パラニのお話
その一
ヒマラヤのカイラス山に住んでるシヴァとパールヴァティー夫妻に、ナラダ仙が天の果物を贈りました。
すると、二人の息子達、ガネーシャとスカンダが、果物を欲しがったので、シヴァパパは「世界を早く三周してきた方にやろう」
スカンダは孔雀に乗って飛び立ちました。
一方、ネズミに乗るガネーシャは、シヴァパパとパールヴァティーママの周りを三周し、「父母が世界の全てですから」
うまいこと言った、と、シヴァパパはガネーシャに果物をやりました。
一方、本当に世界三周してきたスカンダ(と孔雀)は、勝敗を聞いてショックを受け、家出してしまいました。
後に、シヴァパパとパールヴァティーママがあなたは神の果物なのに、なぜ他の果物が必要なのですか、と、慰めにきたので、家族は和解しました。
その2
カイラス山(ヒマラヤ)に神と山が集まりすぎたので、世界の平衡を案じたアガスティヤ仙は、アスラ族のイドゥンバンに、山を二つインドの南まで運ばせることにしました。
イドゥンバンは天秤棒で山二つ担いできて、パラニの地で一休み。
さてまた運ぶかと天秤棒を担いだところ、びくともしません。
よく見ると子供が山に乗って寝ています。
叱ろうとした所、運が悪いことに、それは家出中でご機嫌最悪の軍神スカンダ。
出会い頭にイドゥンバンは殺されてしまいました。
イドゥンバンの妻が泣くので、アガスティヤ仙がスカンダをとりなし、イドゥンバンはスカンダに仕えることになりました。
運んできた大きな山はスカンダの住まいになり、小さな山はイドゥンバンの住まいになりました。
これがパラニのお話。
兄弟競争の話は、賞品を「どっちがお兄ちゃんか」「ヒマラヤを相続するのはどっちだ」「嫁を勝ち取るのはどっちだ」と違うバージョンがありますが、全部スカンダの負け。
北でスカンダが忘れられていく理由であり、南で熱烈に愛される理由にもなります。
イドゥンバンのお話は、後にタイプーサムという画像検索注意の痛い痛い祭りに繋がります。
この舞台であるパラニに来たのでした。
この地ではスカンダ神はムルガン神なので、以降ムルガン神で書きます。
地球の歩き方インドにも南インドにも載ってなかったけど、マドゥライから鉄道で2時間。
のどかな寺町です。牛も羊(ヤギかも)も馬もゴミ漁ってるぜ。
夕べ食いっぱぐれましたがあまり辛くなかったので、もしかしてバテてる?と心配しましたが、朝食大変美味しかったので大丈夫です!ルームサービスでした。
さてお外に出ます。ホテルが目的のお寺がある山というか丘の麓なので、歩いてればつくかなー、とノープラン!
とりあえずついたなー、と、見てたら、ムルガンテンプル?裸足じゃないと駄目だよ、と、おじさんが。
預けるの?いくら?と、ついていくと、預け料はかからないよ、お供えはこれとこれとこれ(どさどさどさ)、ミルクも必要だよ、そしてこの人は私のママ。案内するよ。1250ルピー!
