初心者ムーブを愛せるか
また、男にやられていた。
何度痛い目にあっても、「また」やられるということはもはや趣味嗜好の域として諦めている。
ヨガ終わりの熱いシャワーで柔らかくなったからだをノースリーブのワンピースと素爪のサンダルにしまいこむ。
素爪は「すづめ」と読む。素爪のサンダル、すずめのサンダル…
去年愛していた、牛乳で割る冷製スープの素を探しに、行きつけと違うお店に行ったが今年は取り扱っていないようだった。
代わりに牛乳で割るココアの素を見つけてまんまと買ってきた。さっき飲み始めた。
先日、数年ぶりにタントラセックスについて調べた。ゴシップガールの最新作(リブート版)に「タントラセックスを極めた女」が出てきたからだ。
調べる中で、人は一人で男性性と女性性のエネルギーを持っている、という思想を見た。
シングルでいるときに最もバランスが取れていると感じるのは私がもともと持っている両性のエネルギー量に関係するのかもしれない。
今やりとりしている男の子は何もなくても連絡をくれるみたいだ。
何もないから興味もわかない。すでに会う約束をしているのだから、そのときまで待ってくれれば良いのに…ともやもやする。そのうち誤字や言葉選びのセンスが気になりだしてしまう。
性愛コラムに「女の子をその気にさせるには毎日連絡をした方が良い」みたいに書いてあるのかしら。単純接触効果かな?
彼のあずかり知らぬところにこんなふうに書きたくって気持ちを発散させるなんて趣味が悪いし、私自身も不順事故ばかり起こしている未熟者なくせに、何もないのに連絡をすることが性愛初心者ムーブに思えてならない。
宙船のメロディーに乗せて、自身に問いかける言葉がリフレインする。
性愛のやりとりをおっくうがるおまえに
初心者ムーブを愛せるか
タントラセックスを極めた女はただひとりの愛する男を見つけて結婚しようとしていた。
すずめのサンダルを履く私は、空を見上げて夏の雲を見た。
熱い風が頬をなでた。
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