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【音・映】BAUS '93 (CD+DVD)


2023.11.8、裸のラリーズの新たな音源が公式に発売されました。

かつて吉祥寺にあった映画館・ライブハウス『Kichijoji Baus Theater(吉祥寺バウスシアター)』、裸のラリーズはこちらで1993年2月13日にライブを開催しました。
今回のリリースは、その公演の中(実際の公演では全7曲)から4曲がピックアップされたようでCDになり、更にCD初回生産盤の特典として、この日撮影された映像を素材として、宇治晶さんによって作品化したムービーがDVDに収録されています。

アルバムジャケット
初回生産盤の封入物内訳(CD、DVD、ライナーノーツ、帯)

・CD収録曲

  1. 夜、暗殺者の夜

  2. 黒い悲しみのロマンセ otherwise Fallin' Love With

  3. 夜の収穫者たち_1993

  4. Darkness Returns

・メンバー構成
水谷孝 : ボーカル、リードギター
石井勝彦 : サイドギター
ドロンコ : ベース
サミー : ドラム

この4曲は公演の前半部分にあたり、後半に演奏された3曲(記憶は遠い〜Enter the  Mirror〜The Last One)は今回収録が見送られたようです。
今回も前作クラブチッタの公演ライブ音源の時と同様に、8チャンネルのデジタル・マルチトラックをマスターとし、更に会場内で録られたカセット音源や調整卓からのステレオアウトなども足され、久保田麻琴さんによるミキシング&マスタリングされたとのこと。

作品全体の所感

まず音質として過去のアンダーグラウンドで出回っていた音源とは比較にならないほど高音質になり、音の分離がとても良好になっています。
それは3〜4曲目のハードな爆音演奏の曲で特に顕著で、水谷さんのギタープレイの味わいを繊細に感じ取れるようになりました。
またボーカルもバックの演奏に埋もれることのなく、特に1〜2曲目において明瞭に水谷さんの詩を聞き取れます。

あとこれは余談ですが、チッタの音源のときに個人的に感じた「Disque 1は主に水谷さんの詩を感じる歌パート、Disque 2は水谷さんの爆音ギターを堪能できる轟音パート」という印象を抱いたのですが、今作も1〜2曲目は歌パート、3〜4曲目は轟音パート、というような流れを一枚にまとめたのではないかと推察しています。

CDの曲別所感

公演の開始を告げる『夜、暗殺者の夜』
ベースのドロンコさんのキャッチーなベースラインに水谷さんの歌が乗って、ノイジーにつんざつギタープレイ。

非常にメロディアスなサイドギターが印象的な『黒い悲しみのロマンセ』
サイドギター石井さんはご自身のバンドCHINA CATSをやられてますが、石井さんの強烈な個性であるとろけるようにメロディアスなギタープレイ、それが存分に発揮されている演奏。
それに触発されたのか水谷さんも熱く咆哮気味に「何もかもが 吹き荒れる風に 波に飲まれてしまわぬうちに」と響く。

一転、アップテンポ気味で激しく猛りだす『夜の収穫者たち_1993』
先にアンダーグラウンド音源の存在を書きましたが、この曲の演奏を聞いて気付いたのは、テープ速度が早くなっていること。そして水谷さんの歌声の様子からして、この公式でリリースされた速度が正しいということでしょう。
なので聞き慣れたUG音よりさらにキレが良くなり、激しさを増して感じます。
ヘビーなビートを叩き出すサミーさんのドラム。この4日後のチッタではドラムが野間さんで、そのプレイは正確できっちりロックのビートを刻む印象でしたが(そのミニマルなビートが美しい)、サミーさんのドラムは荒々しくビートを叩き出す。ある意味でハードロック的な激しさを感じさせてくれます。

マイナー調のメロディでダウナーサイケな『Darkness Returns』
メロディとしては『夢割草』と同じコード進行で、歌詞は『白い目覚め』や『紙切れ』など過去曲の複数の詩が混じり合います。
このCDの白眉はこの曲でしょう。特に後半の縦横無尽な爆音ギターの凄まじさには圧倒されます。全長で30分に迫る長尺演奏ですが、濃厚なギタープレイと癖になる沈み込むようなメロディに耽溺できます。

初回生産盤特典DVDの所感

こちらは非常に貴重です。
ラリーズの公式の映像作品は、1992年に発売されたVHS作品『LES RALLIZES DÉNUDÉS』のみしかなく、今作はそれに続くものであり、そして内容がとても素晴らしいです。
映像の元は実際のバウスでの演奏ムービーだそうで、それが残っていたこと自体がまず驚きですが、強烈なフラッシュライト焚かれる中で幻のように演奏をする水谷さん。目の眩むまばゆい光、なにもかも呑み込むような爆音のギター、そして象徴的な詩が響くという、アナーキーでシュールレアリスティックな世界が開いています。
とてつもなく強烈で、美しく、素晴らしいです。

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