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日本の失われた40年は何を誤ったのか

いま中国で最も人気のある金融・財政の評論家の一人に、盧麟元氏がいます。
ここでは日本の「失われた40年」の原因を、①財閥資本主義の限界、②新植民地主義の影響、③思想的停滞という観点で語っています。
また中国はこの3〜5年間で半導体の技術的ブレークスルーを達成することで、台湾問題が解決に向かうだろうとしています。

2024年8月に公開された動画から、抄訳をお届けします。


失われた40年の原因

今日は日本について話します。
この40年間、日本はどこで誤ったのかという問題についてです。
この点をはっきりさせておかないと、中国も同じ過ちを繰り返す恐れがあります。

日本の失われた40年については、多くの人が誤解しています。
40年を失った原因は、人口問題ではないし、ましてや高齢化でもありません。
高齢化は、原因としては上位4番目以降です。

人々がマイナーな原因を取り上げるのは、上位の原因に触れたくないからなのかも知れません。
では、日本の失われた40年の本当の原因は何でしょうか?
その三つの原因について、より根本的なものから表面的なものという順番で話していきます。

原因① 財閥資本主義の限界

まず、第一の原因について。
それは日本が「財閥資本主義」であることです。
日本は現代資本主義の仮面をかぶった財閥資本主義の国家です。

これは韓国、台湾、シンガポールも同様で、もちろん香港も含まれますが
財閥資本主義体制には限界があります。

ここまで発展できたことが幸運と言える程です。
儒教文化圏の恩恵を受けているという好条件もあったでしょう。
これらの国は、儒教文化の影響で、優れた制度運営の前提条件が整っていました。

が、封建的な特徴を持つ財閥経済からは脱却できませんでした。

財閥とは何でしょうか?
それは「削藩均田」、つまり領民を生かさず殺さずということです。
「藩」とは金融から見た領土のことです。
これが財閥の行動原理なのです。

財閥資本主義は、必ず肥大化して問題を引き起こします。
それは財閥の原理では、道理や民意に合った最適な社会的分配が実現しないからです。
財閥は強欲であり、社会の富を搾取する存在です。
資本利得が労働所得を上回ることが常態化して、必要に応じて政府の利益にもダメージを与えます。
これが第一の原因です。この仕組みは必ず社会を歪めます。

原因② 新植民地主義による収奪

次に、第二の原因を話します。
現代社会において、日本、韓国、台湾、さらにはシンガポールや香港は、植民地的特性が強いです。
財閥は国内の利益を搾取し終えると、収奪の場を海外に移します。
これが新植民地主義につながります。
つまり、財閥が新植民地主義を助長するのです。
この流れは工場の生産ラインのようなものです。

したがって私は明確に言います。
財閥資本主義では未来を描けません。
新植民地主義の条件下では、財閥の存亡は新植民地主義の興亡に依存しています。
新植民地主義が衰退するとき、財閥資本主義は最初に犠牲として差し出されるということです。
文字通り「生け贄」として扱われてしまいます。
生け贄とは、牛や羊のような供物の首を切り落として捧げることです。

日本の具体例をあげましょう。
1970年代のアメリカは金本位制を放棄し、ベトナム戦争に敗北し、政治経済が極度の混乱に陥りました。
このとき、アメリカに国内問題を解決する余力は残っていませんでした。
外部の資源を収奪し、外的手段によって内的問題を解決する必要が生じました。
そこで、日本が標的となり、犠牲になったのです。

ここまでのお話で、2つの点が明確になりました。
第一に、財閥資本主義が日本の「失われた時代」の第一の原因ということ。
第二に、日本が新植民地主義に対抗する力を持たず、犠牲になったこと。

場合によっては、2024年の韓国のように、新植民地主義のために進んで自傷行為を行うという例も見られます。
ここまでお話しましたが、私は心が痛みます。
東アジアに間もなく混乱が訪れる可能性が高いと言わざるを得ないからです。

原因③ 自立した思想家の輩出不足

続いて、第三の原因です。
戦後の1945年から現在までの80年間、日本は明治維新の時代に匹敵するような偉大な思想家を生み出すことができませんでした。
中国には「教師」と仰がれる偉大な思想家が現れ、その指導のもと、多くの若い世代が生まれました。
年長者から若者に至るまで、彼らは自ら思考する力を持ち、国家を支えています。

しかし、日本はその点が弱いようです。
反骨精神を持っていた安倍晋三が出ましたが、殺されてしまいました。
このため、近年の東アジアを見ていると、不安を覚えることが多いのです。

