私のこと、
私には、普通の人になりたいとうい切望がある。
小学生ころ、ある事をきっかけに周りの同級生たちと話さなくなり、私がコミュニケーションを取る相手はほぼ家族だけだった。
その家族とはそれより以前から、良好な関係とは言えず、私には愛された実感とういものが皆無だった。
中学に上がり一年が経とうとするタイミングで不登校になった。
友達ひとりいなく、通信高校を卒業して、進路を考えることもなく、
その時、なんとなく興味があった小劇場の世界で役者を志し始めた。
今思えば、家族というコミュニティ以外の場が欲しかったのだと思う。
もちろん芝居は面白かった。
ただあまりチャンスには恵まれなかった。
今まで、人との関わりを避けてきたためか、少し変わった言動や佇まいに興味を持って、役者として使ってくれる団体が二つあった。
それも、26歳の、私は役者をこのまま続ける迷い始める。
きっかけは人好きになったことだ。
役者をしながら、レンタルショップでアルバイトをしていた。
そのバイト仲間にいた19歳の男の子だった。
若い男の子特有の青臭く不貞腐れた雰囲気を纏っていて、でもどこか人の芯を見抜いているような感じのする人だった。
私は彼に好意を上手に示せなかった。けど、相手はなんとなく気づいていたように思う。
私は今まで、人と上手く付き合えなかった(男女交際の意味だけでなく)
そのため、仕事(バイト)も上手く続かないことが多かった。
馬鹿真面目に仕事してしまう私。
要領よくこなせる人に嫉妬したり、不真面目な人に苛立つことが多かった。
その男の子は、その様子を見抜いていて、ある時
休憩室で2人きりになったときに、はっきりと指摘してきた。
指摘されて泣きそうになる私に、
泣きたければ泣けばいい、と言ってきた。
突き放したような聞こえ方で、でも救いのような言葉に感じた。
私は何も返す言葉も出てこず、黙り込んでしまったままだった。
彼は少しづつ、レンタルショップのバイトに来なくなった。別のところでバイトを始めたらしい。
もう、数回会えるかわからない、そんな時期に、また二人っきりのとき、
俺に言いたいこと有るでしょ?
言ってください。
そう彼は私に問うてきた。
私は、好きだと言いたかった。
付き合ってほしいと、言いたかった。
でも、その言葉は出て来なかった。
喉の奥に分厚い壁を感じた。
喉か詰まって、その言葉たちを吐き出すことができなかった。
振られるのが怖い?
そんな恐怖は感じてなかったと思う。
ただ、声を付いて出て来ない、この言葉の正体が分からなかった。
その時、絶望的に取り崩せない壁の存在を自覚した。
壁。
私の喉を詰まらす壁。
幼い頃にも、同じ葛藤をした記憶がある。
英語を勉強したくて、通信教育のテキストを購読したいと思っていた。
けど、母に口を付いても言えなかった。
あの時の感じと同じだ。
言いたかった。
言って受け止めて欲しかった。
母は受け止める人、ではなく否定する人だった。
やっぱりやならきゃ良かった。
なんのために買ってあげたんだ。
そう、責められることは幾度もあった。
私は、そんな母が嫌いだった。
いいなと思ったら応援しよう!
