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2024 J3 第28節 大宮アルディージャvsギラヴァンツ北九州 レビュー

せっかく見に行ったので、大宮‐北九州のレビューをかいてみようと思います。
実は開幕直後から、このカードは見に行こうと決めていた次第です。
何せ岡山に在籍していた選手が大宮に3人(当時、中野誠也が移籍したため今は2人)、北九州には4人在籍しています。大宮の監督も長澤徹元監督ということで、大変気になっていたカードでした。

この試合のスタメンです。
下口は負傷のアナウンスもあり欠場、濱田も欠場となってしまいました。大宮に元岡山の選手がいない…。

一方で北九州は杉山・永井の2人がスタメン。永井は7月のJ3月間MVPに輝くなど、今シーズンは好調を維持しています。
またベンチには喜山が久々のベンチ入り。この試合で途中出場し、元気な姿を見ることができました。

試合

大宮は3421、北九州は4231でスタート。このシステムは両者最後まで変わらず。
前半を見た両チームの印象を以下にまとめます。

大宮の攻撃

横幅を4人で守る北九州に対し、横幅を5人で攻略できる大宮。サイドからの攻めで優位に立つことができました。

具体的にはWBがボールを持った際に、北九州SBが寄せに行くプレーを見せていたため、サイドの裏のスペースが空き、そこにCFオリオラ・サンデーやボランチのどちらかが走り込んで崩そうというプレーを見せていました。

ターゲットマンというわけではありませんが、要所でオリオラ・サンデーがサイドに抜けたりカウンターの起点になるプレーが目立っていました。スピードがすごく、倒れないので北九州は相当手を焼いていました。後列の選手たちも彼の特徴を理解してか、ハイボールを蹴るのではなく彼のスピードを活かしたボールを入れていた印象です。

北九州の守備

前出の通りSBがWBへ出ていくため、守備対応が非常に難しかったです。ただCBのスライドや長いボールであればSBがスライドするなど、サイドの裏を突こうというプレーに対する対処はある程度できていた印象です。

また序盤大宮が3バックでボールを保持する際、1トップ永井+トップ下矢田でまずはボランチを消す構えを見せていました。前半途中からはSHの選手も交え、3バックに3人をぶつける形でプレスに出るようになっていきます。

大宮の守備

5-4のブロックをとにかく敷く、人数をかけて守る姿勢を見せていました。北九州はこの5-4のブロックに相当手を焼かされていました。
北九州ボランチの展開に対し、大宮ボランチが前へ出る形で対応していました。戻りが遅かったシーンもありましたが、奪ったあとの展開も含め、アルトゥールシルバの守備が目立っていた印象です。

北九州のサイドからの攻めに対し、WBが前へ出て対応する約束事があったように見えました。そのうえで、WBが出た裏のスペースのカバーリング意識が非常に高い印象です。

前線からは守備にいこうという意欲は感じました。ただ前半は連動したハイプレス、というわけではなく、奪い切る守備ではなく容易に展開させないための守備のようにも見えました。

北九州の攻撃

時折永井をターゲットにしつつも、基本的には最終ラインから意欲的にボールを保持し、ボランチを経由し矢田もしくはおりてきた永井を起点に攻めることができていました。
ただし前出の通り大宮のブロックの前に前進できず、最終ライン+ボランチのパス回しで外を回らさせられることも多々ありました。

ただブロックを崩すことにも意欲的だったように思います。ベースは最終ライン保持からSBへ展開、大宮WBが前へ出たところの後ろのスペースを突く形。大宮ボランチがセカンドボールの奪取や北九州ボランチの展開阻害のため、前へ出ることも多く、矢田や永井は大宮ボランチの後ろのスペースで受けて起点になることができていました。

例えば33分、北九州が自陣深くでビルドアップするシーン。
左サイドで組み立ててから、GKまで戻し、低い位置におりた井澤に対し石川が詰めあわやボール奪取、というシーンでしたが、大宮は北九州左サイド〜中央にプレスをかける構えだったため、右サイドが空いています。井澤は杉山へボールを戻し、杉山は落ち着いて右SB山脇へボールをつなぎます。
このシーンで大宮の左WB泉が山脇へ対応するため、前へ出ていきます。ここで右SH岡野が右サイドに開き、前へ出た泉の裏のスペースで山脇からパスを受けるポジショニングができていました。
同時に大宮ボランチ小島・アルトゥールシルバが前へ出て北九州の選手への対応を行っていたため、ボランチと最終ラインの間に大きなスペースができることになります。そのスペースにCF永井が降りてきてパスを引き出す動きもできていました。山脇は最終的に永井を選択。ロングフィードが通り、永井のドリブルで(最終的にファウルを取られましたが)前進することに成功します。
このシーンで、大宮左WB泉の裏を取る岡野のプレーに対しては、左CB浦上もカバーリングしていたことも追記しておきます。

