さすらいのハンコ旅
スタンプラリーって和製英語だってご存知でしたか?私は今知りました。
どうも、サッポロ 濃い目のレモンサワーを愛する酎 愛零です。
どうやら日本のハンコ文化、聖地巡礼、御朱印、コレクター気質などの存在が生み出したスタンプラリーは日本独自のものらしいです。
外国にこれに相当するものがあるとすれば、サンティアゴ・デ・コンポステラの巡礼手帳でしょうか。
文化的な下地はあったにせよ、その下地──近くない各所を巡って、行った証拠を残す文化を好むのは日本人の特徴と言えるのでしょうか?
・聖地巡礼
いつのころからか、日本人の庶民の間では寺社への参拝・参詣が流行するようになりました。移動手段が徒歩であった当時、遠くの神社仏閣へ参ることは大旅行です。容易な旅ではありません。それだけに、霊験あらたかな霊場をいくつも遍歴、御朱印などの証拠を持ち帰ることは、達成感とご利益、そして周囲の羨望の眼差しを伴った、ある種のステータスと言えなくもなかったことと思います。
あと、個人的には「八百万の神々」と言われるほど多様な神性が住まう日本の風土も影響していたのかな?と思います。出自の違う神性を日本風にアレンジしつつ取り込み、それぞれに異なるご利益を期待してお参りするのは日本人ならではなのではないか、と。
それと、現代のスタンプラリーにおいて強力な後押しとなっているのが「アニメやまんが、ゲームの舞台となった場所への巡行」だと思います。
してみると、感動や新しい発見を与えてくれるちょっとした旅、小旅行という面がスタンプラリーにはあるのでしょう。
・ハンコ文化
スタンプラリーの流行る点は、基本的にはハンコを押すだけというお手軽さにもあると思います。もしこれが、御朱印みたいに駅員さんとかが手書きのサインをするという方式だったらどうでしょうか?やっている方も待っている方もいずれキレるのは目にみえていますよね。必要な情報を詰め込んだ面を接触させるだけでそれを複写できる簡単な方法、ハンコという文化は、いつどこで生まれ、いつ頃日本に入ってきたのでしょう。
■起源は紀元前5000年頃のメソポタミア文明
中東の紀元前7000年〜6000年頃の遺跡から原始的な印章が発見されており、紀元前5000年頃のメソポタミア文明で使われるようになったそうです。最初は現在の印章と同じように底面に情報を刻み、それを押し付ける方式でしたが、後に円筒の側面に情報を刻んでそれを粘土などの上で転がして情報を転写する、という方式になったとか。これはこれで「シリンダー・シール」というものに発展していくことになりますが、それはまた別のお話。
(画像は円筒印章、動物と戦う英雄。シュメール王朝時代。wikipediaより)
■日本に定着したのは?
日本最古の印章として有名なのは「漢倭奴国王」の金印ですよね。ただしこの当時の日本にはまだ漢字は知られていなかったので、実用品かどうは疑問です。
その後、大化の改新を経て公文書に本格的に導入されるようになり、平安時代後期から鎌倉時代にかけて一時期「花押(サイン)」に取って代わられますが、戦国時代にかけて再び使われるようになりました。
(画像は織田信長の「天下布武」印、ひょうご歴史ステーションより)
江戸時代になると公文書の他、私文書にも用いられるようになり、明治時代になって署名が必要な場合は記名押印(名前のハンコをおす)によって代えられるという法律が成立しました。これによって、日本の押印文化は確固たる線路を敷かれたと言えます。
・コレクター気質?勤勉さの表れ?
聖地巡礼、ハンコを押す文化、これだけではまだスタンプラリーにハマる理由には足らない気がします。もうひと押し!そう、ものを集めることに喜びを感じるコレクター気質と、提示された目標に向けてもくもくと作業できる勤勉さ、このふたつがなければスタンプラリーを完走することってむずかしいんじゃないでしょうか。
実を言うと、私はコレクター気質ではありますけど、あんまり勤勉じゃないんですよね。とにかく楽をしたがるタイプなので……
そんな私は、スタンプラリーを完走したことはないです。よほどデザインが凝っているとかでもないかぎり、まずやろうともしないです。行くのがめんどくさいので。
でも、つまるところスタンプラリーを開催する側としては、きっとそういう、行くのがめんどくさいという層を刺激して、出歩いてもらうことが狙いなんですよね。
完走して景品をもらうことも、もちろんやる側としてはモチベーションになるんでしょうけれども、スタンプを集めてあちこちを歩き回ったり移動したりしているうちに、その土地の魅力、出歩かなければわからなかった発見、新たな出会いなどに遭遇するのも、結果としてのスタンプラリーの醍醐味であると思います。
・開催する立場になって考えると……?
今日のようなスタンプラリーの形式が確立されたのは、1970年の大阪万博にて各国のパビリオンに趣向を凝らしたスタンプを設置して、それを集めて回るスタンプ帳を出した時、また同年の10月に当時の国鉄(現JR)の利用促進キャンペーンとして、各駅に近くの名所のイラストを彫ったスタンプを置き、それを集めるためのノートを販売した時だと言われています。
以来、日本全国で毎日なにかしらのスタンプラリーが行われているのではないか思われるほどに地味ながら息の長いブームになっているのは、歴史をひもといて起源を探ってみると、実に日本人に合った、というより日本人の思考や行動のパターンに沿って作られたからだということがわかります。
自分が開催する立場になって考えてみるのも面白そうですよね。何を目的とするのか?どんなスタンプを作るのか?スタンプとその地の関連性は?完走してもらうには?どんな景品ならやる気が出るのか?などなど。
どこかにスタンプラリーマニアの方がいたら、お話を聞いてみたいものですねー。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、ごきげんよう。
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