重たい羽根を下ろして〜花組「アルカンシェル」千穐楽配信
花組「アルカンシェル」の東京公演千穐楽。れいちゃん(柚香光)とまどかちゃん(星風まどか)のさよならショーは、自宅でライブ配信で見ました。
少し前の記憶を掘り起こしながら書きます。
画面が東京宝塚劇場の客席後方からの映像に切り替わると、開演前の客席には白い服の観客が目立ち、サヨナラ公演の千穐楽らしい風景です。ペンライトの具合を試しているのか、小さな光がいくつもきらめいています。
れいちゃんの開演アナウンスに、ひときわ大きな拍手が沸き上がりました。
「アルカンシェル」のお芝居は、千穐楽に絡めたアドリブはとくにはなく、淡々と前に劇場で観たのと同じように進みました。
ホッティー(帆純まひろ)演じる劇団員のロベールの笑顔が爽やかで透き通るように輝いて見えます。退団を決めたスターさんは、だんだんと白く清らかになっていくといいますが、まさにこの日のホッティーはそんな感じ。その清らかな姿に涙を誘われます。
連合国の兵士となったジェラール(舞月なぎさ)の笑顔も印象的でした。明るく屈託のない笑顔は、卒業するふじもんのご自身の姿と重なります。
物語の終章、解放されたパリの空に虹がかかり、マルセルとカトリーヌ、アルカンシェルの仲間たちは、新たな時代に歩みを進めようとしています。
仲間たちの希望に満ちた笑顔は、れいちゃんとまどかちゃんの新たな世界への旅立ちを祝福するようです。
フィナーレの男役の群舞、ふじもんとホッティーが二人、センターで笑顔で踊っている姿には胸がきゅっとしました。
れいちゃんとまどかちゃんの深いブルーのお衣装のデュエットは、二人の思いを表すような、深い愛情に満たされているのを感じました。
パレードの虹色のお衣装とれいちゃんの虹色の大羽根は、やさしくやわらかな色彩が素敵でした。とくにまどかちゃんのドレスはきれいでした。「パリに架かる虹」のイメージだと思うけれど、この日の舞台と客席のあたたかな空気を印象づける気がしました。
そして、れいちゃんのさよならショー。
さよならショーは、スターさんとわたしたちが思い出を共有する時間だと思うのですが、まさにれいちゃん、まどかちゃんの思い出を散りばめた、華やかで素敵なショーでした。
幕が上がると、大階段の真ん中に黄色いバラの花束を抱いた伊集院少佐の姿。お披露目公演の『はいからさんが通る』では、マンガから抜け出たような美しい少佐の軍服姿に目を見張ったものでした。
退団者4人が銀橋に出ての『ENCHANTEMENT』は、お衣装も夢々しく、宝塚らしい上品で華やかな印象でした。
『元禄バロックロック』の花火きらきらの歌は、せつなくいながらもほっこりするナンバーで、れいまどのお披露目で初めて歌声を聴いたときの気持ちがよみがえりました。
『TOP HAT』からのタップの入ったデュエットダンスは、軽やかで華やかで、コミカルで楽しかった公演が思い起こされました。
まどかちゃんの『アナスタシア』からの「In My Dreams」は、思いのこもった歌声が心に響いて、まどかちゃんのこの作品への思いの深さを感じました。
最後は『Fashionable Empire』のナンバーで花組生の総踊りで、明るく楽しい雰囲気で幕が下りました。
4人の退団者とまどかちゃん、れいちゃんが大階段を下りて退団のご挨拶をすませて。
カーテンコールのときに、白い花束を抱いたれいちゃんが、ぴょんこぴょんこ舞台の真ん中で何度も飛び跳ねているのが印象的でした。
これまでの公演で、終演後のれいちゃんのご挨拶は、いつも丁寧で各方面に目を配り、心を寄せていることがよくわかりました。れいちゃんのまじめで優しいお人柄を感じましたが、れいちゃん自身の感情や思いが伝わりにくいなと思ったこともありました。けれど、人懐こい笑顔で楽しげに飛び跳ねているれいちゃんは、ほんとに幸せな気持ちがあふれていて、それが隠さず現れていて微笑ましく、見つめているこちらまで幸せであたたかな気持ちになりました。
これまで背中の大きな羽根はどれだけ重く、れいちゃんの心を抑えていたことか。その重たい羽根を下ろして軽やかになったれいちゃんは、ますます素敵に見えました。
これかられいちゃんが巣立っていく世界がどのようなものかわからないですが、どんな世界でも、このステップを踏むような足取りで、明るくさわやかに歩んでいってほしいなと思いました。
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