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第1節 迫撃砲部隊の能力

1−1

 迫撃砲部隊は大隊、中隊及び隊の有機的な火力支援手段であり、指揮官が他の間接照準火力による支援が使用できないであろう際に使用することができる。全てのレベルにおける野戦砲アセットは限定的である。
 戦闘力を重要な局面に集中するため、BCT・連隊戦闘団及び師団の指揮官はいずれかにおいてリスクを受容する。 

1−2

 展開部隊は他に比べて野戦砲の支援がより少ない場合がある。大隊及び中隊レベルにおいては迫撃砲部隊は
・ 敵部隊を撃破若しくは無力化する。
・ 敵部隊を制圧及び孤立させる。
・ 敵の装甲部隊に対して天蓋の閉鎖、視察窓越しの観察を強要し、敵の支援火力を使用する能力を減じさせ、輸送車両や同行戦車から下車徒歩兵を分離させることによりその撃破を支援する。大隊の保有する直射対戦車火器は視界と支援火力が制限され、孤立した敵に対してはより有効的である。
・ 建造物を突き破り敵の野戦築城施設を破壊し、下車突撃路を準備する。
・ 大隊・中隊指揮官が、計画的な間接照準射撃により友軍の障害構成を援護することを可能にする。
・ 敵突撃部隊及び火力支援基盤を攻撃する。
・ 敵の下車突撃拒絶のための突撃破砕射撃(FPF)に統合される。
・ 対抗射撃の対象となったとしても間接照準射撃による火力支援を継続するため、遮蔽下の準備された防護陣地を使用する。

注 記

 指揮官は迫撃砲部隊の安全を確保する必要がある。迫撃砲部隊の自衛能力は限定的であり、もしそうせねばならない時には彼らの迫撃砲火力の即応性やその効果は減ぜられる。これは中隊及び隊の迫撃砲班においても正しい。なぜならば班の勢力はより小さく、被支援部隊に近いためである。
 任務・敵・地形及び天候・利用可能な部隊及び支援・利用可能な時間・民間人等の考慮事項(METTーTC)の分析に基づき、指揮官は小規模の部隊、例えば分隊もしくはチームのような、を迫撃砲部隊の陣地地域の警戒のために配置させる。
また、恐らくは迫撃砲部隊を予備として留めることや直射火器による支援を受けさせるために機動に任ずる部隊と共に配置される事も考えられるであろう。
もし迫撃砲部隊を近接戦闘部隊と共に配置するならば、敵の対砲迫レーダ及び対抗射撃を考慮に入れる必要がある。
 敵の対抗射撃が予想されるならば、迫撃砲部隊を指揮所やその他友軍の迫撃砲射撃の後に直ちに移動できない部隊を一緒に配置してはならない。

間接照準射撃の目的

1−3

 指揮官は迫撃砲射撃を複数の異なる目的のために使用する。
近接支援射撃は攻撃若しくは防御中の友軍部隊の脅威となる若しくは脅威となり得る敵の部隊、兵器若しくは陣地に対して目標設定される。
 近接支援射撃は迫撃砲小隊或いは班に与えられる最も一般的な任務である。

1−4

 小隊レベルの前進観測員(FO)は通常、射撃任務を要求・修正する。
しかしながら指揮系統上のあらゆる指揮官もこれらの射撃を行い、統制するであろう。
 射撃任務の例には照明、煙覆、制圧、標示、準備及び突撃破砕射撃などがある。

間接照準射撃の種類

1−5 対抗射撃

 対抗射撃は敵の間接照準火器、観測所(OP)及び部隊を統制する機能を攻撃するために実施される。長距離に及ぶ対抗射撃は主として野戦砲の任務であるが迫撃砲部隊も近距離における対抗射撃、特に敵の迫撃砲及びロケットに対して実施される。
 迫撃砲による対抗射撃はより強力な対抗射撃のための火器が指向されるまでの間に近接戦闘部隊指揮官にその行動の自由を与えるために提供される即応的な行動である。
 迫撃砲の発煙弾は敵の観測を妨害し、それにより敵の射撃の効果を減ぜさせる。

