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未来へ~宙組千秋楽・芹香斗亜さよならショー
宙組大劇場公演千秋楽は、品川の映画ふ館でライブ中継で観ました。
開演直前。スクリーンが劇場からの映像に切り替わると、トップスターのサヨナラ公演の千秋楽ならではの、白い洋服に身を包んだ人たちが客席を埋める風景が映り、シンミリした気分になります。
『宝塚110年の恋のうた』
銀橋のセンターに現れたキキ(芹香斗亜)ちゃんの表情は、愁いを秘めて客席を見渡すように見えました。恋に憂える定家という設定だし、わたしの思いがそのように見せているのかもしれないですが。
芝居仕立てで宝塚110年の和ものの恋の歌を聴かせるという趣向のショーは、歌うまさんが多く、コーラスの評価が高く、団体芸に強い宙組さんならではの演目だと思います。本来は昨年の110周年の記念として上演されるはずだったのが、この時期の公演になったのですね。
図らずもかどうかはわからないけど、キキちゃんのサヨナラ公演となったけど、いろいろな役柄を演ずるキキちゃんが見られるのは、一粒で何度もおいしい的な幸せな気持ちになります。
キキちゃんの「星影の人」沖田総司も見たかったし、キキちゃん率いる星組の「誠の群像」新選組も見てみたかった。キキちゃん自身が歌ったのではないけど、キキちゃんの文四郎も晴興も見てみたかったし、「この恋は雲の果てまで」も見たかったかもしれない。
そして、なによりうれしかったのはキキちゃんの「花吹雪恋吹雪」が聴けたこと。望むらくは、トウコ(安蘭けい)ちゃんのような着物を肩掛けにした姿を見たかったところですが。トウコちゃんの魂を受け継ぐキキちゃんがこの歌を歌ってくれたのが感激です。星組でトウコちゃんの近くで学び「さやかってキキララのキキちゃんに似てるよね」とキキちゃんって愛称をもらったキキちゃん。星組時代のふっくらした頬のキキちゃんを思い起こして、涙が出ました。
「これからも、自分たちらしく恋の歌をうたい続けてほしい」(意訳)という最後のセリフが、宙組に、宝塚歌劇に託すキキちゃんの言葉のような気がして、胸がいっぱいになりました。
『Razzle Dazzle』
軽快な音楽とダンスにあふれたコメディ。前にも書いたけど、この「軽み」はキキちゃんとキキちゃん率いる宙組ならではの魅力だと思います。
お芝居の中で、アドリブのシーンがたくさんあると聞くのだけれど、見ている回数が少ないせいか、どれがアドリブで、どれが本来のお芝居なのか、よくわかりません。なので、千秋楽ならではのアドリブがあったかどうか、わかりませんでした。ただ、レイモンドがナイトクラブの支配人で執事のフランク@なっつ(秋奈るいサン)に「開店以来赤字で…」と伝票の束を見せられたときに「宝塚歌劇にツケといて~」「つぶれまんがな」とかって会話をして笑いをとってたのが、関西系っぽく、アドリブなのかなって思いました。
舞台狭しと軽やかに走り回るレイモンド、エキストラ仲間や撮影所スタッフに囲まれて楽し気に笑顔のレイモンド、こんなキキちゃんが見たいとずっと思っていました。宙組の活動が止まっていた間、再び舞台でキキちゃんが見られる日が来るのだろうか…と、不安に思っていた日もありました。キキちゃんが舞台にもどってきてくれて、この笑顔が見られて、ほんとにうれしく幸せに思いました。と、同時にこの姿をもっともっと見たかったと思うと、残念な気持ちでいっぱいで、涙が止まらなくなりました。
レイモンドの最後のスピーチ「夢を見ようよ 醒めない夢を…」これも、宙組に託す、キキちゃんのメッセージなのかなと思って、胸がキュッとしました。
フィナーレ。娘役のなかからひろこ(水音志保)ちゃんがひらりと抜け出してきて、キキちゃんと少しの間デュエット。美しい場面でした。美少女でダンスがきれいなひろこちゃんの、最後の晴れ姿と思いました。いままで、素敵な世界をたくさん、ありがとう。
そして、キキちゃんとさくちゃんの愛にあふれたデュエットダンス。さくちゃんに向けるキキちゃんの優しい表情にうっとりします。いつまでも見続けていたい…
大きな羽根を背に大階段の真ん中で、キキちゃんは優しい表情をしていました。客席全体を愛おしむような…そんな気がしました。わたしも気持ちがいっぱいいっぱいで記憶が定かではありません。
パレードでは、ひろこちゃんの笑顔が印象に残りました。退団者は皆、口々に幸せって言うけど、ほんとに幸せなんだろうなって思って、少しうれしくなりました。
芹香斗亜サヨナラショー
サヨナラショーの前、15分の休憩がありました。異例。どんな趣向があるのでしょう?セットが変わる?どんなお衣装?
