Azzaro Couture (1974/2008)

2013.12.11
Azzaro Couture (1974/2008)
カジュアルラインのフレグランスを数多く輩出しているクチュリエ、ロリス・アザロが1974年にメゾン初の香りとして発表し、長らく廃盤となっており、2008年秋にリニューアルしたアザロクチュールのオードパルファムです。ゲランをはじめとする大御所が次々に若年層へのアプローチに切り替えていく昨今で、あえて大人の女性をターゲットに絞り、アザロの香りの中でも突出した高級ラインとして、ニーマン・マーカス、バーグドルフ・グッドマンなどの高級小売店での限定発売となっています。リニューアルは、一連のロベール・ピゲものを束ねる復刻王、オーレリアン・ギシャールで、ご自身の調香としてはチャイナタウン(ボンド№9)、ラヴ・イン・パリ(ニナ・リッチ)など現代を代表する香りも多く輩出しています。

リニューアル版は、それこそ素肌にブラックのスーツをまとった女性のような、アルデヒドが効いた辛口のフローラル・シプレであるオリジナル版と比較して、瀟洒なイメージはそのままにアルデヒドを抜いた一方で、貴重な5つのアブソリュート(ミモザ、ローズドメ、アンブレットシード、ガルバナム、イリス)で高められ、よりきらめきが感じられる「1974年へのオマージュ」となっており、なるほどチャイナタウンと同じ作者のリニューアルといった解釈です。トップの香り立ちは華やかですが、香りもちはオリジナルと同じく、それほど長くありません。アザロとしては大人向けですが、LPT的にはお若い方向けの調香ですので、フルーティでキラッキラが似合ううちにお試しいただきたいと思います。

このアザロクチュール、オリジナル版も復刻版も日本ではわかばが倒産した際にデッドストックのパルファムが小1枚でおつりという驚愕価格で投げ売られたり(オリジナル版)、子供向けチンピラ香水しか扱っていないような激安香水通販店にて本国の1/3以下で(それでもそのショップとしては高い方)叩き売られたりと、何故か日本では粗末に扱われてしまう星のもとにあるようで、アザロというブランドの日本における立場を物語っており、オリジナル・復刻版ともに良い香りなのに残念です。

アザロクチュール(リニューアル版)
アザロクチュール(オリジナル版)

追記 2025.1.31
ファッションブランドとその香水ラインは、①アパレルの方が消滅しても香水がブランドとして残る ②アパレルは残って香水ブランドは消滅(ジャン・パトゥ、スキャパレリ、バレンシアガなど)③どちらも消滅 ④どちらも現存、の4パターンに分けた場合、アザロは④だったのが素直にビックリ。現在のアザロはヨーロッパではラバンヌ(旧パコラバンヌ)と同様、ICI Paris XLやPlanet Parfumといった街や駅ナカに展開する化粧品チェーン店で売っている大衆香水ブランドですが、70年代はそれこそファッショナブルで尖がった立ち位置にいたんだろうな、と思います。

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