手早い。
でも、右も左も分からないのでママにくっついていきます。
頂上まで階段とケーブルカーがあり、ママはケーブルカーで、私はミルク持って階段で。
…はー、はー、はー、曇ってて太陽神スーリヤの恩恵がちょっと柔らかったので生き延びましたが、辛い。なんでケーブルカーにしなかったんだ私。でも山寺系の階段見るとそっち行っちゃうのです。駅の階段は回避しまくりますが、お寺の長すぎ階段は、昔からそこを登ってきた人の気持ちを体感したいのと、わざわざ階段の上に寺作ったのだからなんかあるのだろうと勘繰りたいのです。ただの階段好きです。
辛いけど他の参拝客が見えます。
男の子が、孔雀の羽根で飾った天秤棒を担いでます。
タイプーサムもですが、荷物を担いで参拝する苦行をこなすと罪が許される、と信じられています。
…私も水とカメラとスマホと財布、あと大量のミルクとお供え持って重いから、許されるでしょうか。
スキンヘッドにサンダルウッドのペースト塗った大人や子供がたくさん。
女の子も坊主になってます。
髪の毛を捧げるみたいです。
階段はみんな裸足。そして裸足前提の場所は常に清められています。
見えるかなー、階段の真ん中に点々と火がついてます。ほんの少しのくぼみにギー垂らして火をつけてるんですが、燃え尽きたり風で消えても誰かがまた灯していきます。係の人かもしれないけど、延々と火のお世話…(ムルガン様は火神の子でもあるので火は大事)
あとさり気なく足型が。仏教では仏足石と言って仏像以前にお釈迦様の足跡を信仰するというのがありましたが、似たようなものかただの印か!
途中、小さいお堂がいくつもあります。
だいたいガネーシャ。下のはリンガ。
…花に埋もれてるガネーシャはリンガと区別がつかないなー、ああそうかだからシヴァ家の長男なんだなあと駄目連想してました。
いい景色です。
バトゥ洞窟でも絶景でした。
…ああ、そうかあ。
世界の屋根ヒマラヤから事情があって南に来たムルガン神が寂しがらないように、遠いカイラスが見えるかもしれない、この辺じゃ一番高くて見晴らしのいい山に住んでもらったんだなあ。ヒマラヤと気候が違うけど、山の上なら風通しいいから、って。
つきました。
もう疲れてその場で泣きそうだったんですが、ママが待ってました。忘れてた。
写真撮ってたら、本殿は駄目だよ、って。
そのままついていくと、まずお供え半分くらい僧に渡します。
聖灰とギーが燃える皿に手をかざして、拝んで、聖灰いただきます。額に塗るの?喉も?赤いクムクムもつけます。私が下手すぎるからか、何度かママがつけてくれました。
回廊を右回りに回って、拝んで、お賽銭ってよんでいいのかな、お金を聖灰のお盆に乗せて。
え、そんなところ入るの?と思うようなところまで、ママは進んで行って、拝ませてくれます。
なんか途中でジャムを買えと言われたのですが、重いからやだ、と拒否。なんだったのかなー。
多分本殿に来て、重かったミルクを渡せと言われて、僧に渡したら、ご本尊にばしゃー!
そんな激しいお供えの仕方でいいんですか。
ママが、ミルク壺から私の手にミルクの残り垂らして飲めと。だ、大丈夫かなと飲んたら、次はお供えの中にあった液体を口に入れられました。
ひー、日本人ビビリで水もよう飲まないのに
何入れたの??
味はなかったですなになにあれ何ー!
うろたえましたが立ち直り、しっかり拝んできました。
バリで教わったのとお作法あんまり変わらない。どうも日本人手を合わせると頭下げてしまって様にならないのだけど。
一人旅でここまで来れた感動とか、マニアックなことしてるけど誰にも通じないなあとか、宗教体験とかも少しはあったけど、暑くて汗が目に染みて疲れてわけわかんなくて、少し泣きました。聖灰が目に染みてもっと泣きました。
はー、頑張ったよ、ママ、ありがとね、とお別れするのかと思ったら、ママが救護所に行きます。私元気だよー、と、行ったけど待ってろ、と。
しばらくしてママが戻ってきました。
次は食堂みたいなところ。ママがチャイを頼みます。私の分だけ。チャイくらいおごれるよ、と思ったのですが、受け皿で冷ましてた分をママが持っていきました。ふふふー、まあいいや。
インドの方はシェアするのは不浄として嫌がると聞いていたので意外でした。
チャイのあとはケーブルカーで降りるって。ママ、私もう少しここにいたいんだけど、と、言っても通じないし膝に来てたし、まあよかろう。
ママはケーブルカー乗り込むと、注射の跡見せて、腰をさすりました。…あ、そういうことか!
