたの介助が出来てうれしい」ということが伝わるような話ができると尚グッドです。介助の最中も「今から体を拭きますね」「冷たくないですか?」「体を横にしますね」など、これから行う作業を言葉にして伝えていきます。

普段より少し低めの声を意識してゆっくりと、耳が遠い場合でも大きな声で話しかけるというよりは聞き取りやすい位置から優しく話しかけるというのを意識してみましょう。

こちらの肌のぬくもりを「触れる」を通じて相手に伝える

3番目は「触れる」です。

介護をするにあたって触れることは欠かせない動作になりますが、触れ方にもコツがあります。

例えば触れるときには指先だけでなく手のひら全体で包み込む(時にさする、そっと副える)ような意識で触れると、より相手に優しさが伝わります。

清拭では顔などの敏感なところは後回しにして手足を先にする、あるいは足なら足先から拭いていく等意識してみましょう。

相手の手を握る、肩に手をそっと置くといった直接介護には繋がらない触れ合いであっても、親近感や安心感を与えることができるように、触れるという行為は様々な深い役割を果たします。

触れるという行為は介護者から高齢者への大切なコミュニケーションの方法であるということです。

「立つ」ことは人としての尊厳を取り戻すことに繋がる

最後は「立つ」です。

人は立つことによって体の機能を維持させるだけでなく、人間的な活動をする源にもなっています。

寝たきりよりは座る方が視界は広がりますし、座っているより立っている方がさらに視界は広がります。

視界が広がると人は周囲の状況をより理解できるようになったり興味が沸くものが生まれたり、心の余裕が持てるようになります。

長距離を歩けなくても、トイレや食堂に移動するときなど、危ないからと初めから車椅子にするよりも介助で優しく触れ合いながら移動するように心がけてみましょう。
 

以上、改めて確認してみる「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの基本、いかがだったでしょうか。

既にやっているという方にとっても、より丁寧に心を込めてやることの大切さを認識していただければ嬉しいです。粗雑な介護で高齢者が抵抗したり嫌がったりした場合、介護にかかる手間はさらに増えることになりますし、心の通わない介護になってしまう危険を考えると、やはり基本をいかに大切にできるかということになるのでしょう。

慣れるまでは4つの柱が連動しないこともあるかもしれませんが、続けているうちにすぐにそれらはできるようになります。

認知症になって分からないことがたくさん増えても、人間としての尊厳を大切に介護されること、その具体的手法としてユマニチュードの理論を参考になさっていただければ幸いです。
 

 

 


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