【数学】担任_高校1年生
高校1年生のときの担任だったF先生は、背が低く、目がくりっとしているおじさん先生だった。ぼんやりと愛情光線を放ちながらまっすぐ生徒を見つめる先生だったため、まっすぐが故にかえって気持ち悪がる女子生徒すらいた。
F先生のよいところは、生徒の良い所をまっすぐ褒め、成果を一緒に喜び、喜ぶときは若干軽く飛び跳ねているように見えるほどにパーッと周辺環境を明るくするパワーもあった。
先生はいつも肯定的な声掛けをしていた。
「リリー、目の下が青いけど、“勉強し過ぎだ!”って親になぐられてないか?」
「リリーがいると、合唱の点数があがるんだよな」
「リリーは今回もいい成績だ。学年順位が10位以内に入れば、進学も就職もかなり有利だぞ。がんばれよ。」
妙な心配も含め、些細な内容も含め、いつも生徒にかける言葉が優しく肯定的なのだ。そんな言葉をかけれて嫌な気分になる生徒はいない。
忘れもしないのは、化学の授業中に突然F先生が教室に侵入してきたと思ったら静かに私の近くにきて、「リリーが数検を受けてくれれば人数の条件がクリアで学校内で受検ができるんだけども」「放課後講習もあるし、受けてみないか」と授業中にわざわざお願いにきたのだ。
今まさに授業を進めている化学の先生に断りを入れたように見えなかったために私としては2人の関係性が心配だったが、取り急ぎ周囲の迷惑を考え、真っ直ぐな眼差しで見つめてくるF先生に「まぁいいですよ」と回答した。
私は数学が最も苦手な科目だったので放課後講習を受講したところで数検こそ取れなかった。
ただ、F先生が「リリーだったら、数検の誘いを受けてくれそう」「リリーなら教え甲斐がある」と思ってくれていたならば、お役に立てて光栄だった。
あのF先生からまっすぐと放たれる愛情光線は、たしかに存在していた。F先生の教え子ならば、全員がきっと共感してくれるだろう。
そして今日もきっと、目の前の生徒に愛情光線を放っているはず。
F先生のあのまっすぐな眼差しはなんとも脳に焼き付いて忘れられない。
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