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公園で迷子に話しかけた話

コロナを言い訳に休日は家に引きこもっていたが、とてもいい天気だったので子どもを連れて公園へ行った。

赤いストライダーに上の子が乗り、下の子はベビーカーに乗せて向かった。

上の子はまだ乗りこなせないストライダーに苛立ち、「なんでママすぐいっちゃうんだよー」とげんこつで叩かれ、なんとか公園に着いた。

テントだらけの家族連れの公園を潜り抜け、人気のないベンチにようやく腰掛け、機嫌の悪かった上の子とマイペースな下の子はお菓子を元気よくばりばり食べ始めた。

池を眺めたり、走り回ったり、叫んだりと一通り遊び、そろそろ帰ろうとした時、

「うわ〜ん」と子どもの泣き声が聞こえた。

上の子か?と思ったが上の子は別の場所で走り回っていた。

泣いている子は上の子より大きく4歳か5歳くらいの男の子だ。泣いていた子の後ろに老夫婦。「お母さんがいいー、お母さんどこなのー」と喚いているのでおじいちゃんおばあちゃんの前で駄々をこねているかと思ったら、老夫婦は離れて行き、その子は一人だけになった。

あ、老夫婦は他人なのね。

と思いつつその泣いてた子どもはどんどん私たちに近づいてきた。周りに沢山人はいるが皆眺めているだけだった。私もいつもはその内の1人だ。ただある記事が頭をよぎった。

この記事を読んで少し胸にチクッとしたものがあった。

助けない大人って私もその1人だよね。

今まで迷子がいても黙って見過ごしていることが多かった。

でも声掛けて誘拐犯に間違えられたらどうしよう…。あ、子連れだから万が一があっても不審に思われないか、と小心者の頭には色々な考えが頭を巡る。まずは走り回っていた上の子を呼び戻した。人の世話焼いて自分の子どもが迷子になったら本末転倒だ。それからあの泣いていた子に少しどきどきしながら声を掛けた。

私「どうしたの?迷子になっちゃったの?」

迷子「…うん」

私「名前は何て言うの?」

迷子「○※△〜さだはる(仮名)っていうの…」

私「(苗字聞き取れん…)さだはるくんだね。誰と公園に来たの?」

さだはるくん「お母さんときたの」

私「じゃあ、おばさんも(あぁ、私もついに自分をおばさんと呼ぶようになったか…)探してあげるから公園を一周してみよう」

上の子が「えぇ〜さだはるくんどうしたの〜?なんでなんで〜?」とやたらワクワクしていたので「自分だったらもっと大騒ぎしてるくせに」と少しムッとしながら、さだはるくんのお母さん探しをすることになった。

「さだはるくんのお母さんのどこですか〜」と叫びながら歩いた。上の子も一生懸命叫ぶ。下の子は何がなんだかわからずぼーっとベビーカーに乗ったままだ。周りの人が次々に振り向くが気にせず叫ぶ。

この広い公園でもし見つからなかったら、公園の隣に交番がある。そこに連れていくしかない。それまでにこの広い公園でお母さんが見つかればいいんだけど…と考えていると

「はーい!こっちですー!さだはるのお母さんでーす!」

と声が聞こえた。

探し出して1分後、すぐ見つかった。テント族の1人で友達同士で来ていたらしい。ちなみにお父さんも来ていた(お父さんの存在ってどこの家庭も薄いのね…)。

さだはるくんはお母さんの所にわーっと駆け寄った。

さだはるくんのお母さんは「泣いてました〜?どうもすみません〜」と呑気に言った。「あっちで泣いてましたよー」と言ったが、さだはるくんはお母さんに飛びつき、お母さんどこだったのだの、○○ちゃんが探しに行ったんだよだの2人の会話が始まったのでそのままその場を離れた。

あれこれ最悪なケースを考えていたが杞憂に終わり安心した。

大して喜ばれもしなかったし、ドラマチックな展開もなかったが、私にとっては大冒険だった。

あの記事を読まなかったら私も迷子がいてもスルーしていただろう。ましてや子どもを産んでなかったら、子どもに話しかけることすら出来なかった(だから今まで迷子に話しかけられなかった)。

あーいいことした!私っていい人〜!というより、黙って見過ごした迷子たちの罪滅ぼしが少しは出来ただろうか、という気持ちの方が強かった。

※※※※

そして遅めの昼食を取るため帰宅したが、公園から家まで15分なのに1時間以上かけて帰る羽目になった。

さだはるくんを探す時、あんなに生き生きとしていた上の子は、実はパンツにうんこを漏らし、道路にアイスクリームが溶けたように寝転がり始めた。「おしりきもちわるい。もうつかれた」だそうだ。片手にベビーカー、片手にストライダーを抱えた私は怒りだし、上の子は泣き出し、さだはるくん以上に周りから見られボロボロになって帰った。帰宅時の方がドラマチックな大冒険だったとは…と悲しくなる。

どこまでもマイペースな下の子はそんなことも構いもせず、家に着くまですやすやと気持ちよさそうにベビーカーで眠っていた。


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