ママが救護所というか診療所行くから、ついでに私を参拝に連れてきた、あるいはガイドしながら診療所に寄る予定だったんだ!
了解!でも地元の信者さんが付き添わないと行けないところに行けたからママと一緒で良かったよ。
ケーブルカーで、前の席のアリシャちゃんと少しお話。降りてから一緒に写真を撮ろうって言ってくれました。
ママは写真嫌だって。
ケーブルカーは、行きも帰りも上向きオンリーなのであんまり景色は楽しめません。が、控えめに言うとレトロで角度がきついので、スリル満点です。参拝最後で縮み上がりました。
元の店に行って、一休み。
お供えの残りを整理します。
バナナの葉に包んだサンダルウッドペースト、聖灰、クムクム、バナナはもってけ、と。あと、紙に包んだ多分聖灰。小さいココナツがあったので、中身食べたいなとほじくっていたら、ママがコンクリに叩きつけて割ってくれました。一番効率いいね、それ。
店のおじさんたち。
小さい丘なので、一周ぐるっと回ってみました。
小さいお堂が各所にあり、麓にはシヴァ神やドゥルガー女神のお堂やお寺。ハヌマーンいるからヴィシュヌ系かと思ったらドゥルガー女神。それから孔雀。
孔雀はみんな山の方を向いてましたが、他は法則わかるほど見てませんでした。
お土産物屋や食堂、コーヒーショップ。
うろうろしてるから物売りがときどき来ますが、しつこくはない。
買い物する時に、先にハウマッチしてからだと、それ以上取らない。細いのなくてごめんねしたら、他の店で両替してきてくれました。いやほんとごめん。
Meals readyとあるお店に飛び込みました。
手は大瓶の水で洗ってバナナの葉に盛り付けてもらっていざ!うまい!!
ジャパニーズ、スプーン?と後で聞いてくれましたが大丈夫、もう半分手で食べた後だよ!
辛さは唐辛子ペーストらしいもので調節するらしく、優しい味のサンバルでした。
バナナの葉、たまにひっかくと爽やかな香りがするんだね。
ご飯食べられたので、コーヒーも。アイスバーも食べて満足じゃ。だがお土産物屋さんは別腹、キーホルダーくらいなら荷物にならないから!
最後に露店のお菓子を買いました。
ちょっとにしてっていったのに種類増やさないで!!
さー疲れたぞもう今日は引きこもる、と、よれよれ歩いてたら、もう一つの山のそばでした。頂上まで階段、人が登ってる…
門があったらやめようと思ったのですが、完全フリー。よしまだ歩ける、と、荷物背負い直します。
…誰だこんなところ登ろうって決めた奴、一人旅なんだから私だよ、ああそうかぁ、と、一人でぜーはーしながら登ります。人気は少ないけど、明かりを灯したあとがあります。
あと少しのところで若者達が休んでました。グループ交際かなー??
それはともかく、みんな裸足なので、靴脱いで最後の数歩。
いやったー、登ったー!!
頂上に小さめのお寺。
ご本尊はムルガン神。で、屋根には…天秤棒で山担いでる、イドゥンバンだ!
お寺を右回りに一周。下手だけど拝んでいたら、中の僧においでおいでされたので、おそばで拝んできました。
他に誰もいなくてゆっくりできるから、膝肘頭を床につける礼まで。(土下座とか三つ指ついてとか思うと、似てるけどびしっと決まらない)
…目に聖灰がしみただけだよ。泣いてないよ。
イドゥンバンの丘からパラニの丘はよく見えます。というか、パラニの丘を見るならこっちも登れです。
木に色々ぶら下がってるのが見えました。なんだろ。
そして麓に色々お堂。
…真ん中の石柱、何にも支えてないんですが、もしかして。
そして、リンガ林立の中にねんねとは大胆なわんこめ、と写真撮ってたら、と近くにいたおじさんが、違う違うと指差します。ぐるっと回り込むとー、ナーガとシヴァ神でした!
はー、今日は頑張ったー!
明日は移動日で余裕あったらお寺一つ行きたいな。