2024 J2 第38節 ファジアーノ岡山vs鹿児島ユナイテッドFC レビュー
リーグ最終戦、鹿児島に行ってきました。
アウェイ戦はこれで4戦連続で雨がぱらついているんですけどお天道様もう少しなんとかなりませんでしたかね…。
岡山も中断前はかなり雨に祟られました。今年は全国的に土日によく雨が降る年だったなとしみじみ感じます。
シーズン4位、POのホーム開催もかかった中で挑んだこの試合、結果は0-0。
シーズン5位が確定し、PO初戦で山形に乗り込むことになります。
山形雨降らないですよね?12月の山形の雨は洒落にならないんですが…。
1.スタメン
岡山3-4-2-1、鹿児島4-2-3-1のシステム。
岡山は左CB鈴木喜丈が柳育崇に変更。ここのところ途中交代が続いていたので大丈夫かと思っていましたが、やはりかなり無理をしていたみたいで。
今はPOで元気な姿が見れるのを祈るばかりです。
ここまでの起用を見ていても柳育崇の先発は順当かなという印象です。また鹿児島は前線の動き出しに合わせたロングボールを多用していたので、そのあたりも加味しての起用なのかもしれませんね。
鹿児島は4人がスタメン変更。先発の木村祐志はこれが引退試合となりました。
岡本、渡邉、稲葉、そして木村祐志。代わって先発した4選手が大活躍し、岡山は苦戦を強いられることとなります。
ベンチにも契約満了があらかじめ発表されていた選手が入っており、鹿児島での最後の勇姿を見せようと思いの強い選手たちがスタンバイしていました。
2.試合
鹿児島は守備時にかなりハイプレスをかけてきました。
ボールを持ったDFに対しFWがかなり前から追い、相手ボランチに対してはWボランチが積極的に前へ出てボールホルダーに制限をかけ、SHも前へ前へと出ていきました。
一方で左SH圓道を除く中盤の選手たちは奪えなかったときの即時回収の意識が乏しく、奪いきれなかった場合に戻りが甘く守備陣形も間延びし、容易にアタッキングサードまで前進を許していました。
そう、前節は。
もしかすると対徳島だからこそパスワークを制限するためにハイプレスを選択していたのかもしれません。いずれにしても今節はそのハイプレスを一旦封印。Wボランチも入れ替え、4-4-2でしっかり構えて局面を見て前からプレスに出る、という形に変更してきました。対岡山、そして今季の最終戦を意識し、絶対に勝利を掴み取るという意思を個人的には感じていました。
鹿児島の守り方としては4-4-2で構える形がベース、時折SHも前へ出て岡山3バックでのボール保持に前線3枚をぶつけるような局面もありましたが、基本的には2トップで3バックのパス回しを牽制していました。基本的に守備ブロックの位置は低くないですが、押し込まれるとかなり低くなる(29分、31分)傾向にあったように思います。
木村祐志・稲葉のWボランチがボール奪取で効いていて、岡山は中盤でのボール保持、ないしはセカンドボールを拾っての前進が難しかったです。この点、岡山は前線に人数がかかっていた分中盤でフォローできる人数が少なく、拾った後の展開まで持ち込めなかったのが要因と考えています。
この試合、特に一美・木村太哉・岩渕の3人が前線に張り、そこに対してロングボールが送られることが今までにないほど多かったです。場合によっては両WBも最前線に張り、3-2-5のような陣形を見せることもあったほどです。
ただこの場合、中盤にボールが転がった際に対応できる選手がボランチの2人だけになってしまいます。鹿児島もWボランチ、かつSHがしきりに内に絞っていたため、中盤のボールの奪い合いでは数的不利な状況でもあり、そのままボールを奪われる、もしくは拾っても後ろに下げざるを得ないというシーンが目立ちました。
あえて前線に張っていたのは守備ブロック間のスペースを作るために、鹿児島の最終ラインを押し下げたかったからかもしれません。徳島のようにボランチのプレスを引き出せればいいですが、岡山の場合残念ながらそれができるほどのポゼッション能力がなく、ボランチを引き出せないなら最終ラインを押し下げてスペースを作ればいい、と考えたのではないでしょうか。
またこの試合鹿児島のWボランチが入れ替わっていたこともあり、これまでの鹿児島の試合と比べて守備ブロック間でのスペースを作りづらいかもしれない、ということを考慮したかもしれません。
