「死刑にいたる病」鑑賞

やっとDVD鑑賞の環境が整った後の第1弾は比較的新しい日本映画に。この作品は前から気になってました。悪い映画では決してない。若い役者さん達の演技は自然で非常に良かった(僕みたいなシロート年寄り映画好きの常套句「今の若手の演技なんて見てらんねーよ」は今後慎むようにします笑)。エピソードの無理筋さから理解の困難な箇所が二箇所ほどありましたが、全体の流れが妨げられるようなものではありません。優れている一番の点は現代の日本社会における「素朴な許しの感情の欠如」とそれが生み出すヒリヒリとした無機物的空気の描き方だと思います。性格、環境、遺伝…

そういう美点を考慮しても、これは脚本にちょっと問題があるなという印象は残りました。何より大筋が終った後の全編の締めくくり方の安易な発想(僕にはそうとしか思えません)はなんとかならなかったでしょうか…家族や恋人、親しい隣人といった関係にある者に対してさえも犯罪者に対するような疑念を延々と心の内に秘めなくてはならない現代日本の絶望的な精神状況を描きたかったのは分かるんですが…こんな評価は少々辛すぎかもしれません。でもやはり人間心理の発露の仕方について、もう少しエピソードの自然さを脚本段階で練ればよかったと感じました。まあ「タクシードライバー」のような歴史的作品でさえエピソードの描き方に少々の不自然さはありますからね、仕方ないことかもしれません。

ともあれ、凶悪なサイコパスを扱った作品の中では見応えのあるものだというのは間違いありません。見者によってはかなり後味の悪さを感じてしまうでしょうけどね(笑) デハデハ

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