東アジアの安定の重要性

ある親しい友人がこう言っていました。
これまでは、二つの「中」がドルを支えてきた。
一つは中国で、もう一つは中東ですが、それはもう過去の話になったと言うのです。

私は驚き、それでは次にドルを支えるのは何ですか?と尋ねました。
「それは隣国の80年代生まれの青年かも知れない」
と言うのです。その青年とは金正恩のことです。

北朝鮮の重要性

友人は次のように話していました。
「ミサイルがソウルに落ちればドル指数は110、東京湾に落ちれば120に上昇する」
「もし東京湾が攻撃されれば、円が180円台になる。
核兵器が使われるようなことがあれば、200円どころか想像をはるかに超える水準に達する」

こうした最悪のシナリオが考えられるので、日本は北朝鮮に控えめな態度をとって、友好と誠意を示しているのです。
日本はトラブルを避ける必要があります。
安倍晋三や黒田東彦は、日本の自立をめざしていました。
しかし、今の植田日銀総裁や岸田首相(当時)はどこまで実行できるでしょうか。
日本の政治家たちはジレンマを抱えており、兄貴分のアメリカに頼らざるを得ない状況にあります。

私は冷静な観察者として言わざるを得ません。
アメリカは朝鮮半島の38度線で問題が発生することを強く望んでいます。
ロシアやインドも同様です。
一方、ヨーロッパは38度線での混乱を望んでいません。
なぜなら、アメリカの関心が東アジアに向けられると、ヨーロッパ戦線の状況が悪化するからです。

私たちの中国には、冷静な思考家たちがいます。
われわれは、向こう3年以内に自国周辺で問題が起きることを望みません。
中国はいま、困難な構造転換の途中だからです。
この転換には痛みを伴います。
そして、経済面だけでなく他の分野も同様に多くの問題が立ちはだかっています。
多くは話しませんが、転換していく必要があります。

台湾情勢

私たち中国には、この転換を完了させるために「時間」が必要です。
一部の人々が、台湾の解放や南シナ海問題を議論していますが、情勢を見誤ってはなりません。

それはなぜでしょうか?
向こう3年から5年の間に、中国は半導体分野で技術的ブレークスルーを達成するでしょう。
そうすれば台湾問題は解決に向かいます。
台湾の守護神であるTSMCが、その時に台湾の弱点になるのです。
私の友人たちは皆、「台湾は10年以内に深刻な内乱に陥る」と予想しています。

南シナ海には何の問題も見当たりません。
私は時々、国内メディアが何を騒いでいるのか、分からなくなります。
本当に重要で深刻な問題を報じていないと感じます。

いま一番重要な問題は、十分な「時間」と「空間」を確保して、構造転換を完遂することです。
短ければ3年、長くても5年で構造転換を終えて、すべての問題が解決に向かうでしょう。
私はこれまでも繰り返し述べていますが、問題は外部にあるのではありません。

政治腐敗の問題

日本については、利権政治の問題があります。
1980年代初頭、軍国主義時代の青年将校によるクーデターを思わせるかのような「政変」が日本で起きました。
利権政治家(注:竹下登、中曽根康弘)が大蔵省から通貨発行権を奪い、プラザ合意を締結してしまったのです。
私はこの政治家の動きは、クーデターに近いと見ています。
このクーデターが、平成と2つの世代(団塊ジュニア世代からさとり世代)を葬り去ったのです。

私は普段から昔の新聞や資料を読み返して、この時期の歴史に着目してきました。
日本語の出版物を読もうと努力したほどです。
歴史は完全に繰り返すわけではありませんが、歴史には驚くべき類似性があります。

「利権政治」によって政策を歪めさせてはなりません。
この内部問題を解決しなければ、いくら外部の問題を解決してもプラスになりません。
逆に、内部問題さえ解決すれば、外部の問題はいとも簡単に片付くことでしょう。

隣国の北朝鮮については、中国が主体的に行動する必要があります。
現在、ヨーロッパや中東では戦争が続いており、東アジア、特に極東でも戦乱が起きる可能性が指摘されています。
私たちは事態の進展をコントロール下に置くために、あらゆる手を尽くす必要があります。

このように言うと、日本円の動向に関する質問をした人々は不満かも知れません。
満足して頂けなければ仕方がありません、今日はここまでとしましょう。

出典:卢麒元:接下来聊一下日本,过去40年他错在了哪


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