令和6年診療報酬改定の内容について(診断支援ソフトウェア関連)
みなさんこんにちは。エルピクセル株式会社RA/QA室の大竹です。
RA/QA室では薬事・品質保証を担当しており、自社製品だけではなく、製薬会社・医療機器メーカー、アカデミア等との協業における薬事・品質保証の支援も行っております。
プログラム医療機器の保険適用については、よくご質問頂く部分になりますが、今回は令和6年3月5日付で告示されました、令和6年診療報酬改定の一部をご紹介したいと思います。
※本記事は2024年4月24日時点の情報を元に作成しています。
令和6年診療報酬改定概要
まず、令和6年診療報酬改定では医療人材確保の賃上げ、医療DX、イノベーションの推進等の様々な点が議論されて変更・新設などが行われております。
また、本改定からは医療DXの推進による、電子カルテやレセコンベンダの改定作業の負担が大きいことから、従前では2年に1度の4月1日に一斉施行されていた診療報酬改定が、薬価改定は「4月1日」、薬価以外の項目の改定は「6月1日」に分かれて施行されることとなりました。
今回の診療報酬改定では医療技術の新規導入や見直し、保険医療材料制度の見直しが行われています。その中でプログラム医療機器に関連した技術料、制度がますます注目されております。本記事では診断支援ソフトウェアに関連する以下の改定について説明していきたいと思います。
内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術において新設された病変検出支援プログラム加算
画像診断管理加算において変更・新設された画像診断管理加算3及び4
AI診断支援ソフトウェアに関連した診療報酬改定
内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術において新設された「病変検出支援プログラム加算」
大腸癌の前癌病変である腫瘍性ポリープを大腸内視鏡検査で早期に検出・切除することは大腸癌や致死的大腸癌の抑制に有効です。一方で、腫瘍性ポリープは形状、大きさ等の様々な要因から発見が難しい場合もあります。
弊社も含めて、複数の企業では大腸内視鏡検査中のポリープの検出を支援するために検査中の画像からポリープと疑われる領域を検出し、使用者に知らせるAIを開発し、臨床現場で使用されるようになっています。
従来、保険診療で行われる大腸内視鏡検査には技術料が付いていますが、プログラム医療機器については「A1(包括)」となっているため、ソフトウェアの使用料などコストについての加算がなく、いわゆる医療機関側の持ち出しとなっていることが課題となっています。
このような状況の中、今回の診療報酬において、大腸内視鏡検査中にポリープの検出・強調表示するプログラム医療機器を併用する場合、プログラム医療機器を併用した検査を行い診断されたポリープに対して内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術を実施した場合に保険点数が加算されることとなりました。
具体的には診療報酬項目:K721内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術において新たに下記注釈が追加されました。(図2赤字部分)
また、K721注3の算定を行う上では以下のような留意事項が示されています。
今回、「K721 注3の病変検出支援プログラム加算」が始まることで、内視鏡画像診断支援ソフトウェアの導入ネックの一つであったコスト面のハードルが下がるため、大腸内視鏡検査時のAI画像診断支援ソフトウェアに興味があった施設は導入しやすくなると考えられます。この診療報酬が認められた経緯として、検出支援ソフトウェアを併用することで腫瘍検出率(ADR)が向上し、結果的に前癌病変の早期切除ができるため大腸癌・致死的大腸癌数の削減が期待されております。そのため様々な施設が患者のリスク・ベネフィットを検討し、内視鏡画像診断支援ソフトウェアを導入していくのではないでしょうか。
また、本加算枠の対象となる製品は「特定診療報酬算定医療機器(A2)」の定義に合致している必要がありますが、その妥当性については各企業が申請した内容を元に、保険医療材料等専門組織で検討、通知されます。
本記事公開時点では当該加算枠に適用される製品は通知されていませんが、6月の施行にむけて順次通知されると思われます。
画像診断管理加算の変更・新設
画像診断管理加算は従来の1,2,3の3区分から4区分になります。
従前の2と3の間を取った形で画像診断管理加算3の内容が変更され、従前の画像診断管理加算3は4に移動しております。
この変更は地域の中核病院や大病院での画像診断の役割は一般病院と異なり、より専門性が求められるほか、夜間休日等の緊急対応等も必要になるという状況が関連しています。
従来の枠組みでは専門医を雇用することによるインセンティブが少ない等により、専門医の積極的な雇用に繋がらず、医師の過重労働につながることから新たに点数を創設し、適切に専門医を雇用することでインセンティブを与えるものとなっています。
また「新しい画像診断管理加算3」は新設された「画像診断管理加算4」と同様に「関係学会の定める指針に基づいて、人工知能関連技術が活用された画像診断補助ソフトウェアの適切な安全管理を行っていること。」が施設基準の一部となっております。これにより画像診断管理加算3の導入を検討されている施設ではAI技術を用いたソフトウェアが設置されることから、臨床現場においてAI技術がさらに普及していくことが予想されます。
最後に
今回は令和6年度診療報酬改定内容の一部についてご紹介しました。前回の改定に引き続き、本改定においてもAI技術を用いた診断支援ソフトウェアに関する内容が盛り込まれており、医療AI技術の社会実装に向けてさらなる追い風が感じられます。
また、令和6年度保険医療材料制度改革等における主な改革事項には、プログラム医療機器に対する評価の明確化なども盛り込まれており、次年度以降もさらなる広がりがみられることが期待されます。
弊社もプログラム医療機器を製造販売している企業の一つとして、診療報酬に関する制度を活用し、医療AI技術の社会実装に今後も積極的に取り組んで参ります。
プログラム医療機器の保険適用を行うにはどのような制度があるのか、どのようなプログラム医療機器が評価されるのか等、今後のプログラム医療機器に関する保険適用については、次の機会に紹介させて頂ければと思います。
エルピクセルではプログラム医療機器の開発支援やAIパートナープログラムも行っておりますので、お気軽にご相談いただけますと幸いです。
文:大竹 一嘉