2024 J2 第33節 ファジアーノ岡山vsVファーレン長崎 レビュー

注目の3位‐4位の直接対決、何とか勝利を収め、3位フィニッシュに望みをつなぐことができました。
結果は1-0でしたが、内容としてはスコア以上に完勝といってもいいぐらいのゲームだったように思います。
立ち上がりから相手コートに入っていく、奪われても奪い返していくことができ、それを90分間タフに続けることができた試合になりました。
そのうえで、セットプレーからだけにとどまりましたが、チャンスを作り得点を奪い、勝利する、理想的な試合をシーズンの終盤でようやくできたことは今後の大きな自信になると思います。

1.スタメン

岡山は2人スタメン変更。田部井が竹内に、嵯峨が本山に変わりました。
田部井がベンチにもいないことには不安を覚えましたが、竹内‐藤田のボランチコンビは今年何度も戦い、チームを救ってきた組み合わせ。その点では安心して見ていました。
本山の起用については、長崎のスピードあるサイドの攻撃に対応するためだと思いました。
実際、試合前の木山監督のインタビューでも
「右サイドしっかり守備で強くまずやってほしい、その上で彼の持ち味である力強さを生かして前へ出ていくプレーが何回か出てくれば」
とコメントも有り、まずは守備面を安定させる、その上で前へ出ていくプレーが期待されていたのだと思います。

長崎はCFに変更あり。出場停止だったフアンマが先発となりました。

2.試合

試合序盤から、岡山が優位にゲームを進めます。4バックの長崎に対し、WBが前へ出ることでより広く横幅を取れる岡山がサイドチェンジを主体に攻勢を強めます。

前出のスタメンのフォーメーションの通り、長崎は「攻撃時は」4-3-3のシステムで戦っていました。
一方で守備時は、IHのマテウスが前へ出てCFのフアンマとの2トップで最終ラインを牽制し、もう一方のIH安倍は下がることで4-4のブロックを敷く、4-4-2の形を取っていました。キープ力、推進力と強烈な個をもつ2トップを前線に残しながら、バランスの取れたシステムでカウンターを狙えるという点では理想的な形です。

ただ一方で岡山のシステムは3バック、最終ラインに牽制をかけるには前線2枚では十分ではありませんでした。
このあたりは、時折守備時にSHの役割を担う澤田やマルコスが前へ出ることで、岡山の3バックに対して前線を3枚にすることで牽制をする構えは見せていました。

長崎の守備のウィークポイントになっていたのは、この2トップが前線からの守備に対して熱心ではなかったことです。
カウンターで仕留める余力を残そうとした、とも捉えられますが岡山の最終ラインの力であれば緩い前線からの守備であればパスを通す、あるいは交わして持ち運ぶ、ということが容易にできます。
序盤、岡山は何度か阿部が前線からの守備を交わして持ち上がり、そこから縦パスを差し込んだり逆サイドへサイドチェンジをしたり、といった攻めができました。

前線からの守備がさほど期待できないためか、長崎の守備陣形は全体をコンパクトにするというよりも、しっかりと4-4のブロックを低い位置に設定し、中央をやらせず守ることに注力していました。前線にはキープ力のある選手がいるためそこからロングボールを送って押し上げてもよし、技術のある最終ラインやアンカーの秋野で保持をして陣形を押し上げてもよし、そういう意味では一旦守れさえすれば攻撃面は何とでもなるチームに長崎は見えました。

ただ4-4の守備ブロック自体は各選手の人につこうという意思が強いためか、中盤と最終ラインの距離が開きがちであったり、あるいはブロックが崩れたり、というシーンが見られました。また攻撃時(ボール保持時)は4-3-3の陣形を敷く関係で、被カウンター時はアンカーの秋野の横のスペースがどうしても空いてしまい、岡山はこうしたブロック間のスペースを前線の選手たち使い、起点になった攻撃がよくできていました。

長崎の守備で光っていたのはボールロスト後の回収の早さでした。岡山がボール奪取後つなごうとした際に、特に技術の長けた中盤の選手たちが即座に強く寄せることでボールロストを誘発し、自分たちのボールにするシーンが何度もありました。前線からの守備に課題がある反面、22試合無敗でリーグ戦を走り、上位に位置するのはこのあたりの即時回収の守備の強さにあるのだろう、と見ていて感じました。

岡山の攻撃面においては、この試合は特に両ワイドをよく使えていた印象です。自分たちがボールを繋げなかった際に回収に素早く移れていたこと、それによりボールを奪えていたこと、そしてそこから長崎のアンカー秋野の脇を起点にサイドへ展開した攻めを多く見せれていました。
また長崎がブロックを敷いたあとも、長崎の陣形をサイドに寄せてからサイドチェンジのボールを出して大外を使う、というシーンを作ることができていました。

サイドに散らしてからはWBに長崎のSBを食いつかせてから前線の選手がSBの裏に走り込んで深い位置に侵入していくことができていました。そしてそこからのクロスでチャンスを作る、跳ね返されてもセカンドボールを拾う、あるいは長崎ボールを奪い返しての2次攻撃、というシーンを数多く作れました。

目立っていたのはCFルカオでしょうか。長崎の攻撃時、SBが高い位置に上がる傾向にあり、ボールを奪った後ルカオがサイドに流れてロングボールを受けようという動きが前半目立っていました。
また押し込めていたことで深い位置のスローインを得られる機会が多く、その際エリア内のルカオに入れて起点になるプレーが多く見られました。