1−6 阻止射撃

 阻止射撃は友軍部隊に対し敵地上部隊がその能力を効果的に発揮する前にそれらの指向を逸らし、混乱・遅滞させ、撃破するために実施される。
 野戦砲部隊は大半の地上阻止射撃を担当する。
迫撃砲班及び小隊の射撃は、兆候が認められるか予期される敵の突撃陣地若しくは集結地、特にそれらが遮蔽下にある場合に特定の阻止射撃に限定される。

1−7 擾乱(じょう乱)射撃

 擾乱(じょう乱)射撃は他の敵部隊を阻害し、移動を抑制し、損害の脅威を与えることでその士気を低下させる。
 時として無観測による擾乱射撃は、指揮官が弾薬の浪費や対抗射撃の危険性の増加若しくは損害を比較検討し、敵を阻止するために実施される。

1−8 欺瞞射撃

 欺瞞射撃は敵を欺き混乱させるために実施される。
 迫撃砲は、敵陣地や降着地域に対して偽りの準備射撃を実施し、偽りの煙幕を展開してある地点に敵の注意を向けさせ、その間に他の方向から友軍が攻撃することができる。

1−9 間接照準射撃の効果

 緊密な調整と利用可能な火力の効果的な運用は機動の成功に不可欠である。
機動と火力は一体で統合された地上作戦の相互補完的な原動力である。
 これらの機能は指揮官の作戦地域(AO)全域において他の機能の効果的な活用を増進させる条件を作為することができる。
 大隊、中隊若しくは隊の指揮官は特定の目標に対する迫撃砲射撃を実施することによる影響及び効果を決心し、それを明示しなければならない。
 間接照準射撃には複数の異なる効果がある。

1−10 撃 破

 野戦砲射撃において算出された射撃効果の定義において、撃破はその目標が永久に作動できなくなること、若しくは長期間能力を発揮できなくなること、30%の負傷者若しくは物的損害を与えることとある。
 迫撃砲はソフトターゲット、例えば下車徒歩兵、開かつした場所にいる非装甲若しくは軽装甲の装輪車両及び迫撃砲や野戦砲などを撃破することができる。
 しかし、一般的には装甲目標は撃破できない。
部隊が戦闘不能になるような損害を与えるには、部隊の種類、指揮、規律及び士気に依存する。精密誘導弾は目標を撃破するための迫撃砲弾薬の量を極小化することができる。

1−11 無力化

 野戦砲射撃において算出された射撃効果の定義において、無力化はその目標が短時間能力を発揮できなくなること、10%の負傷者若しくは物的損害を与えることとある。
 迫撃砲射撃による無力化は下車徒歩兵や開かつ地内の装輪車両を含むソフトターゲットに対して実施することで達成できる。
 しかし、掩蓋化陣地内の人員や良好な射撃陣地内の車両等の目標に対しては達成が困難である。

1−12 制 圧

 制圧は敵による応射、観測及び機動を制限若しくは阻害できる。
制圧射撃の効果は速やかに発揮されるが、射撃が持続する間しか発揮されない。
 制圧はあらゆる効果的な機動突撃において不可欠である。
迫撃砲部隊の高い発射速度と組織的な即応性は敵に対する効果的な制圧手段であり、制圧射撃は機動に任ずる部隊の戦闘力発揮のための重要な要素である。
 他の火器と共に発揮される迫撃砲による制圧射撃は被支援部隊が機動を行い突撃のために近迫することを可能にする。
 制圧射撃のさらなる効果として、突入部隊がその行動を隠・掩蔽する必要性を低減させる。迫撃砲の射撃は突入部隊がその手持ちの武器で制圧射撃を行うために十分な距離に接近するまで敵を制圧し続けることができる。

