島崎藤村 太陽の言葉

藤村随筆集より

 「お早う。」
とわたしは隠れている太陽にむかって声を掛けて見た。返事がない。きょうも太陽は引込みきりだ。

で始まる島崎藤村の随筆、改めて全体を読んでみて、文章も構成もうまいし、味わい深い。何かのエッセイだったか、試験の問題だったかで好きな一節を読んで、それ以来私の大好きな言葉は本稿最後に書いている一節。
久しぶりに全文を読んでみて、新型コロナの災禍で浮き沈み、今後の困難が予想される今読むに相応しい文章だと思う。
終わりはこうだ。

  「お早う。」
 とまたわたしは声を掛けて見たが、返事がなかった。しかし、わたしはこの年になって、また自分の内部に蘇って来る太陽のあることを感づくところから見ると、どうやら夜明けも遅くないような気がする。
            (大正十三年の秋)

明けない夜はない。
私の好きな一節は、ちょうど真ん中にあるこちらの一節。

 わたしは三十年の余も待った。おそらく、わたしはこんな風にして、一生夜明けを待ち暮らすのかも知れない。しかし、誰でもが太陽であり得る。わたしたちの急務はただただ眼の前の太陽を追いかけることではなくて、自分らの内部(なか)に高く太陽を掲げることだ。


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