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救急隊員日記 その① 〜黙るんかい!〜

「指令室から救急隊、発生場所は〇〇、60歳ぐらいの男性が道路脇の水路に落ちた模様。顔面に擦過傷があるが、意識は清明。水路は約1m弱あり、引き上げる事ができないとのこと。通行人からの通報」

私がまだ救急隊長だった頃の話

通報内容から救助隊も同時出動し、水路からの救出手順を無線でやりとりしながら現場へ

救急隊が先着すると、水路脇には多数の人だかり、、、
皆が水路へ視線を向けている中、一際大きな声がする

「なんや!大丈夫やって、ただちょっと足がもつれただけや、見せもんちゃうぞ!」

人だかりを掻き分け水路に目を向けると、傷病者がキレイな仰向けで、スッポリと水路に収まりながら、訳のわからない事をリピートしている

声かけする前にわかるこの感じ
”この人、相当酔っとるな、、、”
そう感じた私は、隊員にも注意喚起を行い、いざ観察へ

「救急隊の〇〇です。お名前は言えますか?痛いところはありますか?」

声かけをした私を不機嫌そうな顔で見つめる傷病者、、、

傷病者「誰やねん、救急車呼んだんわ、大丈夫や、帰れ帰れ!」

「今から救助隊が助けに行くので、動かないで下さいね」

傷病者「うるさいねん!ワシはこの状態が気持ちいからジッとしとんねん、
    放っておけ!」

これはボケなのか?
”そんな奴、おらんやろ!”と突っ込みたくなる気持ちを抑えながら、嫌がる傷病者を救助隊と協力し救出

そして、私が傷病者の観察をしようと近づくと、浴びせられる罵声のオンパレード、、、

傷病者「ワシは公務員が大嫌いやねん!ワシらの税金で飯くいやがって、
    偉そうにすんな!」

こんな罵声はたまに受けるので、慣れっこと言えばそうなのですが、正直気分がいい訳ではない
心の中では”あー殴りたい😂”なんて思うこともしばしば、、、
(そんな事は絶対にしませんがね💦)

しかしそんな感情はさておき、罵声を吐きまくる傷病者を救助隊の力を借りて、救急車内へ収容する

救急車の中でも傷病者の暴言や反抗的な態度は続いていたが、約1mから落ちている事実はあったので、ここは念の為、脳外科対応の病院を探すことに、、、

そんな時「傷病者の奥さんが到着しました!」と救助隊から突然の報告
(近くにいた人が知り合いだったらしく、119番通報と同じくらいに奥さんへ連絡されたそうだ)

私はすぐに車外へ出て状況を説明後、救急車内へ案内したのだが、傷病者(夫)を視界にとらえた瞬間、奥さんの表情が一変⁉️

奥さん「あんた、さっきから迷惑ばかりかけてるそうやな、恥ずかしい!
    もうグダグダ言わんと、黙っとき!」
傷病者「、、、」

”黙るんかーーーい⤴️”

おそらく、その場にいた誰もが心の中で叫んだに違いない、、、
吉本新喜劇なみのボケとツッコミの成立だ😂

そこからの傷病者は”蛇に睨まれたカエル”状態

救急隊からの問いかけや観察も素直に受け入れてくれ、病院への搬送もスムーズに実施でき一件落着→(後日連絡があり、何もなく即日帰れたそうだ)

やはり、長年付き添った奥さんというのは”頼りになる!”の一言です

まあ、こんなツッコミどころがある救急現場も珍しいのですが、それもこれも「何もなかったから」話せる事ですよね💦

皆さんも、酔っ払いすぎて気持ちが大きくなりすぎるのはやめた方がいいかも?です、、、

お酒は飲んでも、飲まれるな😂

それでは、また!

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