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薬事担当者から見たAI医療機器の実情 (許認可申請先を決めるまで)

こんにちは、LPIXELのRAQA室の横田です。薬事・品質保証業務を担当しています。
以前COOの福田が「医療AIを上市するまで」にて、AIを用いた画像診断支援ソフトウェアを上市するまでに必要なことをお話しました。今回はその中でも「薬事」にスポットをあてたお話をします。

これから新たに本分野への参入を検討している医療機器メーカー様や製薬企業様にも具体的なイメージを持って頂けるよう、前職で経験した「薬事」(局所麻酔用のカテーテル・注射針等の材料系製品の薬事を担当していました)と比較して感じた違いもあわせてお話します。


良くも悪くも発展途上な規制化

現在の規制状況

AIを用いた画像診断支援ソフトウェアは薬機法上「プログラム医療機器」という分野に属します。プログラム医療機器はまだ歴史が浅い分野ですが、それでも平成26年の薬機法改正により医療機器の一分野として確立されてから約10年が経ち、既に多くの製品が上市されています。(図1)

図1:今までに承認・認証されたプログラム医療機器の数
(引用元:中央社会保険医療協議会 保険医療材料専門部会(第124回)○保険医療材料制度の見直しに関する検討(その3)についてより)

しかし、プログラム医療機器に対する規制状況はまだ発展途上の段階にあります。そのように感じる理由として基準化がなかなか進まない点があげられます。
現在、医療機器全体としては承認基準:44、認証基準:951、審査ガイドライン:10が制定されています*。前職で扱っていた製品分野でも、審査側との事前相談を実施せずとも基準で定められた試験・評価を実施すれば認可が取得できる状況にありました。

その中でプログラム医療機器に対しては、現在承認基準、審査ガイドラインは制定されておらず、実質的にプログラムに特化した内容にて制定されているのは2023年に制定された下記の3基準です*。
(*いずれも2024年2月時点)

  • 放射線治療計画プログラム認証基準

  • 呼吸装置治療支援プログラム認証基準

  • 創外固定器治療計画支援プログラム認証基準

これらに該当しないプログラム医療機器はすべて認証基準がないかというとそうではなく、MRI等の機械に対する認証基準(核医学装置ワークステーション用プログラム等基準)の中で、これらのプログラム部分にふれているものがあり、これらの基準への該当性を示して認証を取得するケースもあります。とはいえ、現時点でプログラム医療機器の特性を踏まえた上で制定された基準は非常に少ないとは言えます。

今後の見通し

ただ、上記の様な状況は新しく確立された分野であれば当然だと思います。また、PMDAからは2022年以降計5つの審査ポイントがPMDAより公開されていますし(図2)、業界活動でも現在PMDAが審査している製品群に認証基準を制定しようという動きもあり、基準化に向けた活動が進んでいることは確かです。

図2:公開されている審査ポイント
(引用元:医療機器プログラム(SaMD)の審査ポイント/PMDA

現在の発展途上の規制状況がどのくらいのスピードで整備されていくか不明ですが、逆に言うと現時点では企業側が主体的に評価系を構築・提案することが可能な状況にあることを意味しています。この様な状況下での規制当局との相談時は、ファウンダーの島原が「プログラム医療機器業界の変貌の舞台裏」にてお話しした「能動的に同意を得る姿勢」が非常に大切になると実感しています。

認可取得までの薬事プロセス

全体フロー

ここからは薬事の実務的な部分をお話します。当社における認可取得までの代表的な全体フローは図3のとおりです。流れとしては前職の時とあまり変わらないですし、プログラム医療機器であればAIの使用の有無関係なく同じようなフローで進むと思います。しかし、前職ではあまり悩むステップではなかったけれどプログラム医療機器の場合は慎重かつ丁寧に検討すべきステップがありますので、以下に説明します。

図3:プログラム医療機器の薬事プロセスの進め方例

類似品調査

新たな製品の上市を検討する際、薬事の最初のステップとして類似品調査を実施します。前職の製品分野では一般的名称で検索すればすぐに類似品にたどり着くことが出てきましたが、プログラム医療機器の特に画像診断支援分野においては一般的名称が細分化されていない部分が多くあり、同一一般的名称でも有する機能の種類は多岐にわたるため、類似品を網羅的にリストアップするためには時間を要します。
しかし、類似品の調査から得られた情報は後続の2つのステップで非常に有用であるため、時間をかけてでも範囲を広めに実施するべきだと考えています。

医療機器該当・非該当の検討

次は医療機器としての該当性を検討します。医療機器該当と判断する場合は所定の手続きを踏まないと上市できませんし、医療機器非該当と判断する場合は医療機器としての有効性を謳うことはできなくなり、その後の販売・プロモーションに大きな影響を与えることから、会社の戦略として非常に重要なステップです。
検討にあたってはプログラム医療機器の該当・非該当判断の相談の管轄である厚生労働省の医療機器プログラムwebページにて公開されているガイドライン、判断事例に加えて類似品の調査結果(他社類似品は医療機器として上市しているのか、非医療機器として上市しているのか)も加味して検討します。

相談先の検討

上市したい製品が医療機器に該当すると判断した場合は、次は申請に向けて相談する審査機関を検討します。
前職で扱う製品は前述の基準化も含めて既存の医療機器と比較することにより申請計画が立てやすく、審査機関への相談自体をスキップできることもありました。また相談する場合も相談内容や相談先について迷うことは少なかったと思います。
しかし、画像診断支援分野のプログラム医療機器においては、既存の医療機器で同一一般的名称のものがあっても承認で認可を取得している製品もあれば、認証で認可を取得している場合もありますし、承認・認証の審査範囲を明示するガイドライン等も発出されていないため、当社では図3に記載した通りに判断することが多いです。

審査機関との相談

認証機関は現時点で10社程ありますが相談フローは各社様々です。認証機関に目星をつけコンタクトすれば後は案内に従って相談するのみです。
PMDAへの相談の場合は利用目的に応じて相談枠が種々用意されています。最初にどの相談枠を利用するか悩むかもしれませんが、全般相談から始めることが推奨されています。(全般相談では次に受けるべき有料相談枠を相談することもできます)

実務上はここからが本番感もありますが、相談以降のステップは話はじめると長くなるため、今回は割愛させて頂きます。

さいごに

今回は薬事実務者の視点からお話させて頂きました。AI医療機器薬事への漠然としたイメージが少しでも具体化されましたら幸いです。

LPIXELはアルゴリズム開発~製品開発~薬事まで一貫して支援できる体制があります。また、製薬企業様との協業で創薬支援AIの開発も行っています。当社の事業にご興味がありましたらお気軽にご連絡ください。


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