「ポケットにはいつも優しさとアーモンドボール。」
「小さなゆりえちゃん」だった頃のお話し。
大好きな駄菓子屋は歩いて45秒のところにある。
小さなゆりえちゃんは
毎日のように買いもの買いもの〜
お小遣いは30円のときと50円のときがある。
50円のときの買い物は
セコイヤチョコレートから流して
最後カレーせんべいで締めくくる。
30円のときは...さぁ大変。
予算30円...
5円のコーラ飴とピーピーラムネをそれぞれ買い、20円のチロルを買うか
(あ、昔はチロルは20円やったんやで?
三つくっ付いたやつ。中にミルクヌガーが入ってるやつ。これがまた、とんでもなく歯にひっつくんよ!)
それともどどーんと大好きなセコイヤチョコレートを一発買うか、
刻むか、漢氣を見せるのか、
小さなゆりえちゃんはここでいつも悩むのだわ。
ある30円の日、
その日のゆりえちゃんはどどーんの氣ぶんチョコ氣ぶんだったの。
大好きなセコイヤチョコレート、
しかも売り切れ必須のストロベリー味。
買わない訳ないじゃない?
30円と引き換えに
セコイヤチョコレート.....っと、
ご存知?
セコイヤって木は
ものごっつい大きい木なのよ?
それを立て半分にぶった斬ったフォルムのチョコなわけ、セコイヤチョコレートってさ。
小さなゆりえちゃんには
その名の通り、セコイヤチョコレートが
それはそれは大きく見えてたのよね。
〜セコイヤチョコレートを買いますれば
たちまちセレブリティー
お姫様にでもなった氣餅になるから。
"いいチョコ姫氣ぶん"
どこかの旅番組のタイトルみたいなな。
お家まで45秒、
スキップで帰ります。
さてさて姫実食!
ポケットをまさぐってチョコを出す小さなゆりえちゃん.....
おやおやぁ、
何やらもう一つ小さなものが出てきましたよぉ?
それはアルミホイルに包まれた
一粒のアーモンドボールだった。
"アーモンドボールは確かバラ売りで10円"だ。
持っていたお金30円
→セコイヤチョコレートを30円で購入
→スキップで家路を急ぐ→ポケットまさぐる→見知らぬアーモンドボールが!→アーモンドボール10円→セコイヤチョコレート30円→持ってたお金30円(イマココ!)
何故よ、何故⁉️
何故アーモンドボールがここに?
誰かがポケットに入れたのかしらん?
そうよ!そうだわ!そうに決まってるわ!
あー、あれか!妖精か⁈
駄菓子屋によく出るあの妖精か⁈
カレーせんべいの妖精か⁈
悪戯好きのカレーせんべい妖精の仕業か⁈
頭はぐるぐる回る。
それに身体は反応する。
無意識レベルの行動で
氣がつきゃお口にアーモンドボールが.....
食べて..もた。
嗚呼、食べてもた、食べてもた。
どないしよ
とないしよ
駄菓子屋のおばちゃんに謝りに行くか?
いやいや、氣まずい!
それは、氣まずい!
長年かけて育んできた
あたしとおばちゃんのリレーションシップが
壊れるやないか!
どないしよ
どないしよ
あ!アカン!
また無意識にセコイヤチョコレートまで食べてもた!
結局、その後も謝れず
やがて月日はながれ
大人になって、毛が生えて.....
嫁ぎーの。
子ども産みーの。
実家に遊びに来ーの。
子どもと一緒に駄菓子屋行きーの。
思い出しーの.....そのループ♾️
結局、謝れないまま
近所の駄菓子屋さんはお店を閉めてしまったのよね。
あたしったらまだ後悔してるのよ。
10円ってこんなに重いのね。
今も思い出しては、一人懺悔しているの。
おばちゃん、ごめんなさい。
アーモンドボール持って帰ってきちゃって。
あの時、チョコで頭いっぱいだった。
最初に握ったのはきっと
アーモンドボールだったんだわ...
握りしめたまま、
セコイヤチョコレートを買ったんだ。
もしかしたら、おばちゃんは見てたのかも知れないわ。
知っててそのままに.....
ふんわりと思い出すあの頃の情景。
「小さなゆりえちゃん」のポケットに入っていたのは、おばちゃんの優しさだったのかも知れない。
空に向かって心からありがとうを云えよう。
おばちゃん、ありがとう。
〜小さなゆりえちゃんより。