アートで楽しむ!マジック:ザ・ギャザリング モダンホライズン2(リス編)
長いおうち生活の中で、手軽にできる娯楽といえば、ゲーム。
みなさん、ゲームと言えば何をやってますか?スマホゲーム?据え置き機?それとも家族で輪になってボードゲーム?カードゲーム?
今回、私が推すのは「トレーディングカードゲーム マジック:ザ・ギャザリング」です!
どうも、夏になると柑橘系のサワーには森永 ICE BOXが必須になる私です。
1993年に発売された世界初のトレーディングカードゲーム、マジック:ザ・ギャザリング(以下MTG)は世界でもっとも多く遊ばれているトレーディングカードゲームとしてギネス認定され、最近ではモバイル化もされてTVCMを打つなど、その勢いは発売から30年近くたった今でも衰えることを知りません。
このMTGの売れ行きを受けて、多くのメーカーがトレーディングカードゲーム(以下TCG)を次々と発売し、今日ではTCGはゲームの一大ジャンルとして確固たる地位を築いています。
ゲームの魅力は多岐にわたっていますが、MTGの特徴の一つとして、日本産のアニメやマンガ調のイラストを使用したTCGとは違う、絵画のようなアートワークが挙げられます。ここでは特に「アート」に注目した記事を連載していきますね。
※カードレビュー記事ではなく、カードの金銭的価値を論じる記事でもありませんので、あしからずご了承ください
■リス
紹介記事2回目にして制作元ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の狂気的な一面をご紹介せざるをえません。理由はこれ。
北米原産、ハイイロリス。(画像はwikipediaより引用)
ときおりMTGではある特定の種族をフィーチャーしたセットが作られることがあり、エルフデッキやゴブリンデッキ、猫デッキやゾンビデッキなどを構築して楽しむことができます。しかしながら明らかに悪ノリしている場合もあり、今回ご紹介するリスたちは間違いなく後者。
リスの群れ(Squirrel Mob)
どうやらリスは日本とアメリカでかなりイメージが違うようです。日本では山や森に住むかわいい動物としてしか見られないかもしれませんが、アメリカの都市部では公園に放し飼いにした結果、大繁殖してしまい、人間の手から食べ物を奪う、エサを奪うために襲ってくるなど害獣のイメージがついてしまったみたいですね。
イラストのリスもそのイメージで考えると怖いですね。背景の木の枝が枯れ果て、リスたちもあばらが浮き出ているところからも、食べるものがなくて飢えている様子がうかがえます。こんなはらぺこ小動物に集団(Mob)で襲いかかられたら……ぞわぞわ!
絵師のCarl Critchlowさんはファンタジー、SFなどを得意とし、コミックでは「これぞアメコミ!」といった感じの作品を作っています。
貪欲なるリス(Ravenous Squirrel)
アメリカ人がリスをどのように見ているのか如実に表しているアートですね…… リスはナッツ類を食べているイメージがありますが、実際は昆虫、卵、爬虫類などを食べる種もいます。でもこのリスはいろいろとやばいものを巣穴にためこんでいますよ!
絵師のDan Scottさんは光沢の使い方が巧みな方で、MTGの他にもD&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)に多く作品を提供しています。
リスの将軍、サワギバ/Chatterfang, Squirrel General
迫力とスピード感のある画法と後続のリスたちの躍動感はマンガ的な描き方を思わせます。将軍!完全に二足歩行ですね!
英語名のChatterとはおしゃべり、鳥のさえずり、動物たちの騒ぐ声という意味。これを「騒ぎ牙」という二つ名みたいな感じで訳さず、「サワギバ(騒ぎ歯?)」という現実でもありそうでなさそうな名字みたいな名前にしたところにセンスを感じます。リスに牙はありませんしね。
絵師のJason.A.Engleさんはダークファンタジー色の強いアートワークを多く手掛けている方です。リスの絵を描いてくれ、と言われたときの気持ちを訊いてみたいですね!
リスの君主(Squirrel Sovereign)
目が赤く光るような凶暴なリスではなく、どことなく気品のあるリス。やわらかな光の当たり方と、その光に透かした葉っぱの色のコントラストが見どころです。いちばん気になるのが、頭から王冠のように生えている五つの耳のようなもの。よく見ると左から二番目のものに耳の穴らしきものがあるので、おそらく四番目のものにも耳の穴があるでしょう。真ん中と端っこは飾り毛ということですかね。
Sovereignとは聞きなれない単語ですが、意味は「王」「元首」など。発音は「ソヴリン」に近いです。
絵師のIlse Gortさんは動物や、動物の亜人などのイラストを得意とするアーティストです。もふもふから、勇壮で力強い動物まで描きこなしています!
