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映画レビュー:犬神家の一族★★★☆☆

──禁酒84日目の酎 愛零が「犬神家の一族」を観て感想を書く話──

 

 今までただの記号だった「スケキヨ」と「ラバーマスクマン(?)」が!初めて意味を持ってつながった!!😃😃😃


 どうも、禁酒84日目の私です。


今回はYoutube映画で「犬神家の一族」を観ました。



 先日レビューしたスパルタンXよりもさらに昔の映画(1976年制作)ですけど、先月 さんが話題にしてらしたのを読んで、横溝正史どころか日本映画をろくに見たことがない私も、遺産をめぐる骨肉の争いと猟奇的な事件が気になりましたので「観てみたい!」と思いました!😃



 結論から言いますと、5点満点中、3点。

 くせになる……途中からトリックがわかりましたけど、言ってしまうとそれほどトリックに依存しているつくりではなく、欲と憎しみが交錯する中での復讐劇を描いている、といったところでしょうか。
(※ここからはネタバレを含みます。ネタバレが嫌な方はブラウザバックでお戻りください。)


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■あらすじ

 一代で財を成した犬神財閥の長・犬神佐兵衛がこの世を去り、後には不可解な内容の遺言書が残された。恩師の孫娘、野々村珠世と結婚した者──一族に連なる男子にその財産を継承させようというのだ。この理不尽な遺言によりたちまち一族内で骨肉の争いが巻き起こり、やがて第一の殺人が起こってしまう。遺言管理人の弁護士により呼び出されてはるばるやってきた金田一耕助は、その渦中に身を投じてゆく……



■良かった点

・欲望と憎悪のすさまじい交錯
 基本、この一族に愛はありません。愛のように見えても、自分に都合が良いようにという思考の結果、愛のように見えているに過ぎません。しかもそれは祖父の、犬神佐兵衛の代から続く怨念のようなもの。人間の邪悪さ、醜悪さというものを強調した描写が見どころです。

・息抜きパート
 女たちを中心とした愛憎劇が繰り広げられる一方で、捜査する側の金田一、弁護士、警察関係者たちの様子はどこかユーモラス。おっちゃんたち、もっとしっかりしてよ(*´ω`*) と言いたくなるほんわかさです。また、金田一耕助が泊まり込んでいる旅館の女中役の人がかわいい。彼女に『この料理、全部わたしがつくったの!どれが一番おいしかった?』と問われて『生卵!』と返すのはベタだけどおもしろかったです😁

・カット割り
 これは監督の好みなんですかね、随所にぱっと入ってぱっと消える、カット割りが多用されていました。過去の記憶とかをフラッシュバック的に視聴者に見せる役割だと思います。しのごの言わずに一瞬で見せれるのは、映像作品ならではの強みですよね。意味はよく分かりませんでしたけど。自宅で映画を観る時はたいてい2倍速なので、このカット割りもサブリミナル効果的な一瞬にしかならなかったのがまずかったかも。

・音楽が秀逸
 劇伴も挿入曲も、聞いていてなんか落ち着く……というかどこかで聴いたことのある曲調だな、と思ったら、ルパン三世の音楽担当の人と同じでした。大野雄二さんですね。

 なんと言いますか、物悲しさが漂う曲調は、人が人である限り逃れられない業を哀れんでいるようにも聞こえます。この楽曲がなければ映画の印象はまったく違うものになっていたでしょう。

 

■残念だった点

・長い
 なんと2時間26分。2倍速で観ても一時間を超えます。この長さでもダレることなく最後まで見せる力はさすが名作と言われるだけのことはありますが、観客を長時間拘束することに変わりはありません。この時間あればこそ、詰め込み過ぎによる破綻もなく名作たり得たのでしょうけど、忙しい人は観るのをためらうかも。

・カット割り
 良かった点でも書いたところですね。これは賛否両論あるのでは……と思い、こちらにも入れました。正直なところ、私はあんまり入れる意味を感じなかったんですね。よくわからなかったので。こういうフラッシュ的な入れ方って、あくまで視聴者が(えっ……今のってまさか!?)的な効果を狙うものであって、それには視聴者の側に予備知識が必要だと思うんです。たとえば主要登場人物の幼少期をフラッシュで入れるなら、一瞬でその人の過去の映像であるとわからなければいけないわけです。同じところに傷やほくろがあるとか、仕草が同一であるとかしてね。その予備知識を与えないままに入れてしまうと本当にただのサブリミナル映像になってしまって、観終わったあとに(結局あの幼女はなんだったんだ……?)となってしいますから。今作では私は少なからずそれを感じました。

・死にすぎ
 サスペンスや推理ものにこんなことを言うのは野暮かもしれませんが、言わせていただきます、警察や探偵が介入しているのに人が死にすぎでしょ?それとも昭和初期はこんな感じでばんばん人が死んでたんですかね?金田一耕助の介入後だけでも4人死んでますし、最後のひとりなんかは(いやそこは分かったれよ……あんた一応探偵やろ……『しまったッ!』てなんね?🙄)と思いました。まあ、好みの問題だとは思いますけどね。

・ややご都合主義
 終盤に登場人物の一人が言っていたとおり、偶然に偶然が重なるシーンがやや目につくストーリー展開のように感じました。おそらく因果関係プロットの段階で「偶然その場に居合わせた〇〇は〜」とか「たまたまそれを目にした□□は〜」という要素を入れすぎたのでは?と私は考えています。たしかに現実世界でも偶然に偶然が何度も重なって起こるミラクルはありますけど、それは本当に神の配剤としか思えないようなもので、それを創作物として表す場合、いかに嘘くさくならないかが重要だと思うんですよね。このあたりがリアリティとか、整合性とか呼ばれるものと密接に関係していて、それが観客に対してのめりこませるか、しらけさせるかを決定づけるものだと思います。これについてはまた別途記事を書きます。


■総評

 遺産をめぐる骨肉の争いに、不気味なゴム面の男、逆さになって湖面に突き刺さる死体といった一度見たら忘れられないビジュアルを付加した、日本映画界ミステリードラマの金字塔。長い作品ですが途中でダレることもなく最後まで観られる作品です。

 最後の方の取ってつけたようなオカルト風味は微妙。動機もいまいちよくわからない。カット割りを多く使用する監督の手法は好みが分かれるか。大野雄二氏の音楽も、おそらくルパン三世を見ていれば見ている人ほど、ルパンのイメージに引きずられるかもしれないですね。

 原作で「この世のものとも思えないような戦慄する美しさ」と描写されているヒロインか、意外とかわいい旅館の女中さんのどちらが好みでしょうか。観終わったあと、ダミ声で『シグマさ!!!(空耳)』『俺たちは、けっこう うまく やってたぜ……』と真似したくなるかどうかはあなた次第😁😁😁



 というわけで星三つ!もはや文化として一度は観るべき!\(^o^)/ 

映画評価基準……

★★★★★:何度でも観たい
★★★★☆:ぜひ観たい
★★★☆☆:観ても損なし
★★☆☆☆:一度観ればいい
★☆☆☆☆:観なくてもいい
☆☆☆☆☆:お金を捨てたいなら


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 今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 それでは、ごきげんよう。



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酎 愛零(ちゅう あいれい)
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