あの頃の私。
こうくんは、あれから毎日連絡をくれていた。
思いの外早くまた会う約束をして、いつものように駅で見つけたこうくんは相変わらず良い意味で目立っていた。
家に着いてコートを預かった時、視界に入ったこうくんのジャケットが可愛くて
〝ジャケット可愛いね。すごく似合ってる″
「この間の成人式で着た服だよ。aoiさんに見せたくて着て来たの」
〝そうなの?嬉しいな″
そう答えた私に何度もキスして
「よかった」
と、にこにこしている。
お寝坊しがちな彼がこの日は早い時間から会いたいと遅刻しないで会いにきてくれた。
週末だしきっと後に予定があって、早く来て早く帰りたいのかしら?なんて思っていたのだけれど、結局終電間際まで一緒にいた。
セックスは相変わらず丁寧で、肩の辺りに痛みを感じて見てみたら、はっきりと濃いキスマークが付けられていた。
そのすぐ後に唇が胸の辺りまで降りて来て、また軽く痛みを感じたから、こうくんの頬っぺたに両手を添えてキスしながら
〝跡付けたらダメよ?″
と言った。
「なんで?いいじゃん。」
〝だって私結婚してるもの″
こうくんは面白がるように
「いいじゃん!」
私が困るのを分かってて言ってくる。
〝なんでキスマーク付けたいの?″
「aoiさんは僕の!ってしたいんだもん」
キスマークを付けたがる子はそういう性癖なだけで、別に私に恋愛感情があるわけではない。
あれもこれも、きっと他にも沢山の女の子を
僕の!って具合にマーキングしたいだけなのだ。
私は特にそういうの引いたりしない、むしろ可愛いと思うので
〝たくさん付けたらダメだよ″
困ったフリをして受け入れる。
こうくんといると、自分がこうくん位の年頃だった頃を思い出す。
好きな男の子と何をするでもなく一緒に時間を過ごしたり、セックスをしている時以外にも必ず身体のどこかをくっつけて仲良しの犬や猫みたいに戯れあったり。
時間に関係なくお腹が空いたら一緒に何かを食べたり、テレビを見てくだらない事を笑い合ったり。
その人がいるだけで全てが幸せ。
そして、
そんな日々がずっと続くと思っている若さとか。
両親がとても厳しかったり、その時の家庭の事情や、早くに結婚してママになった事で、何も考えずに恋愛に没頭する思春期〜20代前半の時期を、私はどこかに忘れて来てしまったから。
あの頃の私がしたかった事を、こうくんが一緒にいて今の私にしてくれることが嬉しいなと思う。
ただ、若い頃と違うのは彼もいつかいなくなるということを大人になった私が、きちんと理解しているという事だ。
いつの間にか会わなくなり、
全部が思い出に変わるということ。
それでも私は青春を取り戻すかのように、
刹那の日々を日常にしながら生きている。
そんな私の気持ちを知りもしないこうくんは
「まだ離れたくない」
と抱きつき、
私にこれでもかと甘さを放り込んで
余韻から抜けられない週末にしてくれちゃってるんだからもう、、困ったものです。
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