リスの巣の守り手/Drey Keeper
MTGではリスを友とする世捨て人が多いのでしょうか。Dreyとは樹上性リスの巣という意味です。フレイバーテキストを読むかぎり、リスとエルフはどんぐりを報酬にした雇用関係を結んでいるようです。しかしエルフの放った緑の魔法に呼応してか、すべてのリスが目を緑色にしてこっちを見ているという構図にはぞっとするものを感じますね。それほんとに強化魔法?使役魔法じゃなくて?
絵師のKev WalkerさんはMTG古参のイラストレーターで、少ない色数または系統を合わせた色で制作したアートワークが印象的です。
小走り樫/Scurry Oak
Scurryはあわてた、とか、急ぎ足で、小走りで、という意味です。イラストを見る限りでは、ちょこちょこ小走りしているのはツリーフォークではなく、その上にいるリスたち。自分が強化されるたびに現れるリスたちを、どうしたもんかな……と思案顔なのがおもしろいですね。
絵師のMark Zugさんは雲や樹木などの陰影のつけ方に特徴があるアートワークを多く作っています。ちなみに鎧を描かせるとなんでも丸っこくなる傾向あり。名前の読みは「マーク・ツーグ」。
リスの聖域/Squirrel Sanctuary
石で舗装された古の道、古い石垣。その切れ目から向こうにのぞくのは、墓石でしょうか。リストークンを1マナで生み出し、自分のクリーチャーが死亡するたび手札に戻ってくるという能力からしても、死と輪廻を強く感じさせます。暗く恐ろしいイメージにならないのはアートワークの力によるところも大きいでしょう。
絵師のSteve Argyleさんはソリッドでつやっとした質感で人物を描くのを身上としているイラストレーターさんです。
魅惑の輝き/So Shiny
英語名がAlluring BrillianceとかEnchanted Shiningなどではなく、So Shinyなのが、催眠術にかけられたような危うさを感じさせます。魅惑の輝きを放つ呪物に魅入られたリスは、大好物のどんぐりが足元に転がっているのにも気づかない様子。背景色が緑寄りの青なのも不穏さをかもしだします。
絵師のDrew TuckerさんはMTG古参のイラストレーターで、MTG界の印象派とも呼ばれる、輪郭のはっきりしない水彩が特徴です。ファーストネームがDrewなのでHPで自動翻訳すると「タッカーを描いた」と連呼されるので笑いが止まりませんwww
騒鳴の嵐/Chatterstorm
どうですか!このマッチョ感!もはやかわいいリスの面影など微塵もありません!むしろウルヴァリンでしょう!
ストームを稼ぐことによって大量に出てくるリストークンのイメージを後ろの大群で表現しているのでしょうが、前景でヒーロー着地みたいなポーズを取っているリスマッチョのせいでぜんぜん後景が目に入ってきませんwww
ちなみに英語名のChatterstormは「粉砕の嵐/Shatterstorm」のオマージュでしょうか。
絵師のMilivoj Ceranさんは緻密な描きこみで知られ、ファンタジーの他、北欧神話画なども手掛けています。名前の読みは「ミリヴォイ・セラン」。
囀り吐き/Chitterspitter
これはカード名と絵の内容とが一見では一致しませんね。Chitterはさえずる、Spitterは(つばを)吐く人となりますが、イラストのリスは謎の魔道具を使ってどんぐりを生成あるいは転送しているように見えます。そしてこのアーティファクトの効果──「リストークンを生み出す」「トークンを生け贄に捧げ、どんぐりカウンターを置く」「どんぐりカウンターの数だけ、自軍のすべてのリスが強くなる」を考えると、
どんぐりを出す魔法の道具を使うために作業員としてトークンひとつをあてる(生け贄に捧げる)→出てきたどんぐりは貯めてリスたちの力の源になる(自軍リスの強化)→緑のマナを使ってリストークンを出す→最初に戻る
というフレイバーになるのではないでしょうか。カード名に関しては「囀る者(リス)が、(どんぐりを)吐き出す(吐き出させる)」という意味にとらえておけばよいのかな?いずれにしても韻を踏むこと優先で名付けられたような気はしますね。こういう奇妙な名前のカードもMTGあるあるのひとつです。
絵師のJason Felixさんは無機質でメカメカしいオブジェクトを描くのに長けたイラストレーターさんで、人ならざるクリーチャーのデザイナーとしても活躍しています。
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いかがだったでしょうか?以上、今回はモダンホライズン2から奇妙な奇妙なリスたちのアートワークをご紹介しました!
MTGにはほんとうにさまざまなジャンルのアーティストが作品を提供しているので、見ているだけでもちいさな美術館のように楽しめます。みなさんも、おすすめのちいさな美術館的なものがありましたら教えて下さいね!
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、ごきげんよう。
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