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バクちゃんは、大ピンチ!


 由奈ちゃんは、いつもバクちゃんと眠ります。

 バクちゃんは、ぬいぐるみです。
 由奈ちゃんが、お化けの夢をみて、眠ることがこわくなったとき、大好きなパパが買ってきてくれたのです。

 「由奈ちゃん。
 この子はね、バクという動物のぬいぐるみなんだよ」
 「バク?」
 「バクはね、こわい夢や、わるい夢を食べちゃうんだ。
 だから、この子と一緒に眠れば、もう、こわい夢をみることはないんだよ」
 「ほんとに?」
 「もちろん」
 (もちろん)
 由奈ちゃんには、パパの声だけではなく、バクちゃんの声も聞こえたような気がしました。

 バクちゃんは、少しお鼻が長くて、すましたように目を閉じています。
 由奈ちゃんは、その日から、バクちゃんと眠りました。
 夜に見たのは、たくさんのお友だちとお花畑であそぶ楽しい夢でした。

 朝になり、目をさました由奈ちゃんは、バクちゃんをギュッと抱きしめました。
 「ありがとう、バクちゃん」
 
 それから由奈ちゃんは、すっかりこわい夢をみなくなりました。

 「おやすみ、バクちゃん」
 由奈ちゃんは、バクちゃんと一緒に眠ります。
 「おはよう、バクちゃん」
 由奈ちゃんは、バクちゃんと一緒に目覚めます。

 ある夜、由奈ちゃんは、夢の中でバクちゃんと出会いました。
 夢の中のバクちゃんは、目をぱっちりと開けていました。
 大きくて、かわいい目です。
 でも、どこか困った目になっています。

 「どうしたの、バクちゃん?」
 しんぱいした由奈ちゃんが、たずねました。
 「あのね、由奈ちゃん。
 ぼく、こわい夢を食べすぎて、お腹がいっぱいになっちゃったんだ。
 くるしくて、はき出したいけど、そうすると、由奈ちゃんは、また、眠るのがこわくなっちゃうだろ」
 バクちゃんは、困った目で言います。

 「う~~ん、どうしよう」
 「う~~ん、どうしたらいいかな」
 二人は、いっしょうけんめい考えました。
 「そうだ!」
 由奈ちゃんは、よい方法を思いつきました。
 

 「ねえ、パパ。
 今日は、バクちゃんを貸してあげる」
 眠る時間になったとき、由奈ちゃんは、パパにバクちゃんを渡しました。
 「どうしたの?
 バクちゃんと一緒じゃないと、眠れないんじゃなかったの?」
 パパは、ふしぎそうな顔で、バクちゃんを受け取りました。
 「いいの。
 でも、今晩だけだよ」

 次の日の夜。
 由奈ちゃんは、パパから、バクちゃんを返してもらいました。
 そして、また、いつものように、バクちゃんと眠ったのです。

 夢の中に出てきたバクちゃんは、とても元気そうでした。
 「大丈夫、バクちゃん?」
 「うん。こわい夢は、全部、はき出してきたからね」
 バクちゃんは、すました笑顔で答えます。

 バクちゃんは、いつも由奈ちゃんと眠ります。
 そして、時々、パパと眠ります。

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