1−13 照 明

 照明弾射撃(可視若しくは赤外線)は夜間に目標を暴露するために有効である。
指揮官が友軍の直射火器陣地が暴露されることなく敵の存在を確認若しくは否定することができる。
 照明弾射撃は敵を殺傷若しくは制圧するためにしばしばりゅう弾と混用される。
また、部隊の誇示や地域への接近拒否などを通じて拒否的な効果のためにも使用されることがある。
 迫撃砲は可視及び赤外線の照明弾を保有しており、どちらも指定された地域を照明することができ、他の部隊の識別を補助するための信号や部隊の標示に有効である。
 照明弾の地上破裂射撃は目視、赤外線或いは熱源光学装置による目標や地点の標示にも有効であるが、その持続時間は短い。

1−14 煙 覆

 煙覆は敵の観測及び目標獲得能力を妨げ、味方部隊の移動や行動を秘匿する。
煙覆射撃は武器を使用することはできるため、敵を無力化や制圧することはできない。
しかし、敵の射撃やレーザーによる目標指示の効果を低減させる。
 迫撃砲はリンを用いた弾薬を観測を妨げるために味方部隊と敵陣地の間に射撃することができる。
 迫撃砲による煙覆は限られた範囲かつ短時間の任務に即応するために有効である。
81mm及び120mm迫撃砲は効果的な煙覆用弾薬を保有している。

注 意

 いかなる迫撃砲システムにおいても高度に濃縮された煙が詰まった砲弾は存在しない。全ての迫撃砲発煙弾はリンによる化学反応由来の煙であり、それらは少なくとも
約2700度で燃焼する。
 少なくとも任務達成のための絶対的要素として、下車徒歩兵は煙が消散、すなわちリンが完全に燃焼したことを示すまでは弾着地域を通って移動してはならない。
 リンに対する暴露は味方部隊を負傷させる。
加えて、リンが依然燃焼しているにも関わらず装輪車両で弾着地域を通行することでそのタイヤは融溶し、作戦行動が不可能になるであろう。
 リン弾により生成される実際の煙はそれ自身で発火はしない。従って、風向きが変わり迫撃砲による煙が味方部隊に向いたとしても味方部隊にその陣地を変換させる必要はない。

1−15 戦術任務

 戦術任務はある戦術行動や機動をする間に行われる特定の行動である。それらはおそらく、味方部隊による行動や敵部隊に対する効果により定義される。
 有効な迫撃砲は一般的には戦術任務射撃により敵部隊に対する効果を与えるために用いられる。

1−16 阻 止

 阻止は敵の接近を拒否若しくは接近経路方向若しくは接近経路沿いの前進を阻害する戦術任務である。さらに、阻止は火力計画と、特定の接近経路沿いの攻撃部隊若しくは交戦地域を通り抜ける攻撃部隊を停止させるための妨害処置とを統合させる妨害効果もある。
 阻止任務は通常、特定の時間若しくはある特定の出来事が生起するまで味方部隊が敵部隊を阻止することが求められる。
 交戦地域内の事前に計画された線状の射撃目標は下車徒歩兵や非装甲・軽装甲車両を阻止するために設定されるが、一般的には迫撃砲は装甲目標を阻止できない。
 阻止は拘束とは異なる戦術任務である。阻止は敵部隊が遮られた地域を除くいかなる方向にも移動することができることに対し、拘束は敵部隊がいかなる方向にも移動できない。

1−17 導 入

 導入は指揮官が障害、射撃、友軍の機動とを組み合わせて地形を利用することで狭小な地域に敵の移動を制限させるための戦術任務である。
 チョークポイントや緊要地形上に事前計画された射撃目標への火力の集中は敵を導入する迫撃砲の運用の一例である。

