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津波フラッグ:目で確認する警報

 最近、また地震が多くなってきていますね。忘れたころにやってくるのが天災というものですけれど、あまり多く発生して慣れてしまうのも考えものです。

  
 どうも、紹興酒を愛する私です。

 東日本大震災の教訓を活かすべく、音声の届きにくい海岸では、どうやって警戒を呼びかけるかという課題に対して、気象庁では津波フラッグなるものの導入を全国で進めています。津波注意報、津波警報、大津波警報が発出されたとき、海に入っていて音声がよく聴こえない人や、聴覚に障害のある人へ、わかりやすく伝えることが目的です。

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 音声が届かないなら視覚で、ということなのでしょう。しかしこの津波フラッグ、全国の自治体では導入が遅々として進まないといいます。2020年6月からの運用で、2021年4月までに海水浴場のある全国の446の市町村を気象庁が調査したところ、津波フラッグを導入していると回答した市町村はわずか63。全体の14.2%です。

 導入が進まない理由としてはまずなによりも
「知られていないから」
 だそう。

 確かに、それが何を意味するのか知らなければ、文字通り意味がありませんよね。ただの紅白4分割の旗でしかありません。
 津波フラッグに使われている配色とデザインは、もともと船舶どうしで通信するのに使われていた国際信号旗で、「貴船の進路に危険あり」という意味を持つ旗(U旗)と同じです。
 おそらく既存の旗の中で危険を示すものとしての実績が買われ、また視認性なども考えての配色とデザインにしたのでしょうけれど、正直なところ日本人に紅白の旗を見せてもあまり危険を感じないんじゃ?という気がしないでもありません。もっと、見たとたんに(こいつはやばい!)となる絵柄や色はなかったのでしょうか。ドクロマークを黄色と黒で描くとか。認知度を高めるためにはさらなる啓蒙の努力が必要なようです。

 ところで、「船舶どうしで通信するのに使われている国際信号旗(旗旒(きりゅう)信号)」ってご存知でしたか?私は初めて知りました!もともとは通信機器の無い中世ヨーロッパ時代に船舶のあいだで通信連絡のために旗を振りあったもので、それが発展し、1857年に国際信号書として国際信号旗が定められたのだそうです。特筆すべき点は、世界共通の意味を持ち、単体での意味だけではなく、組み合わせて意味を持たせることにあると言えます。


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(画像は名古屋海上保安部HPより)

A(アルファ)旗・本船は潜水夫をおろしている、微速で十分避けよ(I have a diver down, keep well clear at slow speed)

B(ブラボー)旗・本船は危険物を荷役中、又は運送中である(I am taking in. or discharging or carrying dangerous goods)

C(チャーリー)旗・肯定、又は「直前の符字は肯定の意味に解されたい」(Yes or affirmative)

D(デルタ)旗・注意せよ、本船は操縦が困難である(Keep clear of me, I am maneuvering with difficulty)

E(エコー)旗・本船は針路を右に変更中(I am altering my course to starboard)

F(フォックストロット)旗・本船は操縦不能。本船と通信せよ(I am disabled, communicate with me)

G(ゴルフ)旗・水先人を求む(I require a pilot)/漁場で:本船は揚網中である( I am hauling nets)

H(ホテル)旗・水先人が乗船中(I have a pilot on board)

I(インディア)旗・本船は針路を左に変更中(I am altering my course to port)

J(ジュリエット)旗・本船を十分避けよ。本船は火災中で危険貨物を積んでいる、又は流出中である(I am on fire and have dangerous cargo, or I am leaking dangerous cargo, keep well clear of me)

K(キロ)旗・本船は貴船との交信を求める(I wish to communicate with you)

L(リマ)旗・貴船はただちに停船されたい(You should stop your vessel immediately)

M(マイク)旗・本船は停船している。行き足なし(My vessel is stoped, making no way through the water)

N(ノヴェンバー)旗・否定、又は「直前の符字は否定に解されたい」(No or negative)

O(オスカー)旗・海中への転落者あり(Man overboard)