ブロック間で受けたい意図はロングボールを送りたいのと同じぐらい感じました。一美や岩渕がよく降りて受けようとしていました。それは岩渕のプレーエリアが中央に広がっていたり、一美のプレーエリアが低い位置になっていることからも明らかです。
前線の動きとしては前に張る、ボランチの後ろに降りてくるだけでなく、木村太哉が斜めの動きでDFラインの裏をとる動きを繰り返していました。そこへのパスがよく出て、木村太哉がシュートを放つ決定機を作れていました。
40分の決定機はまさにその形が出ていました。
裏を取る動きを見せることで相手を押し下げつつ、前線の選手(特に一美・岩渕)がボランチの後ろの作り出したスペースに降りてパスを受ける。そこからサイドに散らしたり木村太哉の斜めの動きに合わせてスルーパスを送り込むなど、攻撃面では一定の成果は出ていたように思います。
8分のシーンを図にしています。岡山最終ライン保持から田上のフィード。稲葉の頭をかすめますが、前に張った前線の選手のうち一美がボランチ後ろのエリアに降り、木村太哉と岩渕は裏抜けの動きを見せていました。
ただいかんせん前線に張りすぎだと思いました。常に誰かがボランチの後ろのスペースに降りる動きを見せていれば相手DFも誰についていいかわからず混乱を引き起こすことができたと思います。実際には3人とも前へ張り付いていることも多く、ライン設定が整った状態、3対3の局面でロングボールが送り込まれ、鹿児島としてはイージーに跳ね返してセカンドボール回収を中盤に任せられるような状況を岡山側から作ってしまっていました。
一方の鹿児島も前線の動き出しに合わせたロングボール、もしくはターゲットにしたボールを多用していました。結果双方ロングボールを蹴り合うような展開になり、セカンドボールの拾いあいが発生。岡山からするとボール奪取に長けた鹿児島ボランチ木村祐志・稲葉を相手に、奪った後の横や前へのパスコースがない状況を作ってしまい、鹿児島ボランチにボール奪取を許す、もしくはキープしても後ろへ下げざるを得ない展開が続くわけです。
鹿児島の攻撃はロングカウンターが主体で、主にSH圓道と田中渉が持ち運んでいました。特に田中渉からはロングパスでDFラインの裏を抜け出させようというボールが36分、39分、45分とあったでしょうか。彼らのパスを受ける動き、そこから技術の高い持ち運び、パス、クロスに岡山守備陣は再三悩まさせられました。
ロングボールはカウンターに移行できない場合に使われることが多かった印象です。こと鹿児島最終ラインからのロングボールについては岡山はよく回収できていたように思います。前線からのプレス、一美はボランチへのパスの選択肢を消す動き、2シャドーは2CBに寄せる動きを見せ、ハイプレスではないものの鹿児島最終ラインに制限をかけさせることには成功していました。
また鹿児島の攻撃時はSBが絞ってSHが大外に開くこともあれば、逆にSHが絞ってSBが高く出ていくこともあり、岡山WBがマークしづらいよう柔軟に動いていた印象で。特に田中渉が絞った際に末吉がそのまま内に入ってマークにつくこともあり、その場合SB渡邉がフリーでボールを持つことができ、そこからFWへ配球しチャンスを作り出していました。
ロングボールや渡邉の配球のターゲットになっていたのは有田稜。危ないプレーが18分(16分でした失礼しました)にはありましたが、田上が有田稜に対しては冷静に対処できていたように思います。田上に関してはクロス対応もこの試合は光っていました。
岡山は鹿児島のブロックに対して大外を使った攻撃を主としていたように思います。左WB末吉をよく使い、そこからクロスでファーサイドに本山を飛び込ませる形も作っていました(4分、28分)。
しかし末吉の突破はSB渡邉やボランチ稲葉におおよそ止められてしまいました。このあたりは、これまで鈴木喜丈が担ってきた左CBからの攻撃参加、フォローがなかったことが大きかったと思います。柳育崇もよく高い位置を取ってパスを出してはいましたが、裏へ抜け出す動きを見せて末吉をフリーにすること、末吉がスピードにのった状態でパスを送り込むこと、などについては物足りなさを感じました。