1−18 撹 乱

 撹乱は指揮官が敵の隊形若しくはテンポを乱し、時間計画を阻害し、時期尚早な行動や戦力を逐次投入せざるを得ない攻撃を強いるため、直射及び間接照準射撃、地形及び障害を統合させるための戦術任務である。敵の予想される接近経路や撤退路などへの事前に計画された目標への射撃、敵の疑わしい或いは確認できた迫撃砲、観測所、突撃発起位置及び分進点等、目標の全部または一部を孤立させるための迫撃砲射撃などは迫撃砲が敵を撹乱させることができる一例である。

1−19 拘 束

 拘束は指揮官が敵部隊が特定の時期に特定の場所へとその一部を移動させることを妨げるための戦術任務である。
 拘束は射撃計画に焦点を当てた妨害効果であり、特定の地域、通常は交戦地域における攻撃側の移動を遅滞させる妨害行動である。
 本効果の主要な使用法は友軍部隊に時間の余裕の獲得、目標の補足及び交戦地域若しくは接近経路の縦深全てにおいて直接・間接火力を用いて攻撃を行う敵を撃破させることである。
 交戦地域内の敵部隊を視覚的に分断するため使用される、直射火器の交戦距離内の敵部隊に対するりゅう弾射撃と組み合わされた発煙弾の計画射撃は迫撃砲が敵の指揮統制を低減させ、その拘束を補助する迫撃砲の運用の一例である。

1−20 孤 立

 孤立は敵を支援や補給源から敵を(物理的・心理的に)封じ込め、敵の行動の自由を拒否し、孤立された敵部隊が他の敵部隊と連携をとることを妨げるための部隊を必要とする戦術任務である。
 指揮官は陣地内の孤立した敵部隊が存在することを認めるのではなく、敵に対し攻撃行動を継続する。
 敵を拘束する迫撃砲射撃要領と同一の方法で敵を孤立させるために用いられるであろう。

1−21 転 進

 転進は敵部隊を接近経路や機動路から他の経路への転進を強いることを含む戦術任務である。転進は射撃計画と敵部隊をある接近経路から隣接の接近経路若しくは交戦地域へと分断するような妨害への努力の指向を統合させる戦術的な妨害効果でもある。
 指揮官は敵の状況を不利にしつつ友軍の戦術的状況を好転させるため、障害、火力及び地形を連携させる。
 交戦地域の翼側に設定された計画射撃目標若しくは友軍部隊が敵の翼側へと反撃を実施することを可能とするため、攻撃を行う敵の前端への迫撃砲射撃は敵を転進させる迫撃砲の運用の一例である。

迫撃砲部隊の役割

1−22

 迫撃砲部隊の重要な役割は機動に任ずる部隊の指揮官に即応性に優れ、中隊、大隊の機動を支援するための致命・非致命どちらも可能な間接照準火力を付与することにある。それらは近接戦闘時の直射火器を増強するために用いられる。
 迫撃砲部隊は以下の部隊に割り当てられる。
・ 諸職種共同大隊
・ 歩兵大隊及び中隊
・ レンジャー大隊
・ 騎兵大隊及び中隊
・ 海兵隊軽装甲偵察大隊
・ 海兵隊歩兵中隊

1−23

 迫撃砲班及び小隊は指揮官に以下を付与する。
・ 野戦砲部隊に課された要求がいかに変化しようとも、継続的かつ即応性のある有機的な間接照準火力
・ 中隊及び大隊レベルの戦闘に密接した即座に利用可能な支援火力
・ 野戦砲、ヘリコプターによる近接部隊への攻撃、近接航空支援及び海軍艦砲射撃のようなより大きな火力を補足する高射角火力
・ 野戦砲火力がより縦深の目標の射撃へと移行する間と突入部隊が目標へと接近する間の間隙を埋める、高発射速度かつ殺傷力の高い武器
・ 敵の弱点の致命箇所へと機動することを支える火力支援基盤
・ 敵の攻撃部隊を制圧、妨害及び撃破する高密度かつ致命的な防御火力
・ 偵察部隊においては、敵を即座に制圧し、交戦を回避することができる能力
斥候は自身の位置が露見することなく間接照準射撃により敵と交戦できる。

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