北九州がWBの裏のスペース、ボランチの後ろのスペースを狙っていたことの両方を伝えるため大宮の選手たちを引き出そうとしたシーンを紹介しましたが、大宮が守備ブロックを形成する中でも北九州SBが大宮WBを引き出し、その裏をとるプレー(ボールが通らなかったものの12分、15分、49分)もあれば、ボランチの後ろのスペースでボールを受けるプレー(24分、43分)もありました。

その中で、大宮が先制点を奪います。

北九州のCK、大宮のクリアを山脇がトラップミス。ボールを奪取した泉からオリオラ・サンデーへスルーパス。抜け出したオリオラ・サンデーがシュートを放ち、一度はGK田中がセーブしますが、こぼれ球を泉が冷静に流し込みました。

特筆すべきはオリオラ・サンデーがCKの守備に関わっていない(厳密にはエリア外で待っていた高吉を見ていた)ことです。オリオラ・サンデーの身長は180cmあり、通常であれば高さのある相手選手の守備につけるほうが守備面で安定するような気がしますが、もっとも強力なカウンターの人員として計算していたようでした。
「一発で崩すという美学もある」と試合後の長澤監督のコメントで触れていましたが、まさにその美学が表現されたように思います。

後半、大宮はより前線が前へプレスに出るようになった印象です。前半北九州の組み立てから、ボランチを経由したチャンスメイクを多くされていたことから対策を試みたのだと思っています。
また時間経過とともにボランチの守備がゆるくなったように見えました。北九州としてはボランチの横を使えるようになり、サイドをより高くあげられるようになりました。
このあたりは和田を投入してからは改善された(使われなくなった)印象です。

北九州の攻撃の作りのところで、左サイドで作って直接、もしくは最終ラインを経由してサイドチェンジを行い、そこから山脇を高い位置に取らせてのクロス、というシーンが多かった印象もあります。印象的なのは山脇のフォローによってくる選手がいなかったことでしょうか。負けていることもあってか山脇の突破を前提にクロスに入り込む形をとるようになったのだと推察します。

後半は北九州がかなり押し込んでいました。
その中でも得点を奪うことはできず、逆に85分に大宮が追加点を奪います。

直前までかなり長い間北九州のボールが続いていた印象です。その中で北九州GK田中のロングボールが競ることができないようなボールとなり、市原がカットしサイドに流れた大澤が持ち運んで得たCKからの市原の得点でした。

この試合の市原は凄まじかったです。この年でキャプテンマークを巻いて目立ったミスなくCBとしてプレーできるだけでもすごいですが、空中戦では強さを見せ、ボール奪取を連発し、得点まで奪ってしまうという獅子奮迅のプレーぶりでした。

勢いに乗った大宮は91分にも追加点を決め、ゲームを決定づけました。

カウンターからファビアン・ゴンザレスが倒されたところ、右サイドから飛び出した関口がフリーでボールを受け、持ち運んでゴールを決めました。

アシストしたファビアン・ゴンザレスは81分、ゴールを決めた関口は74分の投入、パワーやスピードのある選手を終盤に投入できる大宮の選手層の厚さが際立つシーンでもありました。ファビアン・ゴンザレスのパワーはJ3では反則級ですね…。最初に対応したのは杉山でしたがオリオラ・サンデーとは点を取られながらもフィジカル面ではある程度やりあえていた印象です。その選手をフィジカルを生かして反転して持ち運ぶ、というのは衝撃的なシーンでした。


試合終了

その他思ったことを

・北九州の右SB坂本が脳震盪による交代。それによる大宮の追加交代もありました。印象的だったのが、只今の交代は脳震盪による交代、それによる追加での交代ある旨のアナウンスがあったこと。岡山でも大分戦でこのケースの交代が発生しましたが、特にアナウンスはなく。選手の交代人数にも影響しますので、アナウンスがあったほうが試合を見るうえでは助かるな、と思った次第です。しかしまさか適用ミスがあったとは全く気づかず…反省です。

・北九州では矢田旭の動きの質が印象的でした。ボランチの後ろ、WBの後ろに顔を出しボールを引き出すプレーで北九州は前半ボールを握ることができた印象です。

・試合前に両チームからのリスペクト宣言(差別・暴力根絶宣言)がありました。原稿を読み上げる形になるのですが、大宮の石川主将が宣言中に時折目線を上げて読み上げていたのが印象的でした。原稿があっても相手に伝わるよう、目線を上げて話せるというのは細かいところですが大事な要素だな、と感じています。

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