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ひとりでも多くの女の子を勇気づけて。夢月が目指す、心さえも彩るヘアメイク

「グラビア」のあり方を見つめ直し、新しいかたちを模索する「I’m a Lover, not a Fighter.」。note版では、グラビアモデル・sさん湯灌師でもありヌードモデルでもある渡邊明日香さんなど、グラビア撮影に携わる方にインタビューを行ってきました。

今回お話を伺ったのは、アイドルへのヘアメイクを中心に、ヘアメイクアップアーティストとして活動されている夢月さん。ナチュラルなのに作り込まれた、繊細でドーリーなメイクを得意としているほか、SNSで「#夢月メイク」としてコスメ情報を発信をするなど、10代〜20代から厚い支持を集めています。女の子に寄り添い、女の子とともに「可愛い」を最大化させる夢月さんは、グラビア撮影の現場でどのように彼女たちと、そして自分自身と向き合っているのでしょうか。

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夢月(むつき)
女優・モデル・アーティストからの指名も数多く、 広告・雑誌・写真集・MV・CDジャケット等のヘアメイクを手がける。SNSの総フォロワー数は15万人近く、10代20代の女性から絶大な支持を受けている。 メイクプロセスの投稿、#夢月メイク のファンも多く、紹介したコスメが店頭で売り切れる現象も多々。
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ーヘアメイクアーティストとして活動を始めて数年経つなかで、近年はどのようなお仕事が多いですか?

夢月:アイドルの子たちのヘアメイクを中心に、雑誌やWeb媒体、ブランドさんと一緒にお仕事させていただいています。若い女の子をターゲットにしたお仕事が多いんですけど、最近は幅をもっと広げていきたいと思うようになって、来年以降はカラコンのプロデュースなど、自分発信のお仕事も積極的にしていく予定です。

ー「幅を広げていきたい」と考えるようになったのには、何かきっかけがあったのでしょうか。

夢月:私の声や作品が届いている範囲って、基本的にSNSでフォローしてくれている人のみなんですよね。ありがたいことにたくさんの人に見てもらえている実感はあるんですけど、「自分はまだまだだな」と感じる出来事も、この半年間でたくさんあったんです。もっと自分自身と向き合ってこれからのキャリアを考えたり、SNSだけじゃなく、ちゃんとこの広い芸能界の中に自分の居場所をつくらないといけないなと思っています。

ー夢月さんのヘアメイクは、女の子たちに寄り添いながらその子自身と一緒に「可愛い」を共創していくものであるように感じます。ヘアメイクをする際に心がけていることはありますか?

夢月:編集さんやディレクターさんからオーダーしてもらったイメージや、雑誌やWeb媒体のコンセプトに合うようにメイクするのは当たり前のことで、その上で女の子に寄り添ったヘアメイクを目指しています。私がヘアメイクさせてもらう女の子って、本人達が可愛くなるために研究に研究を重ねている子が多いんです。みんなメイクに詳しいし、どんなふうになりたいかちゃんと考えているから、「顔をキャンバスにしていいです、何でもやってください」とはならないんですよね。その子たちの想いをなるべく汲み取りつつ、コンセプトに合うかたちでちゃんときれいに見えるように、というのはずっと意識しています。

嬉しいのは、どの女の子にヘアメイクしても「こんなに自信持ってカメラの前に立てるの初めて」って言ってもらえることが多くて。というのも、撮影現場ではレタッチであとでいろいろ隠せるからって、肌のツヤだけ出す時短メイクが「あるある」なんですよね。ナチュラルな写真にしたいから、アイラインはまったく引きませんとか。もちろん、プロのスタッフたちがつくるのでそれでも十分素晴らしい作品になるけど、大事なのはモデルの子がカメラの前に立つときに、自信を持てるかどうかなんです。満足なメイクをされてない状態で写るのとは、絶対に表情が違うはずだから。

ー最終的にどんなに素敵な作品になっても、その過程となる撮影で不安な状態だと、心から納得できなかったり「いいものになった」って言いづらいですよね。夢月さんが「女の子に寄り添って、可愛さを引き出したい」と考えるようになった原体験はありますか?

夢月:私が通っていた中学校は男女仲がすごく悪くて、男の子が女の子の外見の悪口を言うことが日常的だったんです。だから、誰もが一度は通るであろう、異性の心ない一言でコンプレックスが生まれる…というのを、私も経験してきて。

そのあと高校に入るタイミングで、コンプレックスを何とかしたくて、1万円握りしめて地元のマツキヨに行ったんですよ。当時愛読してた『Popteen』の情報しか持っていない中で、セザンヌとキャンメイクのコスメをフルメイクできるぶんだけ買い揃えて(笑)。それで初めてメイクしたとき、鏡の中の自分を見て「これは革命だ」って思ったんです。正直、当時の技術なんて顔に色をのせるくらいだったから、実際は大きい変化ではなかったと思うんですけど、私にとっては世界ががらっと変わるものだった。「メイクすればこんなに自信持って生活できるんだ」って思えたことが、すべてのスタートでした。

ー夢月さんが実現したいメイクは、表面的に「可愛い」と思えるものだけじゃなくて、その人自身の心のあり方にも変化を与えられるものなんですね。

夢月:私は当たり前にメイクしてきて、今はそれを仕事にしているけど、世の中には「自分なんかメイクしてもしなくても変わらない」と思っている女の子もたくさんいて。SNS上で、そういう声が届くことも多いんです。私にも面倒くさくてメイクしない日もあるから、すっぴんがだめだとはまったく思いません。でも、自分自身のことを「どうでもいい存在」としてメイクしないのって、今日は気分が乗らないからやめておこう! っていう「選択」とは違う、思考停止状態なんですよね。それがすごく悲しいから、自分にできることがあるならしていきたいんです。

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ー夢月さんはグラビアのお仕事もされてますよね。グラビアの撮影現場ではどんなふうにヘアメイクに臨んでいますか?

夢月:私はどちらかというと、グラビアアイドルの方が出ているがっちりしたものより、アイドルや新人タレントのグラビアデビューのようなフレッシュな現場が多いんです。水着や下着ばっかりじゃなくて、半分は私服での撮影みたいな。グラビアの現場でも、自分のスタンスは基本的に変わらないです。ほとんどの場合、ナチュラルなヘアメイクを求められるので、その制限の中でいかに自分なりにつくり込んで可愛くできるか頑張っています。

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