見出し画像

【創作】結婚式


「母さん、今まで育ててくれてありがとう。」

『えっ、急にどうしたの?』

「いや、明日は大事な日だし、ひとつの区切りかなと思って。」

『そんな急に改まって言われるとびっくりするわ。』

「本当に感謝してるんだよ?私が小さい時に父さんが病気で亡くなって、それから女手ひとつで育ててくれたじゃん。だから明日を機にそれも卒業して、自分の幸せのために…」

『ふふっ。あんたが私の子どもである限り、卒業なんてないわよ。まぁ、あの時はちゃんと子育てできるか、不安でいっぱいいっぱいだったけど、こうして大きくなったあんたを見てると…安心するわ。』

「周りの人にもたくさん支えてもらったしね…明日の式は、ここまで私を育ててくれた母さんと、それを支えてくれた人への感謝の気持ちもこもってるんだからね!」

『あんたなりの親孝行の日、なんでしょ?明日は。』

「そうです!今の私にできる最大限の親孝行が明日です!本当にありがとう!母さん!」

『はいはい、わかったわかった。それよりそろそろ寝ないと明日起きられないわよ?』

「それはお互い様!母さんこそ早く寝ないと化粧ノリ悪くなるよ。ただでさえ年なのに…」

『うるさい。それこそお互い様。その前に遅刻なんてしたら大恥だものね。それじゃあ寝ましょうか。』

「うん…おやすみ、母さん。」

『…おやすみなさい』



「おはよ~って、おむすびじゃん!やったね!いただきます!」

『おはよう。ちょっとでもお腹に入れとかないとダメでしょ?って、あんたよく食べれるわね。』

「えっ、なんで?母さん食べないの?」

『…なんか緊張しちゃって。あんまり喉を通らないのよ。』

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよー。今回は親族だけの式なんだし、会場もそんなに大きくないしさ。」

『さすが、現代っ子ね…場数は私の方が多いのに。』

「場数って(笑)まぁ、今回は立場が違うし、緊張するのもわかるけどさ。でも式の途中お腹鳴っちゃうよ?式まで時間あるから、お弁当箱につめて持って行く?」

『そうね。もう少し小さめにむすんで持って行くわ。』

「じゃあそれは私がするから、母さんは自分の用意してきなよ。そのまま旅行に行くんだし、忘れ物ないかもう一回確認してきたら?」

『そうね…ありがとう。じゃあ任せるわ。』

「はいはーい…よーし!最高のおむすびをむすんでやろうじゃないの!」



「母さん!タクシー来たよー!」

『はーい!今行くー!』


「忘れ物ない?何か足りないものとかあったら連絡してね。持ってくから。あとこれ、おむすび入れといたから。」

『ありがとう。あー、ほんとにドキドキする。』

「あははっ。大丈夫!私も用意したら、すぐ行くから。笑顔笑顔!」

『…本当にありがとうね…』

「いいのいいの!
…すみません。○○ホテルまで、お願いします……
それじゃあ、いってらっしゃい。」

『…いってきます。』



「…さーて!私も準備して、盛大にお祝いしてやりますかー!」




今日が母の二度目の結婚記念日になる








#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?