立憲民主党は「軸」を明確にせよ

 政治学者の山口二郎氏が2023年8月1日に「国民民主党は、玉木と一緒にアクセルになりたい政治家と、ともかく政権交代をもう一度目指したい政治家とに分離すべき。(以下省略)」というツイートをしている。これは、西日本新聞が同年7月31日に報じた玉木氏の「自民党のアクセル役になりたい」という発言を受けたものである。この玉木氏の発言自体は、「非自民・非共産」で結集して政権交代をめざすという姿勢を以前から明らかにしていた前原誠司氏を意識したものであると西日本新聞は分析している。

 「政策本位」でまとまる政党というのは、そのスタンスを決定した時点で大規模政党になることを諦めたといえる。数百人規模の議員を抱える政党が「政策本位」でまとまるのは不可能に近いし、そもそも政策の多様性なしに選挙でそれだけの議席を獲得するのは難しい。一方で、政策的一致を一切無視して「政権交代したい派」というだけでまとまると、その政党は政権交代後に崩壊する可能性が高いというのは民主党政権で学習したことである。私は「政策本位」でまとまる政党を全否定するつもりはないが、与党自民党が「政策本位」でまとまっているとはいえず、かつ現行の選挙制度が「政策本位でまとまる小集団」をあまり想定していないという現状をみると、「政策本位」でまとまる政党が政権交代の妨げになる可能性が高いということは指摘しておきたい。現時点では国民民主党やれいわ新選組が「政策本位でまとまる小集団」といえる。そして、野党共闘に非協力的な彼らの存在は、政権交代をめざす立憲民主党支持者にとっては煙たいものである。

 私は、立憲民主党のような政権交代をめざす政党は、ある程度の政策の多様性は認めつつ、最低限合意できる「軸」を形成すべきだと考えている。かつて自民党は「反共」の一点でまとまり、55年体制の中で政権を維持し続けたが、冷戦が終結して「反共」という軸を失うと2度政権から陥落した。自民党から政権を奪った非自民8党派や民主党は、政権内部の対立が主要原因となって政権を失っている。明確な軸をもたず、ただ政権交代だけを目的として集まる集団は所詮寄せ集めに過ぎず、そのような集団が政権を維持することは非常に困難である。それこそ小泉純一郎政権のように「抵抗勢力」の排除によって求心力を維持するというような非情かつ強引な手段が必要になる。

 現在の立憲民主党は何を目的に集まっている集団なのかがあやふやである。他党との協力の話が出た際、立憲民主党に明確な軸がないために「立憲共産党」や「立憲維新の会」などと呼ばれ、まるで立憲民主党が他党に政策を合わせることが前提かのように語られることになる。立憲民主党が何を目的としている集団なのか、そういった政党としての「軸」を明確にしなければ、立憲民主党が野党第一党としてしっかりリーダーシップを発揮する野党共闘の展望も開くことはできない。政権交代可能な野党共闘を実現させることができれば、「政策本位でまとまる小集団」の存在意義も自然と、少なくとも現在の制度の上では薄れていくことであろう。



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