父の死

父が亡くなった

大腸癌末期と
大腸から転移して
肝臓癌末期

父はレスラーみたいな体型で
リンゴも握り潰す握力がある

医者嫌いで歯医者も行かず
ペンチで虫歯を引き抜くような人だった

体格が良く強い俺
が大好きな父が

癌になりみるみるうちに痩せていき
お見舞いに行った時には
30キロも痩せていて細くなっていた

最後になるかもしれないからと
子供達もつれて行き
父に会わせたら

「じいちゃんが強かった時を覚えておいてくれ」
と息子に言っていた
娘には握手しながら
「大きくなったな久しぶりに顔見たな元気でいてくれ」
とにこやかに言っていた

あたしには
「お前はもう大丈夫だ」
この言葉を言われて肩の荷がおりた様な感じがした

数日後一旦あたしは自宅に帰った
小学校の役員の仕事の引き継ぎをするためだ

会議中に兄から電話があった

「親父が危ないからこっちに来る支度しといてくれ」

頭が真っ白だった
昨日あたしは父の元にいた…
きっと父なりに気を使ったんだろう
亡くなる姿を見せないように

同じ役員をしている友達に事情を話して
直ぐに自宅に帰る
途中旦那に電話をするが出ない

焦る気持ちと不安の中
また兄から電話があった

「…今亡くなった」

やっぱりか…
父が死んだ…
あれだけの虐待をされ暴言を吐かれても
1人しかいない親が今いなくなった

現実は悲しいものだ
あたしは生きている
父は死んだ…

悲しみの中に嬉しさもあった

父からの解放

顔を伺いながら逆らう事もせず
意見に従う
それからの解放

あ…自由だ…

と思いながら泣きながら笑っていた

父の再婚相手は
母が生きていた時からの父の知り合いで
あたしが結婚してから内縁の妻になり
実家に居座っていた女だ

その女を喪主に
お通夜と告別式を行う
葬儀には義母も出席してくれた

義母に対して
「生前はうちの父が大変ご迷惑をおかけして
本当にすみませんでした
葬儀に出席して下さってありがとうございます」
と伝えたら
「これで最後やから」
と言われた

葬儀も終わり
自宅に帰った

義父に挨拶に行くと
「やっとくたばったか」
とだけ言われた

義妹が後で謝りに来たけど
もう慣れていた

これであたしは
両親がいなくなった
帰る場所もなくなった

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