P(パパ)旗・
港内で:本船は出航準備中、乗務員は帰船せよ(All persons return to ship, proceeding to sea) 
洋上で(漁船が):本船の漁網が障害物に絡まっている(My nets have come fast upon an obstruction)

Q(ケベック)旗・本船乗組員の健康に問題なし。検疫に関する通行許可求む(My vessel is healthy and I request free pratique)

R(ロメオ)旗・意味なし(None)

S(シエラ)旗・本船は機関を後進にかけている(Moving astern)

T(タンゴ)旗・本船を避けよ。本船は、二艘引きのトロールに従事中である(Keep clearf of me, engaged in trawling)

U(ユニフォーム)旗・貴船の進路に危険あり(You are running into danger)

V(ヴィクター)旗・援助を求む(I require assistance)

W(ウィスキー)旗・医療の援助を求む(I require medical assistance)

X(エックスレイ)旗・実施を待て、本船の信号に注意せよ(Stop carrying out your intentions and watch for my signals)

Y(ヤンキー)旗・本船は走錨中である(I am dragging anchor)

Z(ズールー)旗・引き船を求む(I require tugs)/漁場で:本船は投網中である( I am shooting nets)


 ご覧のとおりアルファベット26文字に対応した意味がありますね。とりあえずU旗の他にはJ旗を覚えておこうと思いました。ジュリエットやばい。見た目になんかさわやかそうな配色なのもあいまってやばい。(エー、ビー、シーと呼ばずにアルファ、ブラボー、チャーリーと呼ぶのは聞き間違いを防ぐためだそう。ビーとディーとか聞き分けづらいですもんね)

 そして、単体だけではなく、これらを組み合わせて表現することもあるというのですから驚きです。U旗・W旗の順で上げると、「航海の無事を祈る」という意味になるというのですから。(映画「コクリコ坂から」を観てみましょう!)まず一夜漬け程度ではおぼえられないでしょう。実際の船乗りの方はどうやってこれをおぼえているのでしょうか。


 そして、国際信号旗を調べていくうちに、またしても知らない単語がいっぱい出てきましたね!これも調べてみましょう!



 水先人:水先案内人という単語の方がまだ親しみはあるでしょうか。その水域のことを知り尽くした、船舶の安全な航行には欠かせない案内人のことです。

 引き船:曳舟、タグボートとも。港湾内外で船舶を曳航したり押したりして移動の補助をするものから、外洋で大型プラントを移動させたり遭難者の救助をしたりするものまで、大きさを問わず船体の割に強力なエンジンを積んでいて、速度よりもパワーに優れる船の総称。対象物に直接船体を接触させて稼働することも多いので、ぐるりと古タイヤなどをくっつけている船もあります。

 走錨:船舶が錨をおろしている状態で流されてしまうこと。近年では平成30年に起きた、台風 21号の影響により関西国際空港沖に錨泊していたタンカーが走錨し、空港連絡橋に衝突してこれを損傷、結果として関西国際空港へ通じる道路、鉄道ともに不通となった事故が有名。

  Starboard,Port(右舷、左舷):なぜ右舷と左舷にRightとLeftの語を使わず、こんな呼び方をしているのでしょうか。Portは港、Starboardは星板?
 実は、昔の船には船尾中央に舵板をつける技術がなく、船尾右側に舵板をつけていたそうです。舵板=ステアリングボード、がなまってスターボードになったとか。舵のある側が右舷だったんですね。
 対してPortはそのまま、港につける側、つまり接舷させても舵が損傷しない側をさした言葉だったようです。左舷側を接舷させて人の乗り降り、荷物の積み下ろしをしたのが起源だったのですね。ちなみに今でもほとんどの船が左舷側を接舷するのはこのころの名残だそうです。


 話がだいぶそれましたが、いかがだったでしょうか?
 危険を知らせる津波フラッグ、そしてその起源について少しばかり掘り下げてみました!

 海の近くにお住まいの方、海沿いやビーチに遊びに行く予定のある方は、ぜひこの配色とデザインをおぼえてみてくださいね!紅白の4分割ですよ!!

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

 それでは、ごきげんよう。

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R旗ってどういう時に使うんだろう?!

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