ハドソン川の奇跡(アメリカ、映画、2016)

昨日夜家に帰ってから見始めたのだけど、眠くて寝落ちしてしまったので今日の朝見直し。おかげでとても爽やかな朝だった。


2009年1月15日にNYで実際に起こったアメリカの旅客機不時着水事故が題材。原題は、機長の愛称である『Sully』。

機長の体験ベースでストーリーが組み立てられている。


彼は5歳の時から操縦士を夢見た生粋の飛行機好き。歯科医師である父親の患者に民間機の操縦訓練士がおり、その方の飛行場にて操縦方法を習い16歳で小型機の飛行を始める。そこで初めて墜落事故の現場を目の当たりにした。その操縦士の無残な死に直面したことで、失敗は許されないことを体感する。それでも操縦士になる道を探すべく空軍士官学校に進学し空軍に入隊。戦闘機の操縦士として常に緊張と危険にさらされて飛行を重ねることで、精神を鍛え技能を伸ばした。技術を学びきり兵役を終えて民間機の操縦士にキャリアチェンジ。人々の安全を守る仕事を選んだ。充足感を持ちながらも操縦士の決断が生死を分けることを念頭に置き、自身に失敗を許さないためにこれまでの事故の調査やフライト時の事前準備に余念はなかった。

実際に未曾有の事態に直面した時に冷静に機転を利かせて人命を救うことができたのは、彼のそれまでの日々の実直な積み重ねがあったからだった。また事故が発生した土地や、その周囲の環境、フォローの早さ、同乗していた副機長や添乗員の尽力などの外発的要素も不可欠であった。自身が不運な中でも周りの幸いを失わなかった。それ故にともすれば最悪の事態を、人々が希望を感じることのできる奇跡の出来事にすることができた。

同じ現象に遭遇したとしても、置かれた環境やそこに至る軌跡の違いで感じ方や捉え方も変わる。彼はそれまでの歩みによって悪夢のような経験を自身の強みに変えた。必ずしも幸せをもたらすとは限らない注目も、それにより得た発言力を自身の仲間のために使うことで利用することを選んだ。

彼が自身の墓碑銘に刻みたい言葉は、「夫 父 操縦士」だという。

自分一人ではそう在ることのできない、彼の生きる世界での他者との関わりを表す言葉だと思う。生物的な繋がりを超えた誰かにとっての彼である。それは清々しく尊い。

彼は操縦者を全うし、後続の操縦者のために働いた。そして一番近くに築いた家族を、大切に想うことを忘れなかった。


始めは自分のためにしていたことが実を結び、それが仲間のために変わる。その働きが世界に希望をもたらした。いつも側には家族への愛がある。

美しい生き様に、前を向き生きる糧をいただいた。


奇跡は、暗闇の中で見える希望の光。

いつだって非難は簡単だ。愛を持つことと同じくらいに。

曇天が辛い。


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