泣いて泣いて、泣いて。

4年くらい前、初めて会った日。

彼の地元の駅で待ち合わせ。


目の前の彼は白いニットに黒のパンツ、

私も白いニットに黒のタイトスカート。

想像していたより若くて子供みたいに見えて少し驚いた。


途中、彼の同級生に会ってしまい

彼は手を挙げてその女の子に挨拶した。


時間を潰すために入ったルノアールで

彼は空になったアイスコーヒーのグラスを倒して慌てていた。

向きあって座っていた私は隣に座って
彼の白いニットに少しかかったコーヒーのシミが出来ないようにおしぼりを手に取った。

あの頃から香水は、今愛用しているものだったかは覚えていない。

だけど、隣に座った私を盗み見している彼の視線は感じていた。


音楽が好きだと言った彼は、そのまま隣に座っている私にイヤフォンを片方渡して、この曲が好きだと言った。

騒がしいその音楽を、正直素敵だとは思えなかったけど、なんとか話題を見つけようとしてる彼が可愛くて、いいねと言った記憶がある。


髪の毛がぐちゃぐちゃになるぐらい、何度も抱き潰されるようにセックスをしたその帰り道。


駅まで送ってくれた彼は

“ちゅーは?“

と言って改札で私をじっと見ている。


そんなサービスするところは、あの時も今も変わっていない。


ずいぶん昔の事なのに、こんなにも鮮明に覚えている事が、恥ずかしくて少し悲しい。




“少しの間、夢を見させてくれてありがとう“


翔太くんに伝えた。


私はいつか彼を思い出さなくなる日は来るんだろうか。


忘れたいようで、忘れたくない。


でも、忘れる時はきっと、そんな事を考えるまでもなく自然に訪れる。


心に誰かが住み着いているのはとても苦しい。


だから、私は私でいる為にサヨナラを選んだんだ。


泣いて泣いて泣いて、泣き疲れて。

ここ数日の私は気を抜いたら涙が溢れてしまう日常を過ごしていた。

だけど、今日の晴れた空みたいに今、心は穏やかだ。


あと少し。

お別れの言葉なんていらない。

このまま会わずに、

「元気でいてね」

そう思いながら

終わりにするんだ。

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