長崎の攻撃面では、前半戦のこのカードで見せたように、アンカーの秋野がボールを持てるとチャンスを匂わせるようなシーンを作り出していたように思います。

ただ前回対戦時の反省か、あるいは長崎の前節群馬戦を見ての対応か、秋野へのパスコースを消す、および秋野からの展開を阻止する動きをルカオが見せていました。同時にヴァウド・田中の2CBに対しては岩渕・早川がプレスに出る、もしくはいつでもプレスをかけられる間合いをキープすることで、縦の展開を止めることができました。岡山の前線3人の守備により、長崎は2CB+アンカーからの展開をほとんど行うことができませんでした。

岡山の前線からの守備を回避するため、長崎はGKからの配球、そしてSBを経由した組み立てを見せていきます。こうしたプレーに対し、長崎のSBに対しては多少遅れても岡山WBの本山・末吉が寄せにいったことで自由にプレーさせなかったのと、GKに対してもルカオが可能な範囲で秋野へのパスコースを消しながら寄せにいったことで、GKやSBからの組み立ても制限することができていました。
17分手前には長崎の浮き球のバックパスに対し、ルカオが秋野への縦パスのコースを消しながらGKに詰めたことで、右SB青木へのパスが乱れ岩渕がカットするシーンを作り出します。ルカオは直前の16分にも、GKからの展開に対し秋野へのパスコースを消しながらプレスに出て、ロングボールの精度を落とすことに成功していました。

このようにプレスが完璧にハマっていた、とはいえ何度か前進は許しました。その場合長崎はWBが前へ出たことで空いたスペースにWGのマルコス・澤田が流れてボールを引き出そうとしていたのと、IHのマテウス・安倍がパスを引き出し起点になるプレーを見せていました。こうしたプレーに対し、岡山は阿部・鈴木喜丈が前へ出る、横にカバーに出るといった対応をとり、それ以上の前進は許さないような振る舞いはできていました。

一度前進を許した場合、岡山は撤退し5-4のブロックを敷くことに専念します。相手にスペースを与えないことで、長崎の攻勢を削ぐことに成功していました。

長崎も対抗策として、秋野が最終ラインに降りての組み立ても見せるようになります。ルカオも常に秋野へのパスコースを完璧に消せていたわけではなく、秋野がボールを持てた際にはサイドへ展開しチャンスメイクします。30分頃からこうした形で秋野を起点にした攻撃を長崎は見せ、岡山が攻勢を強める中、攻勢を押し返すようになります。

また前出のGKからのパスカットの成功体験があったからか、ルカオが秋野をケアする役割よりも前へ出てプレスをかけ、かえってパスコースを開けるようなシーンもありました。43分にはCBヴァウドに対しルカオがプレスにいったがため、秋野への対応をボランチの竹内がせざるを得なくなり、長崎GKからIH安倍へ直接パスを通され、簡単に前進を許すようなシーンを作られます。

後半に入ってからは、そうしたプレスの乱れのようなシーンはほとんどなったように見えました。このあたりはハーフタイムに守備に対する修正が入ったのかもしれません。
変わった点としては岡山は長崎の最終ラインの裏を簡単に狙うようになったようにも見えました。前半あったルカオがサイドに流れるプレーがなくなり、もっと直線的に最終ラインの裏を狙い、それに対してロングボールが出てくるようになります。

一方の長崎は最終ラインでの組み立ての際にIHがよりサイドに寄って組み立てに関わろうとしているように見えました。その代わりにWGが前へ張り、岡山のCBに難しい対処を求めさせるようにしていたような印象を持っています。
また63分にフアンマに代わりジョップが入ったことで、前線での起点になるプレーが増えた印象を持っています。

それでも、岡山が主導権を握って試合を進めます。71分すぎからしばらくのあいだ、岡山が長崎陣内に押し込み、セットプレーで圧力をかけ、そのセカンドボールを回収し続け攻撃を続けました。

6分近く押し込んだ末、77分に待望の得点が生まれました。


この時間帯、何度もあったセットプレーで試合を動かしました。セットプレーからはなかなか得点できなさそうな、そんな流れもあった中でゾーンの泣き所になるニアの最内のところで鈴木喜丈がすらし、中央でルカオが叩き込みました。ルカオのボールに対する予測が見事でした。前回の山口戦のヘディングシュートに驚いたくらい、ルカオはヘッドは苦手そうな印象を持っているのですが、ストライカーらしいゴールに対する嗅覚と、それを頭で合わせる感覚が研ぎ澄まされてきたような印象を受けました。

この後守りに入ったためか、長崎の攻勢を受ける形になりますが、最終盤でも何とか前へ出ようとする姿勢を見せ、最後のゴール前での混戦も、PA前からのFKも凌ぎ、何とか勝利をもぎ取りました。

3.結びに

長崎に関しては前線からの守備に熱心ではない、と今回記しましたが、時折見せた前線の守備の鋭さからすると、もしPOで戦った際にはきっちり前線から追ってくることも考えられなくはないです。
カウンターに対して余力を残しているようには見えましたが、もし同点でも良いシチュエーションになった場合には前線からしっかりと追い回す、ということは十分考えられます。
もしくはそのシチュエーションであれば、フアンマ・マテウスのどちらかはジョーカーとして扱い、別の守備面で期待できる選手を先発させてくるかもしれません。

そう考えると、長崎より下の順位で終えたくない、という思いが強くなります。幸いこの試合に勝ったことで勝ち点5差まで縮めることができました。勝ち点差を逆転可能なラインが残り試合=勝ち点差、と言われていることを考えると、残り5試合で長崎を追い抜くことは不可能ではありません。
この勢いでなんとかして2試合分の勝ち点差、ひっくり返してほしいと思っています。

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