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人生と移動、そこにある感動


 みなさんは、「移動」が好きだろうか。おそらくは、移動時間とは退屈な、できるだけ短縮すべきものだと思う人が多いだろう。実際、僕は大学生なのだが、部屋探しをすると「キャンパスまで徒歩5分!」といった類の謳い文句を数多く目にすることになる。これは大多数の人が、通学時間は短いほど良いと考えている証拠だ。

 しかし、僕は「移動」に積極的な価値を認めているのである。適度な移動は人生を豊かにする、これが今回僕が言いたいことだ。

 自宅という私生活の場と学校や会社という社会生活の場、この両者があまりに近すぎると、オンオフを切り替えるタイミングがなくなる。もっと正直に言おう。家と学校との間に適度に距離があれば、どんなに退屈な一日でも学校/会社と自宅との移動だけである程度の気分転換や充実感、家に帰ってきたときの安心感を得ることができるのだ。

 さらに、移動中にもその日を「いい一日」にするチャンスがあふれている。たとえば、いつもは降りない駅で、今日は降りてみる。近場にも未知の場所はたくさんある。たとえば、音楽を聴く。電車やバスの車内ほど音楽を聴くのにいい場所はない。車窓をぼんやりと眺めながら音楽を5曲ぐらい聴いて、自宅の最寄りに到着。これが素晴らしいその日のエンディングになる。「なにもしない」のもいい。西日が差し込む電車のシートに腰を下ろすと、それだけで世界がドラマティックに見えてくる。

近鉄奈良線の車窓。こんな風景を通勤通学で眺められるなんて、奈良の人は幸せだ。https://twitter.com/yunyeungcha/status/1332952053648277505

 毎日忙しく充実した日々を送っている人もいる。そういう人は、時間の効率的な利用が必要なので移動は短いほうがいいだろう。しかし、毎日の生活が退屈だと感じがちな人にとっては、移動がほどよい生活のアクセントになるのである。

 移動の効果は、科学的にも証明されているらしい。米マイアミ大学准教授のヘラー氏は、「日々の身体的な位置の変動が人間のポジティブな感情の増加と関連することを発見した」そうだ。

 「移動」は、我々の人生を豊かにしてくれるに違いない。

 

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