後半、岡山の攻め方に大きな変化はなかったように思います。岡山は前線に張る形を継続しました。ただ前半多かった左サイドからの攻めではなく、右サイドを中心とした攻めに変えた印象を持っています。46分、48分と右サイドで本山がボールを持ちチャンスメイクします。
56分、58分にはこれまでの岡山らしい敵陣の入り方を見せます。左サイドで作って右サイドに散らし、阿部からサイドへ抜け出す木村太哉へのフィード、という形。サイドを攻略したい意図を感じます。
また後半の岡山はポケットをとる動きが増えた印象を持っています。動きの中心になっていたのは田部井。ボランチからの攻撃参加で攻撃に厚みを加えようと試みます。
一方の鹿児島は、回数としては少なかったですがボール保持時にボランチがサイドに流れ、SHを前線に押し出す形が印象的でした。61分に途中出場の中原が左サイドに開いたり、直後には稲葉が右サイドに張ったりしていました。このシーンでは田中渉がボランチの位置に、渡邉が絞ったSHのような位置を取り、稲葉を大外に張り出させ、フリーでボールを引き出すことに成功しています。
一方で鹿児島はロングボールを多用する攻め方を継続。起点になれる有田稜を中心に圧力をかけ続けます。
岡山は61分にルカオを神谷とともに投入。投入後は右サイドに流れ起点になるいつものプレーを見せていました。
71分には太田・竹内を投入。システムを3-1-4-2に変更し、打開を図ります。
意図としては起点になれる選手を増やしたいこと、そしてプレスを2CBにかけていきたいこと、の2つがあったように思います。
起点になる点においては太田・ルカオとも機能していました。彼らのキープやポスト、サイドに流れる動きで岡山は前進することができました。もっともルカオに対しては最後をやらせまいと岡本が立ちはだかったのですが。岡本のルカオをものともしない対人守備の強さには手を焼かされました。
一方の守備、というより太田の動きの関係性は改善の余地がありそうです。プレスがルカオと連動しないこともあれば、攻めに意欲的なあまり田上とプレーが被って効果的でないなど、これまでもできていたサイドに流れる、収めるプレー以外は何だか空回りしているようなプレーに終止していました。このあたりが改善されるとPOでも脅威になれる選手だと思うのですが。
78分の高木の投入後は前線で起点を作って左サイドへ展開するプレーを増やしました。そこからのクロスという形でルカオが合わせたり(83分)、CKを得たり(85分)。
ただそれでもゴールネットを揺らすことはできず、スコアレスドローに終わりました。
3.結びに
山形-千葉の途中経過をみる限り、試合終盤の時点でこの試合に勝たないと4位になれないのは明白でした。それでも柳育崇をあげたパワープレーを試みたり、CKでブローダーセンをあげたりしなかったということは、山形-千葉の途中経過の情報を監督・スタッフも仕入れてなかったとみて間違いなさそうです。
それだけこの試合に勝てばよく、だからこそ失点は許されない、と考えていたのでしょう。それだけこの試合に賭けていた、というのは十分伝わりました。
あまりにも痛い引き分けだと感じています。
次の試合は勝たないといけません。
引き分けの選択肢があるよりも勝利しかないと割り切った戦い方ができたほうが有利だろう、と言えるほど次の試合は甘くないです。
この試合こそ絶対に勝つと望んで戦った、その結果が引き分けなのですから。
3週間空くPO、勢いのようなものはリセットされ戦う究極の一発勝負です。
勝負を分けるのはこれまで積み上げてきたものと、3週間で練りに練った対策、そしてスタジアムの空気です。
スタジアムの空気が試合を左右するのは2年前私達が痛感したことです。先制点を奪われジャッジに苛立ち試合に集中できず、失点を重ねて最後の最後でチームがバラバラになっていく感覚を今でも思い出せます。
これまで起こったことを変えることはできないし、私達が戦術的な何かをチームに伝えることもできないです。
それでもスタジアムの中の空気感は、私達が作ることができるでしょう。
たとえアウェイの地でも、選手の一歩を動かすことができるなら。
思いを重ね、トモニタタカウ日が近づいています。
どんな敵がここへ来ようとも 恐れるな俺達がいるぜ
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