
ただ笑っていてくれるだけで。
2019年の初夏に知り合った男の子がいた。
背が高くて、細身で色白で、とてもきれいな子だった。
甘いものを美味しそうに食べる子で、カフェでお茶して恋愛観やちょっとエッチな事を語り合うだけの健全な感じで会っていた。
ふんわりと儚げに笑う、優しい子。
一度ひとり暮らしの彼の家に行く約束をして
向かっていたら、仕事帰りに遠くから電車に乗ってくる私を気遣ってくれたのか
〝甘いもの食べたくなっちゃったからやっぱり新宿駅で待ち合わせしよう“
って途中でLINEくれたんだけっけ。
そんな優しさもありつつ、今時の若い子だから
いつも突然LINEしてきて会いたいと言う彼に、
また他の子にもするように怒って
連絡先消しちゃったんだっけ。
その後も時々連絡をくれたけど
彼とはそれ以来会っていない。
今思うとなんでそんな事で怒ったりしちゃったんだろと思うんだ。
そんな彼は
大好きなこうくんに
顔も雰囲気もすごく似ていたから
だからよく思い出していた。
彼と一緒に行った新宿のカフェ。
つい最近も2人で座った同じ席に通されて
元気にしてるかな、、と思いながら
窓の外の写真を撮ったばかりだった。
3日前のこと、信じられないような偶然が重なって、彼が病気で亡くなっていた事を知った。
もう半年以上も前のことだ。
急にそんな事実を突きつけられ
驚き過ぎて手の震えが止まらなかった。
今でも信じられない。
私は彼の下の名前しか知らなかったし
アプリで知り合っただけの関係で
しかもずっと会っていなかった。
だけど当時、彼は私に何度も連絡をくれた。
たしかに一緒に過ごした時間があった。
あれからずっと彼のことを考えている。
初めて会った日の事、
あの日は雨が降っていて、でも夕方には止んで
傘を持ったまま新宿の街を歩いた。
帰りは手を繋いで駅まで歩いて、
山手線のホームまで送ってくれて
電車が走り出すまで笑って手を振ってくれたんだ。
私は他のどの子もそうしてくるように
また突然LINEが来ると思っていた。
ねぇ、ほんとにもう会えないの?
嘘でしょ?
私は3日経って、
やっと泣くことが出来た。
泣き出したら今度は逆に涙が簡単には止まらない。
それでもやっぱり彼のことを考えてしまう。
私は、彼と全然深い関係なんかじゃない。
だけどちゃんと知ることが出来た事で思ったの。
出会い方がどんなであれ、
関係性がどうであれ
私にとっては、
亡くなった彼も、他の男の子達も大切な存在なんだと。
ただセックスして終わりなんて
そんな簡単じゃない。
こんな風に、いなくなってしまったら悲しくて寂しくて涙が止まらない、
出来るだけ辛い思いや悲しい気持ちになる事なく
ずっと元気で笑っていて欲しい。
みんな幸せでいて欲しいの。
一緒の時間を過ごした人が
大切な人達が
ただただ元気で笑っていてくれる。
これ以上幸せなことなんて本当はないんだと思う。
私は人生で少しだけ時間が交わった彼の事を
ずっと忘れない。
またいつか、
いつかきっと会おうね。