緞帳が上がって、大階段にキキちゃんの姿。黒地に金の飾りのついたお衣装で、普通とはいわないけど特別凝ったお衣装というわけではなく、舞台も大階段のほかにはとくにセットもなく、何があるでもなく、15分の休憩はなんだったのかしら?と思ったけど、花組時代の My HERO。キキちゃんのほか、ちなつ(鳳月杏)さん、あか(綺城ひか理)さんと、長身でスタイルのいい男役さんたちのスーツアクター姿がかっこいい作品でしたよね。客席下りもあって、バウの再現のよう。たいへんな盛り上がりです。わたしもそこにいたい〜
舞台では宙組生たちが勢ぞろいでキキちゃんを迎えます。皆、ダークなお衣装に衣装替え。全員が衣装替えするのは、たしかに時間がいりますね。15分の休憩も納得。
宙組生に囲まれてせり上がるキキちゃん。そうだよ、あなたこそヒーロー!
からのアナスタシアのネヴァ川の歌。すごく重たい歌詞で、男性の歌で、キキちゃんも苦労したろうなって思います。そのぶん、思い入れもあるんでしょうね。グレブは切ないというより、見ていて辛い役でした。わたしにとっては。どこに感情移入していいのかよく分からなくて、心がいつも戸惑っていました。けど。いまあらためて聴くとキキちゃんの低音が魅力的で、いい曲だなって思いました、
そして「愛と青春の旅立ち」。星組時代の新人公演。初主演だったかしら。かわいらしかった軍服姿が思い出されて、懐かしくて涙がこぼれました。
続いて「ハンナのお花屋さん」。わたしは、この、みりお(明日海りおサン)の優しくてあたたかみのあるパパのお役がとっても好きでした。
これは何だっけ?って一瞬思ったのは「プロミセス・プロミセス」でした。この公演はチケットが取れず、配信もなかったので、CDでしか聞いたことがなかったので、すぐにはわからなかったのですね。楽しくステキなコメディなのは、CDでもうかがえたので、ぜひ映像で観たいと思っていたのでした。キキちゃんが歌っている姿が見られただけでも幸せです。けど、このシーン、DVDやBlu-rayでカットされたりしないかしら…ちょっと心配です。
退団者2人とずんちゃんの「Le Grand Escalier」。これもいい歌でしたね。サヨナラのお二人を見送る気持ちにも、とってもマッチする気がしました。
宝塚の娘役ならではのドレス姿のひろこちゃんの笑顔にも、涙を誘われました。
真っ赤なスーツにお衣装替えしたキキちゃんと黒スーツの男役さんたちのリベルタンゴ、からのさくちゃんとのデュエットはとってもかっこよかった。キキちゃんにタンゴってイメージは、先の全国ツアーを見るまで正直なところ、あまりなかったのですが、長い手足が映えてとっても素敵でした。さくちゃんも、歌うまさんだけど、ダンスのイメージがなかったので、キキさくのあらたな魅力、もっと見せてもらいたかったなって思いました。
「金色の砂漠」からのジャーとビルマーヤの歌。心優しいジャーも大好きなお役でした。べー(桜咲彩花)ちゃんとのデュエットに当時どれだけ涙を流したことか…と、思い出されてまたまた涙。
まっぷー(松風輝)さん、りっつ(若翔りつ)さん、もえこ(瑠風輝)ちゃん、なっつ(秋奈るい)さんから、ずんちゃん、からの宙組全員での「エクスカリバ
ー」円卓の騎士たちの歌。
いつまでも忘れない この夜を
泣けます。
宙組生に囲まれて白い、長く裾を引くお衣装に早変わりしたキキちゃん。
「群盗」の『Future revolution』。未来へ…大階段を上る後ろ姿に、涙が止まりません。
宝塚歌劇110年の長い歴史の歪も輝きも、すべて引き受けて未来へつなげる、そのためにこの大階段の頂へ上っていくんだ、キキちゃんは… そんな気がしました。
大階段の真ん中で振り向いたキキちゃんが、客席に向けて手を差し出して、幕が下りました。
終わってしまった… しばらくの間、放心状態でぼーっとスクリーンを見つめていました。
けど、黒燕尾で大階段を下りる姿、キキちゃんらしい、ウィットにあふれたご挨拶。カーテンコールで、声かけするファンとの楽しいやりとり。
悲しい気持ちがいつの間にか消えて、楽しい気持ちで映画館を後にしました。
東京公演で、ますます進化したキキちゃんに会えるのが楽しみです!