「インスタント沼」再鑑賞
基本的に好きなんですよね僕こういう映画。ですから今月の初めにツタヤさんに行って物色していてこれを見つけた時も即座に手が伸びました。
テレビのお笑い番組現場で売れっ子の監督さんが持ちネタを存分に活用して味のある役者さん達も総動員でキッチリと計算通りの効果を出したバカ映画の秀作です。登場人物には基本的に悪人はいませんがちゃんとした人もいません。それぞれクセの強くて楽しいダメ人間ばかり。しかも何故か「沼」が全ての中心にあるという設定。職場を解雇された女主人公の人生も泥沼なら、主人公の母親が意識不明におちいる理由も河童を探している最中に沼に落ちたから。主人公がまだ見ぬ父親を探すことになる発端も沼から引き上げられた旧式郵便ポストから発見された母親の書いた父親宛てのラブレターを主人公が読んだから。その父親というのがコレまた人生の沼に完全に嵌りきったインチキ男で…という具合に全てこれ「沼」の連鎖でストーリーが出来ています。そこに現れ来る人間関係の細部と起伏(の・ようなもの笑)を達者な出演者達が其々の持ち味で彩る。本当にお笑い番組の職人芸の見事さです。楽しいですよね…主人公が頼んだ出張買取り業者の3人組、村松利史・松重豊・森下能幸の各氏!主人公のやっている古物店で「古釘」を気に入って購入する客がなんと石井聰亙さん!
これが2009年における我が国の大衆の嗜好を完全に把握して撮られた作品なのは間違いありません。で僕にはどうしても後年に撮られた「さよなら、人類」との関連性が頭に浮かんできてしまうんですね。このスウェーデン映画を観た当時の僕も既に地方社会の真っ只中で人生の泥沼に完全に嵌まり込んだ身でしたからね(そしてその基本的条件は今も全く変わらぬままです)。両作の対比の中に経過した時間、変遷した時代の中での自分の意識の変化を僕は自分自身の外側から感じ取るわけですが。
何か機会がおありになったら是非もう一度味わっていただきたい作品です デハデハ